880話目 王都からの脱出・・・失敗28
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「……アズーリ商会以外は?」
フィラの指摘に目を見開いた後、ワナワナと肩を震わせ始めたルビーだが、
それもすぐに止んで、意気消沈した様子へと変わり、絞り出すような声で返事をする。
「……あ、アズーリ商会のみ……」
ルビーの返答を聞いたフィラは首を傾げて、
「……マコトに手を引かれたら……終わる」
フィラの指摘に、まさに正論であるため顔を引き攣ることしか出来ないルビー。
「なるほどね~」
そんなルビーに対して、俺は納得した様子をルビーに見せると、
言葉を失っていたルビーが俺を見ながら声を震わせて、
「ま、マコト……あ、あなた……い、今何を、か、考えているの?」
「……サウスベルト侯爵家の未来を考えているよ?」
そんな俺からの返答に目の色を変えて、捲し立てるように詰め寄ってきた!
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!! 何で疑問形!?
そこはちゃんと断言しなさいよ!!
ねえ!! サウスベルト侯爵家のいい未来を考えていたのよね!!
サウスベルト侯爵領のいい未来のことを考えているのよね!!
そうよね!! 絶対にそうよね!!」
「……え?」
「“え”じゃないし!! そこは“分かった”でいいじゃない!!」
「……だけど……」
その一言に目の色を変えて俺の傍に駆け寄ってきて、
胸倉を掴んできたかと思ったら、前後に激しく揺らされながら、
「だけど、何よ!! 何がいいたいの!! 言いなさいよ!!
中途半端な言葉なんていらないのよ!!
歯に物が挟まったような言い方じゃなくて、ちゃんとハッキリと言いなさいよ!!
ほら!! 早く!! いいなさいよ!! 早くぅ~!!」
「じゃあ……メリットなくない?」
その一言に今度は怒りのあまりに目がまた吊り上がり、
「はぁぁぁあああ!? メリットがないってどういうことよ!?
だいたい貴族として民を豊かに幸せな生活を過ごさせることが責務でしょうに!!
責務を果たしなさいよ!!
サウスベルト侯爵領に住む領民すべてに不自由のない生活を過ごさせなさいよ!!」
「……今まで出来てなかったのに?」
「ぐぅふぅ!?」
俺の一言に侯爵家のご令嬢とは思えないリアクションをとるルビー。
ちょっとリアクションが古いけど……
いいと思います! 見ていて飽きないし、何より……
そんなことを俺が考えている中、口から洩れた言葉と合致するように
くの字に身体を曲げていたルビーは、今度はワナワナと肩を震わせながら、
「……だから……じゃない……」
「え? 何て? 良く聞こえなかったから、もう一度言ってくれる?」
小さな声だったため聞こえなかったので、尋ねると、俺の声に応えるように顔を上げて、
「だから! あなたに私の身を捧げたんじゃない!!
私を好きにしていいから、あなたの商会が手を引かないように
人身御供になったんじゃない!!
私は貴族としての責任を果たすべくあなたのモノになってあげたよの!!
だから、当然あなたもその責任を負って、
ちゃんとサウスベルト侯爵領の発展に全力で貢献しなさいよ!!」
キッとした目で俺を見てくるのだが、そんなルビーに対して俺は冷静な口調で答える。
「……父の作っている借金のカタじゃなくて?」
「……え?」
俺の一言に今度は先程までの怒りがこもった声から、純粋な驚きだけの声色に変わった。
そして数秒の間が空いた後に、フルフルと震えながら俺に尋ねてくる。
「ちょ、ちょっと待って!
私……返したわよね?
爺やたちと一緒に死にものぐるいで稼いだお金で返したわよね?
必死の思いで、何とか返したはずよね!!
フィラやラプンツェルにお願いして、
仕事もいくつか貰って必死で腹立いてお金を返したわよね!!
それなのにお父様の借金って……どいうことなの!?」
「あ、うん。前の借金は」
俺の一言にまた動きが止まるルビー。
そして数秒間止まった後で、また動き出すのだが、
油が切れたブリキのようにギギギっといった感じで動き出して、
俺に絞り出すように尋ねてくる。
「……前の……借金?」
愕然とするルビーに対して、俺はにこやかな笑顔と共に辺りを見回すと、
扉の向こうからひょっこりとアズーリ伯爵家の使用人が顔を出して、
俺の考えを察したように頷いてから扉から中に入ってくる。
そして澄ました顔をしながら俺に紙を数枚渡していくのだが、
渡す瞬間に口元が緩んでいたのを俺は決して見逃さなかった。
何より使用人は澄ました顔のまま部屋の隅に立つだけで、
部屋の外に出ようとはしないのだ。
……これからの展開を見たくて待っているな……
本当にうちの使用人たちは、いったい誰に似たのやら……
いや、元凶は分かっているけど……
ちゃんと後で元凶は説教だな。
とりあえず今は、目の前にいる哀れな子羊に伝えてあげなくちゃいけないね!
「……そ、それは一体……何の紙よ?」
恐る恐るといった感じで尋ねてくるルビーに対して、俺はひらひらとさせながら一枚を取り、
ルビーから見えるように差し出して、ほほ笑みながら説明する。
「いや、ルビーのお父様であるサウスベルト侯爵様の……借用書だよ」
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