282話目 負け犬が最後に役に立ったね byメフィスト伯爵
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「メフィスト!!」
スタジアム内のある一画を歩いていると叫ぶように、声をかけてきたルック子爵。
そんなルック子爵に笑みを浮かべて振り返ってから、
「何かね? ルック子爵様? 私に何か用事でも?」
「ふ、ふざけるな!! 貴様のせいで! 貴様のせいで私は!!」
「おやおや、私のせいだと? それはお門違いではないかね?
正式な決闘で、しかも君の部下である……名前を何て言ったかな?
うぅ~ん、思いだせないな。
まあ、そんな部下が起こした決闘騒ぎを受けたのは君であり、
そもそも……君の実力のなさが起こした結果じゃないか?
それを私やアズーリ君のせいにするのは……無様だね」
その言葉を聞いた私に対してついに怒りが爆発したという顔をして剣を抜くルック子爵。
それに対して、私の傍にいたデスが一歩私の前へ出ようとしたのを手で制して、
「何の問題もないから、この程度の道端の路傍の石に
後れをとれと言うのが無理だというものだよ」
その言葉を聞いたルック子爵が叫びながらこちらに斬りつけてくるのである!
「貴様! 貴様! きさまぁ!! この私を! どこまで侮辱するのだ!!」
ただ、そんな彼の剣は振るわれることなく、
「? 弱いから……それだけだけど?」
その言葉と同時に私の剣はルック子爵の腹を切り裂いていた。
「ああ、せめてもの情けだよ。
剣の力は使わないで上げるから、自決してくれないかな?」
「な!?」
目を見開いて驚くルック子爵に首を傾げて、
「だって、君を斬ったのが私と分かると……
弱い者いじめをしたみたいで、私の名が廃るじゃないか」
そんな言葉を聞いたルック子爵は、一瞬の沈黙の後に肩を震わせて初めて、
「ふざけるな……ふざけるな!!
私を! 私を捨て石にしか思っていなかったというのか!!
このルック子爵を!!」
「え? 捨て石にも失礼だろう?
あ、いや、一点だけ助かったことがあったよ。
無能な私の派閥の連中をまとめてくれたことには感謝をしよう」
「……は?」
「いやぁ~、皆内心でどう思っているのかまでは分からなかったのだよね。
だけど、こちらから仕掛けても警戒されるだけでさ、
ほとほと困っていたところで、君が間抜けな行動をしてくれて
それで尻尾を出す程度のクズ共を見つけてくれたのは感謝でしかないよ」
そんな私の言葉に今度は唖然とするルック子爵。
「ああ、大丈夫だから」
「……何がだ?」
「彼らはすぐに君の後を……あ、ごめん間違っていたよ」
すまいないと一つ謝ってから、
「すでに全員殺しておいたよ」
「……は?」
呆気に取られるルック子爵。
「だから、安心して死んでくれていいよ。
あの世で、彼らをまとめてあげるといいよ。
フフフ、私は親切だからね」
そんな私のセリフを受けて呆気にとられていたルック子爵は、
徐々に身体を震わせて怒りの籠った目となったかと思ったら、
私の渡した薬を口に含んだのだ!
「メフィスト!! 貴様を……殺す!!」
薬を飲んだことで膨張していくルック子爵の身体。
「ふふふ、ちょっと私の研究のために役に立ってくれるじゃないか!
いやぁ~、最後の最後に本当にちょっとだけだけど
役に立ってくれたことに感謝しようじゃないか!!」
そんな私の声は一切聞こえていないようで剣を握って振るうルック子爵。
その剣圧は凄まじいものであるが、
その剣が私を捉えることはなく空を切るばかりである!
ただ、それも少しの間だけであって、徐々にその動きが緩慢になっていった。
「……どういう……ことだ……」
自分の身体に起きた変化に気づいたようで戸惑い始めたルック子爵。
だから私は教えてあげる。
「ああ、言い忘れたけど、その薬は少しの間だけ力を上げるだけだ。
まあ、今の君だと……数分程度か……
いや、まあ、薬のせいで数分間だけかもしれかないか?
それは君を解剖して調べればいいか」
「は、ハメたな!! メフィスト!!」
「? 私が何を? 伝えてなかっただけだろう? それも意図して」
怒りの籠った目でこちらを睨みながら、
残り僅かになった命を燃やしながら剣を振るうルック子爵。
それを冷静に躱していく。
「剣を! 剣をとれ!! メフィスト!!」
「嫌に決まっているだろう?
なぜにそんな君に応えるようなことをしなくちゃいけないんだい?」
ゴハぁ!?
大漁の吐血をするルック子爵を蔑むめで見ながら、
「やれやれ、あと数十秒くらいかな?
はぁ~、つまらん男だな君は。
これじゃあ、データもまともに取れないじゃないか」
そんな私に怒りはまったくおさまっていない様子で、
「貴様! 騎士としての誇りを持っていないのか!!
剣をとれ!! 私と打ち合え!!」
「いやだね。君が苦しみながら、そして騎士として誇りも持てぬまま、
剣を振るうために命を懸けたというのに、
剣を合わせることなく燃え尽きさせたいのだからね。
哀れだね……フフフ! アハハ!」
「メフィスト!!!」
その叫び声と共に最後の一撃がゆっくりと私に向かって振るわれるのだが、
私はそれに答えることはなく剣をしまいゆっくりと躱すのである。
ルック子爵はその一撃で力が尽きたように、その場へと倒れこんでいった。
それを見ながら、
「この実験体の解剖をしろ!
ヒュドラから作った薬の効果がどんな影響を身体に及ぼしているのか調査しておけ」
「ハ!」
デスが私の指示に答える中、私はゆっくりとその場から立ち去っていったのであった。
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