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異世界転生には、夢も希望もございませんでした  作者: Taさん
第八章 想定外の夏休み
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243話目 気がつけば謀略看破!?

いつも読んでいただきありがとうございます。

今日もよろしくお願いしますねー!

「……で、こちらの正式な報告を聞こうじゃないかね、デス。

 上がっている報告を頼むよ」



そう言って、メフィスト伯爵様の後ろに控えていた私に

声をかけてくるメフィスト伯爵様。


促されるままに今回の被害について報告を上げる。




「まずは、こちらが管理しておりました畑の被害の報告です。

 ドラッグの生産はまったく出来る様な状況ではありません。

 根こそぎ全滅させられております」



「……ふぅ~ん……つくづく鼻が利く王国の犬だね……

 アズーリ子爵は……忌々しいな……まあ、いい。続けてくれ」



「……はい、それと畑の守備をしていた連中は散り散りに逃げ出しております」



「見つけ出して殺せ。

 あいつらが何かをしゃべられると迷惑でしかないからな。

 ちなみに戻ってきている者もいるのか?」



「はい、半分近くは戻ってきております」



「そうか、余計な手間が半分減ったな。

 そいつらも殺しておけ。

 被害の報告を王国に上げねばならないが、その際には視察が入るだろう。

 その時にそいつらが喋るとは思わないが……

 金で雇える連中は金で転がる。殺しておくに限るだろう」



「かしこまりました。それでは畑を耕していた農民も?」



「殺せ」



冷徹な一言だけを発して、それ以上は言葉を発しないメフィスト伯爵様。




「かしこまりました。

 それと守備をしていた連中と共にいたトカゲ共ですが……

 残念ながら全滅しているとのことです」



その言葉を聞いてため息をつきながら、

座っていた椅子に更に深く座り直すメフィスト伯爵様。




「……かなりの金をかけたのだがな……

 アズーリ子爵は、こちらの情報を掴んでいたと思うか?」



「間違いなく……でなければあのガキ自ら赴くとは思えません。

 トカゲ討伐をするために自ら赴いたのでしょう」



「だろうな……

 そして、アズーリ子爵の狙い通りに、こちらのトカゲ部隊は全滅……と……

 かなりの時間と金がかかっていたのだがね……

 育ててから潰す……いいやり口じゃないか……この私に向かってな!

 まあ、いい……それよりあの魔道具も……見つかったか?」



「いえ、残念ながらトカゲ共の遺体は一切ありませんでした。

 ですので、間違いなくあの魔道具ともども回収していると思われます」



「……どこでバレたのかね?

 あの下級とは言え、ドラゴンを従えることが出来る魔道具の存在が……

 これはメフィスト家の秘儀の一つなのだがね?」



「そこまでは私ではわかりかねます」



そんな私をジッと見てくる。しばらくの間無言の圧力を受けていたが、

それもふわりと解かれて、




「アレを……アズーリ子爵は使うと思うかい?」



「私なら間違いなく使います

 人を育てるよりもドラゴンを育てる方が、

 はるかに費用対効果が高いですからね。

 ですが、あのガキが使うのかは……」



「分からないか……

 まあ、アズーリ子爵の力だけでも皆が警戒しているのだ。

 表立っては使わないと思うが、

 アズーリ領のそれも屋敷内なんかでは使うかもしれないね……

 ふぅ~難攻不落の屋敷が出来てしまったね。

 まあ、いい。それで続きの報告を頼む」



メフィスト伯爵様に促されて続きの報告を読み上げる。




「次に薬を精製する湖の方ですが……こちらも壊滅させられております」



そんな私の報告を聞きながら苦笑するメフィスト伯爵様。

そんな笑いもすぐに止めて、真顔に戻ると、



「どうしてあそこの湖がバレたのかね?

 あそここそ、私の直属……

 いや、君の直属の暗殺部隊の連中と奴隷くらいしかいないはずだが?

 奴隷の中に脱走者が出たかい?」



恐ろしいほど冷たい声で尋ねてくるメフィスト伯爵。

どうやら表面には現れないが怒りがこみあげているようだ。




「そんなことはありえません。

 脱走を試みることすらできないほどに薬漬けにした奴隷どもです。

 そもそも自我も持てないようにしてありますので

 裏切ることやましてや脱走しようなど考えることはできないでしょう」



「まあ、そうだよね……

 あの薬は一度使えば、二度と抜け出すことが出来ないドラッグだ。

 実際に私も王都の役人や貴族共に使っているが、

 絶対に買いに来ない者が出ていないからね。

 どんな人間もリピーターになっているしね……クックック……

 この依存度は自分の力では絶対に逃げ出せないものだよ」



そう言いながら深いため息をつくメフィスト伯爵様。

ため息をついた後、顔を上げて、




「それよりも君の直属の部隊はどうなっている?」



「……残念ながら生存者は誰も発見出来ておりません」



そんな私の言葉を受けて、椅子を引いて立ち上がり、

窓辺へと向かうメフィスト伯爵様。

そして窓から外を見ながら、




「一番の被害はそこだな……ほかの軽微な被害とは全く違う。

 しかし……よくもやってくれたね……アズーリ子爵……」



「……」



「この間の仕返しかな?

 私に対して徹底的に反撃してきたね……

 これほど……自分に怒りが湧くとは思ったことがなかったが、

 今すぐにでも殺してやりたい気分だね!」



「……」



しばしの沈黙が流れた後で、メフィスト伯爵様がこちらに向きなってから、




「これで王都を襲撃する作戦は延期するしかないな?」



「はい、おっしゃる通りです……」



「部隊の再編にはどれだけかかる?」



「……3年ほどかと……今の部隊はおおむね3年程かかっております。

 ですので……」


「3年……ふざけおって……」


苦虫を嚙み潰したような顔をしながら外を見ているメフィスト伯爵であった。


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