168話目 エラの人気
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エラとのやり取りでゲッソリと体力を根こそぎ奪われたような脱力感に
苛まれながら馬車から降りる。
降りたタイミングでは、ほかにも俺達と同じように
馬車で登校する生徒がいるので注目を浴びることなんてなかった。
ただ、それも降りたタイミングだけで、一人がこちらを見ると
そこから波紋が広がるように生徒たちからの視線がこちらへと注がれたのだ。
「……あれが噂の?」
「マジかよ……」
「間違いないって!」
取り囲むような立ち位置から、こちらには一切近づかず
だけど視線はこちらに注がれたままヒソヒソ話をし始める生徒たち。
「……へぇ~……マコト、あなたなかなかな有名人じゃない、ちょっと見直したわ」
そんな軽口を言いながらエラがこちらを見てくるので、
「まあね……これでも一応子爵位を持っているし、
そこそこの武勇伝はあるからね」
っと、俺がエラに対して軽く答えていると、
「あれがシンダー枢機卿の令嬢か」
「噂の通り可愛いなぁ!!」
「いや、ちょっと待てよ! エラ嬢が座っているの四つん這いにした・・・人だぜ!?」
「まじか!? ……俺も座られてぇ~」
「俺なら座ってもらうことじゃなくて、
上に立たたれてヒールでグリグリとされてぇよ!!」
・・・頭のとち狂ったのがどうやらいっぱいいるようだ・・・
前半は分かる。ただ後半の何とも言えない声が聞こえる中で、
エラが俺に対して勝ち誇った顔をして、
「マコト、あなたは有名じゃないみたいね。褒めて損したわ」
「……こんな歓声?を浴びる有名人にはなりたくないけどね」
そう言い終わるや否やエラが
「そお? 私のことで盛り上がるなんて私としては嬉し……」
パシィン!!
喋っている最中に、投げナイフがエラをめがけて1本飛んできたのである!!
それを俺が当たる前に掴んだのだが……
「チィ!」
舌打ち音が周りにいる人集りの中から聞こえてきた。
そんな光景を見たせいか、今度は女子生徒たちがこちらを見ながら
「何よあの男……」
「何でナイフが当たるのを邪魔するのよね……」
「目障りな奴」
「ポイント稼いだつもりなんでしょう。あの女に取り入るために」
「あんな女にぃ~、死んでも私だったらイヤよ」
「とっととあの男死んでくれないかな?
じゃないとあの女が死なないじゃない!!」
そんな恐ろしい内容のヒソヒソが広がっていく……
女子って平気で恐ろしいことを言うなぁ……
それもこちらに聞こえるように……
「良かったじゃない。これで少しは有名になれたわよ」
クククと喉を鳴らしながら笑うエラ。
そんなエラに顔をしかめながら、
「……まったくもって嬉しくない有名人のなり方なんだけど……」
思わず大きくため息をついてしまう。
それはそうだろう、だって明らかに女子生徒たちからも
何なら男子生徒たちからも殺気の籠った目でこちらを見て来るのだから……
もうこうなってしまっては仕方がないと覚悟を決める。
そんな俺の思いをまったくもって理解していない発言をエラがしてきた!
「ねえ、マコト。あなた……感謝の言葉がないようだけど?」
……こいつは……
この状況にたいして感謝を!?
するわけないじゃん!!
俺はもっと違う意味で有名になりたかったのだけど!?
……もうこの場で何を言っても遠吠えでしかないよね……
思いっきりため息をついた後、
「ありがとうございました!……これでいいか?」
「……まあ、いいわ。
マコトの心がまったく籠ってないけど……今回は我慢してあげるわ」
そう言って俺にウインクしてくるエラ。
それを見ていた俺達を取り囲むようにいる人集りからは、
呪詛を口にする男女がいたのであった。
・・・入学式も始まってないのに、すでに男からも女からも嫌われるって・・・
俺の学園生活大丈夫か?
一抹の不安を抱えながら、俺は会場へと歩を進めて行くのであった。
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