150話目 ルビー・フォン・サウスベルト4
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「何で……どうして……そんなわけ……」
目に入ってくる光景に言葉を失ってしまい、続ける言葉が出てこない。
それもそのはずで私はサウスベルト領近郊で……
「川なんて……見たことがないわよ……」
目の前にはまだ川と呼ぶには憚られるサイズの水が流れる川があった。
目の前に流れる川を震えながら見ていて、思わず叫んでしまう。
「いやいや! 私の記憶にこんなものないわよ!!
この場所に川なんて出来るわけないじゃない!!」
いくらサウスベルトから離れた場所とはいえ、
平原はくまなく家来達に探索されている。
私だってこの辺りにまでは探索をしに来たことがある……
だから、当然この辺りのことを覚えてるわよ……
こんなところに川なんてなかった……
そもそも川なんてモノが見つかったのなら、大騒ぎになっているし、
川のある一帯を中心に街が発展していくに決まっているじゃない。
それが今の今までなかったのだから、川なんてモノは本来ここにはないのだ……
そう……ないのだ!
だから、すぐに私は結論に達するわよ!!
こんなバガげたことができる人間なんて1人しかいないはずだ!!
「何をしているの!! 向かうわよ!!」
私の檄を聞いて、川を口をあんぐり開けて、
呆然と見ていた爺や騎士達はハッと正気に戻り、
「ど、どこへですかルビーお嬢様?」
「そんなの決まってるでしょう!
アズーリのクソガキのところでしょう!!
間違いなくアイツが何かやってるに違いないのよ!!
じゃなきゃ、川がこんなところにあるわけないじゃない!!」
馬の腹を蹴って、駆けだす。
それにつられるように爺や騎士たちも駆け出し、
一団となってアズーリのクソガキの場所へと向かう。
「で、ですがルビーお嬢様!
アズーリ子爵様の場所なんてだいたいの位置しか伝わっておりませんけど!?」
「そんなの簡単じゃない!
この川に沿っていけば、クソガキの所にたどり着けるわよ。
だって、あのクソガキがこれをやっているに違いないのだから!」
馬を駆けながら、叫んで爺に返答する。
返事をしながら私はこの水がどこから来たのか考えていた。
ただすぐに1つの結論には達していた。
何か水が湧く魔剣を持っていたのよ!
だから、すぐに土地の購入を認めたのよ!!
クソガキめ……当てがあったにも関わらず、
最初はいらないっといった三文芝居をして、
私達から安く土地を購入しようとしたんだわ!!
ホント! 腹ただしいわね!!
サウスベルトに戻ったら、契約書を隅から隅まで読んで
穴を見つけてやって、契約無効を訴えてやるわよ!!
ただその前に、あのクソガキが持っているであろう魔剣をどうにかして奪ってやるわ!
そうすればこの一部だけではなく、サウスベルト一帯を肥えた土地に出来るのだから!
真正面から行ってもあのクソガキは絶対にとぼける…‥だから、無理でしょうね。
水を湧かし続けなければいけないものね。
ならば、水の沸いている場所に刺しているわよね?
……やっぱり掠めとるしかないわね。
何ならサウスベルトの兵を引き連れて行ってもいいわ。
あのクソガキが兵を見て、震え上がったところで奪えばいいわね……
王様に訴えようものなら、今回の件の賠償の1つに付け加えればいいわ。
何ならまた未遂の襲われをして、要求してもいいくらいよ。
そんなことを考えながら進んでいくのだが、
徐々に自分の考えに集中することが出来なくなっていた。
その理由は……
「あり得ないわよ……どうして畑が出来てるのよ……」
川の傍には道らしきモノが出来ており、今はその道を馬でゆっくりと駆けている。
そんな道の横にはまだ出来たばかりではあるが畑が出来ており、新芽が出てきていた……
正直に言えば、アズーリのクソガキのことを少しだけ……
本当に少しだけど尊敬してしまっていた。
この不毛な土地の中の不毛な土地で新芽が息吹く光景を見ることが出来るなんて……
スゴい……
ただ、そんな思いはすぐに振り払う。
だって、そのクソガキから、この土地も川もすべてを
これから奪わなければいけないのだから!
情けは無用だわ!!
悪いけど、我がサウスベルト家の肥やしになってもらうわよ!!
手綱を握る手にいっそう力を込めて、馬を駆ける。
するとすぐに人が住んでいるのであろう一帯へと近づいてきた。
すでに住人が住めるように小屋……というか、家が建っているのである!
「ありえないわよ……どうして家がこんなところに建っているのよ……」
この頃には、またアズーリのクソガキに対する尊敬の念が
沸き上がってくるのを感じていた。
自分に出来ないことでもあり、長い年月を今までかけてきたというのに、
未だに誰もなしえなかったというのに、この土地に来てわずかな期間で、
その定説を打ち砕いているのである……
……英雄……
無意識に頭に浮かんだ言葉に、ドクンと胸が一段熱くなるのを感じてしまったのだった。
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