128話目 魔族12
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「今日のところはマコト達の勝ちだ。だから、大人しく退いてやろう」
唐突に先程まで聞こえていた声が、また聞こえて来たことに驚いて顔を上げて
両断されたドロシーの方へと視線を向ける。
するとそこには気がつけば両断された箇所の衣服は切り裂かれているものの、
なぜかくっついている肌が露出しているドロシーが
何もなかったかのように立っていたのである!!
俺の視線と目が合うとドロシーはにこやかに笑い、
左手に持っていた右腕を軽く投げてキャッチを数度繰り返しており、
端から見ても上機嫌になっているのが分かる。
「……大人しくくたばっていれば、一度の死で済んだものを……
わざわざ二度死ぬために戻ってくるとはな……
まあ、知らないところで生き返るよりも断然いい。
そして今度は二度と生き返らないように灰にしてしてやろう!!」
……オリヴィア節が炸裂する。
だけど、立っているのがやっとのはずななのにこの人は……
そんなオリヴィア節を完全に無視してドロシーは、
俺の折れた十束剣の元へと向かい、そこに自分の右腕を投げ置いた。
「勝者には私からの細やかながら褒美を与えてやろうと思ってな」
そう言うとどこからか今度は大きな金属の塊を同じ場所へと投げ置いた。
そして、ドロシーが左手を投げ置いた先にと向けて、禍々しい魔力を放出するのである。
魔力によって浮き上がる魔方陣のような模様の中では、
ドロシーの右腕と金属が混ざりあっていく。
そこにドロシーから流れ出る魔力が合わさっていき、1つの球体へと変わっていったのだ!
現れた黒い球体は、ドロシーが呟く言葉に応えるように形状を変えていく。
「まずは剣の形に……。切れ味と強度はギリギリ両立できるところで……」
黒い球体がその面影もなく剣へと変わっていき、
刃の部分から柄の部分まで真っ黒で統一されている剣の形へと変わった。
「それとマコトは、前の剣に付与されている魔法も受け継ぐと……
なるほど、他の剣に付与されている魔法を奪い取る魔法が付与されていたのか……
戦いの最中で、相手の能力を奪うと……なかなかいいセンスのセレクションだな」
「……そこだけ切ってとられると響きが悪い……
それに自分が好きで選んだわけではないんだけど……」
そんな抗議の声には一切答えることなく、作業を続けていくドロシー。
「ふむ……条件付きで発動する付与魔法か……
これがマコトが言っていた聖剣技とかいうやつか……
どうしてこんな風にわざわざめんどくさい条件を課したのか?
まあ、条件はすべてクリアしているようだし、そのまま移せばいいか。
それと……こんなのいるのか?」
何とも言えない顔をしてこちらを見てくるドロシーに、
「……何のことだ?」
思い当たる節がなくて聞き返すと、
「魔力を込めると後光がさす魔法だ」
「いらない」
そんなのあったね……すっかり忘れてた。
この際、邪魔だし使い道ももうないだろうからいらないね。
それにもし俺に後光がさしたところを王様に見られたらあらぬ疑いを……
いや、あるんだけど……かけられても困るしね!!
「分かった、移行しておく」
……うん?
「いや、聞いてた人の話? いらないって言ったけど?」
「だから、移行しておいた」
……まあまあ、分かってたけど、こいつも性格が悪いって……
「魔法も移行できたし、あとは魔力を剣に込めていくと……」
禍々しいまで魔力がさらに剣に注がれる。
「……何で魔力を込めているんだ?」
そんな俺の質問に笑顔を作ってドロシーは嬉しそうに答えてくる。
「本来剣を作るときには玉鋼を熱して叩いて等々していくのだが、
もちろん私もしているぞ。
だが、今回使った金属は少々特殊でな硬度があまりに高くて
熱にも強いため普通の鍛冶が出来ないのだ。
それで確立されたのが、今回のように魔力を流し込む方法で……」
嬉々として説明をしてくれるが、微塵も興味がないためまったく頭に入ってこない……
というか、この金属が初めて見つかった時代からの歴史が今いるか?
どうやら彼女の琴線に触れたようでなかなか喋りが止まらない。
一応、込める魔力は止まっていないが、顔は色んな表情をして、
この思いを一心に伝えようとしていた……伝わらないけど……
ちょっと熱量に温度差がありすぎて……
そんな俺には目もくれず説明してくれて、
そして必要な本題へとやっと入ってくれた。
「この金属は、作製中に込めた魔力分だけ強度が増していくのだよ」
「なるほどね」
そこだけ伝えてくれればいいのに……と思ったら、また琴線に触れたようで、
「理解してくれたか!? それで込められた魔力とこの金属が……」
……また始まった……
動くこともままならないため、永遠に話を聞かされてしまった。
ちなみに近づいてきた魔物や魔族もいたが、
ドロシーによって潰され、引きちぎられ、そして作られている剣の糧となっていく。
あとは当然抗議するオリヴィアは完全無視!!
そして魔力が収束していくと、
「これで完成だ。まだ銘はない。何か付けたい名前があるか?」
「……剣に銘は必要なの?」
そんな素朴な質問に目を見開いて怒気を込めて、
「当たり前だ!! 剣は生き物だ!!
当然名前が必要だし、名前のない剣などただの金属の塊だ!!
それに魔族一の鍛冶師……いや、この世界で一番の私が打った剣だ!!
当然神剣には銘が付く!!」
「……世界一は……まあ、本当かもしれないから指摘はしないが……
神剣って……どういうこと? 初めて聞くけど……」
「当然だ。神の金属と呼ばれる金属を使い、世界一の鍛冶師が打てば、
聖剣とか呼ばれるものより遥かに格上の剣になる。
そこから導き出される回答は神剣以外にあり得ない!
いや、神剣すら超える逸品だな!! ただそのことを表現する言葉がない……残念だ……」
1人で言って1人で納得するドロシー。
逆らう気力も体力もなく、地面に這いつくばったままで考えて答えると、
「菊一文字」
「却下だ」
「天の叢雲」
「地味」
「備前長船」
「平凡」
……散々な言われようだ……何か過去にも同じようなことがあった気がするけど、
俺は常にこんな扱いをされるのだろうか……
「村正」
「“神剣ドロシー”だ!!」
……いや、最初から決めてだろう自分の名前を付けるって……
「大切に扱えよ」
そう言うと鞘に納めた神剣ドロシーを俺に向かって投げ置くのだ。
「いや、大切に扱えって言って、この扱い!?」
そんな抗議の声など一切聞かずに、俺の傍へと歩みよってきて、
おもむろに俺の手をとり剣の柄を握らせる。
「魔力を流し込め。そうすれば、マコト専用の剣になる」
魔力を流すよう促されて、従って魔力を流したところ、
一瞬黒光をして、すぐに収まった。
「うむ、どうやらこれで無事に終えたな」
満足げな表情を浮かべて踵を返して歩き始めたドロシー。
「どこに行くんだ?」
そんな俺の質問に笑顔で
「満足したから帰って寝る。
ああ、安心しろ門は閉じといてやるから魔族も魔物もこれ以上来ないからな」
そう言ってまた踵を返して歩き始めたドロシーに、今度はオリヴィアが
「待て、まだ私には何も勝利の品が渡されてないが?」
「……何が欲しい?」
「貴様の魔石だ!!」
「……それは無理だが……」
それだけ言うと喧騒の聞こえてくる方へと駆けていくドロシー。
それから数分後に戻ってきて、ドサリとオリヴィアの前に袋を投げ置いた。
「ここにいた魔族達の魔石だ」
「……仲間じゃなかったのか?」
魔石を手にいれるためには殺さなければならない。
その魔石がここにあるということは、魔族を殺してきたということになるのだか……
「仲間? 違うぞ。そもそもそんな連帯意識なんぞない」
言い切ってから、また門へと歩き出したドロシー。
そしていよいよ門をくぐろうとした時だった。
「また会えるといいな、マコト」
「二度とゴメンだね」
そんな辛辣な俺の言葉を聞いて、大笑いをするドロシー。
「フハハハハハ! つれないねぇ~。
だけど私とマコトの運命は繋がっているさ。だから……」
そこでニヤリと笑い、
「また会うことになる」
そんなドロシーに中指立てて、
「お断りだね」
俺の返事を受けて、満足気な表情を浮かべて背を向けて、
左手を振りながら門をくぐっていったのであった……
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