119話目 魔族3
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近づいてきた魔族に対して、地面に這いつくばっていたオリヴィアが動き出して、
魔族の喉元に噛みつこうとしたのである!!
「ふ……フハハハハハ! 面白いね! 君たち面白いよ!」
オリヴィアからの一撃をかわして、後ろに下がった魔族は、楽し気な笑い声をあげる。
そして、何を思ったのか、懐から砂時計を取り出したかと思ったら、それを地面に置いた。
「5分だ。5分間生き抜いた君たちの勝ちだ。
この砂時計は5分で落ちきるからな、落ち切ったのなら、君たちが勝ちだ。
君たちが勝ったのなら今回は手を引こうじゃないか」
「……何を考えてんだ、貴様は?」
そんな俺の質問にニッコリとほほ笑みながら魔族は、
「これで先ほどまで私に持っていた絶望に少しは希望が出てくるだろう?
そんな希望を持った者を握り潰すのは……楽しくて仕方ないだろう?」
「……クズだな」
まったく魔族らしい期待を裏切らない答えに反吐が出る。
勝ったとしてもこの魔族が約束を守る気がしない。
約束を破って絶望するのを楽しみそうだ……
なら、やっぱりこいつを倒さないとダメだな。
そう決意して、剣を握り構える。
そんな時だった、その二人の騎士はどこからともなく現れて、
「話は聞かせてもらった!」
「ならば、我々が相手をしよう!!」
そんな高々と宣言をする二人の騎士ヴァインとシャンパンだ。
「……タイミングいいな」
俺の言葉にニヤリと笑ったヴァインが、
「もちろんだ。そこの建物の陰に隠れて話を聞いていたからな!」
いい笑顔で応えてくれるけど、
「それって……俺たちが命懸けで戦っている中、隠れていたってことか?
死にそうになってたというのに?」
そんな俺の質問に、
「あんなビックリ化け物対決に参加できるほど、人間辞めてないからな!」
「そうそう。人間だ我々は!」
「ちょっと待て! 俺は少なくとも人間だけど!?」
「「……え?」」
二人の本当に驚いたような顔に、お前ら絶対に後で斬り倒すと心に決めるには十分だ。
「……で、いつまでこんな茶番を続けようと?」
俺達のやり取りに呆れたため息をつきながら、魔族の方が尋ねてくると、
ヴァインの方が言い切った。
「5分間だ!」
「そのためのこの茶番だ!」
……うん、君たち清々しいよ。
断言した二人にある意味尊敬のまなざしを向けながら、
魔族の方を見るのだが、魔族の方も『うわぁ~こいつら……』っといった視線を向けていた。
ただ、この二人もこの茶番だけでは時間が稼げないと分かっているようで、
「我々の秘剣を……」
「見せる時が来たようだな……」
そう言いながら、剣を抜いて構える二人。
どうやら本音では、ちゃんと魔族と戦うつもりのようだ。
……足元は二人ともめちゃめちゃ震えているけど……
構える二人を見て、魔族の方も意図を察したようで、
「これは失礼……茶番だけかと思っていたよ。
なら……楽しませてくれよな」
そう言って、二人に恐ろしいほどの殺気を向ける魔族。
そんな殺気を受けたにも関わらずひるむことなく魔族に向き返り、
「行くぞ! シャンパン!」
「ああ! わかった! ヴァイン! 我々の秘剣を受けろ!!」
そう言うと二人は動き出す。
距離を詰めるわけではなく、左右に激しく、ステップを踏みながら動き出す!
……何で……左右に?
「「フハハハハハ! 見て驚け! 聞いて驚け! これが我々の秘剣……」」
呆気に取られて俺も魔族も開いた口がふさがらない。
「「分身の術だ!!」」
「いやいや、それただの反復横跳びだろう?」
俺のツッコミが入る。
だって、ヴァインとシャンパンはただ左右に動いて、
反復横跳びしているだけだし、何より分身とか言っている割には、
残像が残っているわけでもない。
本当にただただ反復横跳びしているだけだ。
「これで貴様はこの道が通れないだろう!!」
「見たか! この分身の術の効果を!!」
何をどうしてそんな自慢げなのかが分からないが、
確かに道一杯に反復横跳びを二人でしているため、無駄に道を塞いでいるのは分かる…‥
分かるけど!!
そこの道を塞ぐ理由はなに?
別に俺達、そこの道を通りたちわけではないけど??
そんな二人に真顔になっていた魔族がスタスタと近づいたかと思ったら、
「へぶし!?」
右手を振るってヴァインの顔面に拳を入れて、
吹き飛ばして建物の壁まで吹き飛ばした。
そのまま今度は左手を振るって……
「あべぇし!?」
そんな声を上げて、魔族の拳を受けたシャンパンが
吹き飛ばされて建物に叩きつけられたのであった。
衝撃音だけは辺りに響いたが、それ以外は何の物音も響かない。
そのしばらくの無音が続いた後で、その無音を破り魔族が、
「……とりあえず、あの茶番は終わりでいいな?」
「ああ、もちろん」
そう言って俺に向き直ってきたのであった。
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