112話目 門番1
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ノースベルト公爵家に無事?にたどり着けたのだが、
「馬、って、はぁはぁ、全速力で、はぁ、こんなに、はぁはぁ、走れる、もの、だった、け?」
息切れしながら、口から漏れた疑問にオリヴィアが答えたくれた。
「公爵家の馬がただの馬なわけないだろう? 身体強化が使える馬だ!」
「馬なのに!?」
オリヴィアの返答に驚愕していると、
「もちろんだ。それに疲労回復の魔道具も着けているしな。
いつまででも全速力で走れるぞ」
オリヴィアだけでなく、なぜか馬も誇らしげな顔でこちらを見てきている気がする・・・
「それに馬車も強化済みだからな。ちょっとやそっとでは壊れないぞ」
・・・確かにあんなに激しく走ったのに壊れた様子もない。
馬車を見てそう思っていた時である。
バタン!!
御者が馬車の荷台から滑り落ちてきて、
オリヴィアの方へと震えながら手を伸ばし、
「か、勘弁してください、オリヴィアお嬢様・・・」
顔面蒼白で腕と足がプルプルと震えていた。
どうやら必死に馬車にしがみついていたのであろう。
さすがに御者までは強化はできなかったんだなっと思いつつ、
オリヴィアが倒れた御者に近づいたかと思ったら、
「すぐに戻って来るからな。準備しておけよ」
「うっそぉーーーん!?」
御者からそんな言葉が聞けるなんて思ってもいなかったよ……
って言うか、鬼だなオリヴィア……
この状態の御者をさらに追い込もうとするとは……
「行くぞ、マコト!」
絶望にうちひしがれたような御者を放っておいて、
何事もなかったかのように屋敷の中へと入っていく。
「あれは……放置していていいの?」
そんな俺の質問にオリヴィアは、
「大丈夫だ。私が子供の時から変わらないからな。それにほら見ろ」
オリヴィアに促されて視線を馬車へと戻すと、
土を払い何事もなかったように馬車へと乗り込む御者の姿があった。
「……芝居かよ……」
俺の心配した純粋な心を返してくれ!!
とりあえず気を取り直して、オリヴィアに続いて屋敷の中へと進んでいく。
進みながら、
「屋敷に何を取りに来たんだ?」
「? どういうことだ? 取りに来たのはマコトにも話したように継承に必要な物だが?」
「いや、屋敷に必要な物を取ってから、どこかに向かうんだろう?
それで馬車を待たせてるんだろう?」
そこまで言うと納得したようで
「あぁ~そういうことか。なら、問題ない。用事はここだ」
「……馬車には乗らない?」
「ああ、乗らない。待たせているのは、ご褒美だ」
清々しい顔で言い切るけど、普通にとんでなもないことを言ってるんですが!?
というか、あの御者はそっちの人!?
・・・そっか、そういう人は本当にいるんだな・・・
いい経験をさせてもらったよ。
ただ、そっちの階段には絶対に上らないけどね!!
使用人達からの挨拶を凛々しく返しながら
颯爽と歩いていくオリヴィアの後ろをついていきながら、
何度か来たことがあるエリアから外れて、
今まで一度も来たことがないエリアへと向かった。
警備に立っていた2人の騎士がオリヴィアと俺を見てから、
さっと槍で通せんぼをしたかと思ったら、
「こちらへは、オリヴィア様のみ通ることが許されております。
ですので、例えアズーリ男爵様とは言え、ここを通すわけにはいきません」
うん、そうでしょうね。
俺もそう思う。
だから、これ以上俺を連れ回すのは止めてい……
ジャラリ
オリヴィアが左腕をあげたため、鎖が音をたてる。
掲げた左腕を兵士達に見せながら、
「私とマコトは運命の赤い糸で繋がっているのだ。
2人の間を割くような無粋な真似は……やめて欲しいのだが?」
その台詞がどうやら2人の騎士には入っていないようで、
目を見開いてオリヴィアの左腕にはめられている手錠と
鎖が繋がっている俺の右腕を見ている。
その気持ちはわかるよ。
こんな不気味な鎖を運命の赤い糸とか言えるわけないしね。
「そ、それは・・・の、ノースベルト家の・・・」
うんうん?何?これ有名な物なの?ノースベルト家の何?
「呪われた・・・あの・・・」
・・・呪われた!? 今、呪われたって言った??
驚愕の顔を浮かべたままゴクリと唾を飲む2人の騎士。
「って、これ呪いの品かよ!?」
オリヴィアにキッと視線を向けるのだか、そんな俺の視線など気にする様子もなく、
いつもの澄ました顔のまま、
「代々伝わるノースベルト家の品だ」
「その言いかただと良い品に聞こえるけど、
今、2人の騎士が呪いの品って言ったんですけど!?」
そんな俺の言葉を受けて、オリヴィアは2人の騎士へと視線を向けて、
「呪いの品か?」
「い、いえ!! ち、違います!!」
「ち、違います!
ノースベルト家の、呪い・・・の、のろ~りとした大変良い品と言っただけです。
間違いなくアズーリ男爵が聞き間違いしただけです!」
「いやいや、のろ~りとした品ってなんだよ!?
初めて聞いたけど!?
だいたい良い品って言うんだったら、この品の特性ってなんだよ!!
代々伝わっている品って言うくらいだから、何か特性があるんだよな!!」
そんな、俺の言葉を聞いて、騎士の口から出た言葉は、
「・・・繋がったら二度と離れられない?」
「・・・従順になる?」
「どっちも呪われてんじゃんかよ!! 他に言葉は選べなかった?
せめてポジティブに受け止められるように言ってくれる?
あと疑問形で終わるな!!
こっちは特性なんて知りもしないんだがら、
尋ねられても答えようがないかな!!」
「「・・・あ!?」」
「“あ”じゃねえよ!! なるほどみたいな顔するな!」
思わず肩で息をしながら、2人と話をしていると、オリヴィアから
「そろそろ茶番は終わったか?」
「当の本人が茶番とか言うな!!」
そんな俺の台詞はオリヴィアには届かずに、オリヴィアは2人の騎士へと視線を向けて、
「これで分かったろ? もう少しで従順な夫になる相手だ。別に問題ないだろう?」
そんなオリヴィアの言葉を受けて、2人の騎士は、しばし考えた後、
「承知しました。従順な夫になるアズーリ男爵様なら問題ごさいません」
「いやいや、問題だらけの台詞だけどね!?
え? 何で夫になってんの?
あとさっきから気になってるのは“従順”って言葉なんだけど!
え、どいうこと?」
そんな俺のことは黙殺されて、2人の騎士は道を開けて、
オリヴィアはその道を歩き始めたのだ。
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