111話目 ノースベルト到着
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「久しぶりに戻って来たな……」
船を降りて凛とした姿でそんな言葉を言っているオリヴィアだったが、
口元には何かの跡が残っていた。
「着いちゃったか……」
オリヴィアとは対照的に俺の口からは、着いてしまったことへの
何とも言えない言葉が漏れてしまう。
ちなみにオリヴィアの汚物によってガッツリ衣服が汚れたので、
先ほど着替えてキッチリとした姿で船は降りております。
「「お帰りなさいませお嬢様」」
降り立った先では、二人の騎士が待っており、
オリヴィアの姿を見て駆け寄り、すぐに挨拶をしてきた。
「ああ、元気そうでなによりだ」
そんな二人に労いの言葉をかけるオリヴィア。
声をかけられた二人は、挨拶のために頭をさげていたが、
すぐに頭を上げてオリヴィア、そして俺へと視線を向けてくる。
オリヴィアの側近達は、結構な頻度で会っているから、
たいていの奴は見たことがあるのだが、この二人には見覚えがない。
そんな俺の疑問に気づいたのか、オリヴィアが二人の騎士に対して、
「そういえば2人とは初対面だったかな? お前たち、マコトに挨拶をしろ」
促された二人はこちらに視線だけではなく、身体ごと向きなおり、
まずは赤い髪の騎士の方が、自分の名前を告げて頭を下げる。
「俺の名前はヴァインだ」
次に隣にいた白い髪をした騎士の方はこちらに手を差し出しながら
「俺の名前はシャンパンだ」
そう言ってくるので、応えるように出してきた手を握り、
握手をしようとしたのだが……
……うんうん、こっちのタイプは良くわかったよ……
思いっきり力を入れて俺の手を握りつぶそうとしてきやがった!!
っというか…
「……やるんなら、顔に出すなよ……」
思わず呆れてしまった。
思いっきり力を入れていますよっといった感じで、
フンヌ!っと口から言葉が漏れたと同時に、鼻息荒く、顔を赤くして握ってくるのだ。
俺に何をしているのかがオリヴィアにバレるだろうに……
まあ、伊達にレベルが高いわけではない。
こんな普通の騎士に力を込められたとしても全く痛くない。
……そう! これだよ! 俺が求めていたのは!!
自分の強さを実感できるこの体験! 俺はこれを待っていた!!
ちなみにまだおもいっきり…というか、逆の手も加えて
思いっきり俺の手を握りつぶそうとするシャンパンに、
一切止めろとか言わないヴァインとオリヴィア。
まあ、オリヴィアの方はやれやれといった態度なのだが、ヴァインの方は違う。
明らかにやってしまえ!っといた感じだ。
どうやらヴァインの方も俺を目の敵にしているようだ。
しばらく続いたのだが、それをオリヴィアが苦笑しながら、
「握手もほどほどにな。これから数日貴様らは共に過ごすのだから、
まあ……目につくような喧嘩はするなよ」
……うん、絶対に俺が絡まれるということは把握しているような言葉ですねオリヴィアさん?
それならこの二人にハッキリと釘を刺してくれた方が俺としてはいいのですけど……
そんな俺の思いはオリヴィアには届かないし、
ヴァインとシャンパンはガッツリと俺の方を睨んでくる。
……仲良くは……なれそうにないな……
「で、この二人は側近の騎士なの?」
俺の質問にオリヴィアが答えるよりも早くシャンパンの方が答えてきて、
「我らのことを知らないのか!? どこの田舎者だ? いいか、覚えておけよ……」
そう言うと数歩後ろに下がるシャンパン。
さらにシャンパンと同じように下がったヴァイン。
なんで?っと思っていると、
「我らは!」
「ノースベルトにこの人ありと言われる!」
二人がそれぞれセリフを吐くと同時に親指を自分に向けて立てる。
その後、ためる様なポーズを取ったかと思ったら、
「ノースベルト三銃士とは!!」
「我々のことだ!!」
腕を組んで半身になってドヤ顔を浮かべて、俺の前に立ちふさがる二人。
「……芸が細かいな」
思わずそんな感想を漏らした俺に、激怒したシャンパンとヴァインが、
「芸などではない!」
「貴様!! 我々は愚弄するのか!?」
……何でこの二人はこんな本気で怒ってくるんだろうか?
だいたい愚弄するのかとか言う前に……
「三銃士って言う割には、二人しかいないって……どういうこと?」
そんな俺の言葉を聞いた二人は、
「グハぁ!?」
「グフゥ!? き、貴様……なんとひどい言葉を……」
「我々の最大の悩みをそんな軽くいい放つとは……」
「貴様には人の血が流れていないのか!!」
……そんなひどいこと言った?
交互にセリフを吐いていく二人を見ながら、
「……なんなんだ、この茶番は……」
呆れてしまうのである。
「ちゃ、茶番とか言うな!!」
「我らは、この芸にどれだけの年月を費やしてきたと思っているんだ!!」
「二人で血と汗握る練習を愚弄するとは……」
「いや、それならまずは騎士としての訓練をしなよ!?」
「「グフ!? む、無念……」」
本当に息ピッタリですごいとは思うが……
そもそも君らの本分は騎士ですよね?
じゃあ、まずは騎士としての訓練をしては?
そんな俺とヴァイン、シャンパンのやり取りを見ていたオリヴィアは、
「で、茶番は終わったか?」
「言っちゃったよ!?」
俺が茶番って言って怒らせたというのに、それを踏まえて茶番って言いきっちゃったよ、
この人!?
「「はい、終わりました。」」
「そこは認めるんだ!?」
二人の返事に思わずツッコミを入れてしまうのだが、
俺のツッコミは三人ともがスルーして、さあさあ、馬車へとオリヴィアを進めている。
「いや、まあいんだけどさ……」
別に返答を待っているわけではないので、ないならないでいいのだけど…。
とりあえずオリヴィアが乗り込んだ馬車へと続いて乗り込もうとした時だった。
「貴様はダメだ」
「オリヴィア様と同じ馬車に乗せるわけがないだろう」
「……え?」
それと同時に扉が閉められ…ない!
だって、俺とオリヴィアのの間には鎖があるんだもん!!
血で染められた呪われた鎖がさ!!
ヴァインが馬車のドアを閉めたのだが、鎖のために締まることがなかった。
「貴様……謀ったな!!」
「いやいや、俺は何もしてないし。勝手に自滅したのはそっちじゃんかよ!?」
正しいはずの俺の言葉は二人には全く届くことはなく、
ものすごい形相で俺は睨まれていた。
で、そんな俺たちのやり取りをしている中で、
「とっとと出発するぞ」
そう言って御者に指示を出して、馬車を走らせるオリヴィア。
「っていうか、俺乗ってないし!?」
「お、オリヴィア様!? 我々も乗っていませんが!?」
「お、お待ちをオリヴィア様!!」
二人の騎士からの声に応えるように開いたドアから顔だけを出したオリヴィアは、
「走れ」
そんな短い言葉を俺達にかけるのである。
っていうか、俺鎖で繋がっているんですけど!?
これで馬車とちょっとでも離れると引きずられるんですけど!?
身の危険しか感じませんが!?
そんな俺の心の叫び何て聞くこともなく馬車は動き出すのであった。
それも……
「馬車ってぇーーー! 全速力で走らせるーーー!
物じゃないからーーー! 死ぬ! 死ぬ! 死ぬ! 手綱を緩めろこん畜生が!!」
そんな声がノースベルト街にこだました昼下がりであった。
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