105話目 式典1
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この日、ロイヤルハイアット王国で最年少で男爵位を授与され、
歴史に名を刻む者がいるということで、多くの貴族が式典に参列していた。
期待の高さと共にその者の価値を見定めようとする者たちがいた。
そして、この日に授与される者が、一人、また一人と名を呼ばれて大広間に入ってくる中で
いよいよその者の名前が呼ばれた時、静かな静寂が流れた。
今から入室してくるであろう扉にすべての視線が注がれる中、
その者は堂々と中に入って来た……来た……来たのだが……
「ふふふ、愉快だな」
そう言って、クックックッと喉を鳴らしながら入室する……オリヴィア!!
なぜ? オリヴィア・フォン・ノースベルト? っとみんなが疑問を持ち、
そして驚きのあまり静寂となっている中で……
ジャラリ……ジャラリ……ジャラリ……
と鎖が擦れる音が響きわたる。
その鎖はオリヴィア・フォン・ノースベルトと今この場で主人公となるべき人物……
マコト・フォン・アズーリとをつないでいるのである!!
『『『『『『……何で?』』』』』』
皆の心の声が言葉として漏れないが、視線として注がれていることを肌に感じる。
その視線の意味にそりゃそうだと思いながら、前へと進む。
楽しそうにいつもよりも軽やかに歩いているため
少し前を行っていたオリヴィアが俺が少しだけ後ろになってしまっていることに気づき、
「遅いぞ! マコト!」
そう言うや否や繋がっている鎖をグイっと引っ張るのである。
それに引きずられるように数歩駆け足のような感じとなり前へと進み、
オリヴィアの横へとたどり着いた。
そんな光景を見ていた参列者たちからの視線は、今度は……
『『『『『『……ひ、引くわ!!』』』』』』
顔を低くしながらこちらを見てくる者、開いた口がふさがらない者、
あきらかに動揺と共にドン引きしている視線をこちらへと向けてくるのである。
……ですよね……
そう思いながら、隣にいる満足げな顔をしているオリヴィアと共に、
まっすぐと王様の前へと進んでいく。
ここで初めて王様の容姿を見ることが出来たのだが……
ゲームの世界と一切変わらぬそのワガママボディ!
贅沢して、さらには運動なんて絶対していないだろうその容姿に
ちょっと思わず感動をしてしまうのだが、
そんなことを表に出すわけにはいかない。
不敬罪とか言われたら、たまったもんじゃないし。
さてこのロイヤルハイアット王国での爵位授与儀式は、
なかなか斬新な授与式であり、先ほどまで授与されていた貴族たちの所作を見ながら
何とも言えない表情になっていた。
まずは……
なぜか王様が剣を抜いて剣先を斜め上にしたような状態でこちらに向けてくるのだ!
「汝の剣を私に捧げるか?」
そう言いながらプルプルと腕を振るわせて、
さらには、もうめんどくさいと言った表情を隠すこともなく出してくる王様。
確かに結構な人数に授与していたけどさ!!
そこはもうちょっと頑張っていただけないでしょうか!?
「ほれ! 早く言え!」
っと、小声で俺にだけ聞こえるような声を漏らしながら
催促してくるのである。
絶対に辛いと分かっているし、俺はとっととこの式典を終わらせたいと思っているため
腰に帯びていた十束剣に手をかけて、抜刀しようとする。
……普通だったら、王様の前で抜刀するとかありえないけどな……
そんなことを思いながら抜こうとした時だった。
俺の手にオリヴィアは優しく手を添えてくれたのだ!
そして、
「いいか、マコト。ここではな、剣を抜いて王様の剣と交わらせるのだ。」
「いやいや、知っているけど!?」
今まさにそれをしようとしたところで、
止められたんですが!?っと思わず心の中で抗議をする。
さすがに王様の前だしと思いながら、俺は剣を抜こうとする……けど!!
「マコト、どうしてこんな風に王様の持っている剣に
剣を合わせるようになったのか知っているか?」
「……いや、知らないけど……」
そんな理由なんて知らないし。
というか、この所作すら、先ほどから物陰で見ていて覚えた所作だし!
その意味なんて知る由もない!
知らない俺に対して、にこやかに教えてくれるオリヴィア。
「昔の貴族はその剣に誇りをかけていたのだよ。
だから、その誇りをかけている剣を王様に捧げることが、
忠誠心を捧げるということになって……」
朗らかに説明をしてくれるオリヴィア。
ちなみに王様の方は、いつまでも剣が来ないことで
差し出していた剣が徐々に下へと落ちてくる。
だが、何とかまた気力で持ち直して、斜め上に向けた状態へと戻す。
ただ、それも長くは続かずまた徐々に剣先がゆっくりと下がってくるのだが……
完全に……嫌がらせだよね……
俺の剣を抜こうとする手には、オリヴィアの手が添えられて、
抜くことが出来ないように抑えている。
そして、オリヴィアは俺に説明をしているようだが顔だけをこちらに向けて
視線は王様の方へと向いていた。
口角あがっていますけど!?
完全に悪い笑みを浮かべているオリヴィアに、
プルプルと震えて何とか耐えていた王様も遂に我慢の限界に来たのだろう。
「オリヴィア!! 邪魔をするな!!」
大声でオリヴィアを叱責してきたのである。そりゃ~そうなるって!!
っと、思っていたところで、あのオリヴィアが
目元を押さえてオロオロとし始める。
「そんな……ひどい……」
そう言って、目元を押さえているため泣いているような仕草になっているが、
俺は確信している。
……絶対にウソ泣きだ……
というか、周りの参列者たちも気づいているだろうし、王様だって気づいているよ!
何だその三文芝居は!?
ただそれでも王様の体面は悪い。
わなわなと震えながら、怒りを抑えて?それとも体面を気にしてか震えを抑えながら、
「・・・言い過ぎた。許せ。ただ、後も詰まっておる。
授与式の意味は後程教えるがよい」
王様からの言葉に顔を上げて・・・涙なんて微塵も出てない・・・首を傾けるオリヴィア。
「もうマコトで終わりですが?」
確かにそうなのだ。
俺が最後なのは知ってるけど、今ここで言う必要ある!?
そこはおとなしく流しておくべきことじゃない?
ほろ、王様もイラつき顔になってますけど!!
今にも爆発しそうな顔をしてオリヴィアを睨む王様だが、
そんな突き刺さる視線をどこ吹く風のオリヴィアは口角を上げているのであった。
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