表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生には、夢も希望もございませんでした  作者: Taさん
第四章 国家転覆計画 
131/960

99話目 謎解き編4

ローズが主となり、あっという間に騎士たちや奴隷たちを確保した。

安全が確保した後、俺、メフィスト伯爵、オリヴィア、エドモンドの順で

トンネルの中へと入ったのだが、




「これはこれは……かなりの大きさですね」


感心するような声を上げるメフィスト伯爵。

その声に応えるようにオリヴィアが鼻を鳴らしながら、




「ハン! よくそんな他人事で言うな。

 このサイズなら一度に多くの兵士を送ることが出来るぞ。王城にな!」



お前が犯人で、国家転覆を狙ってやっているんだろう?と

暗に示すように言うオリヴィアに対して、

余裕の表情を一切崩すことなく、メフィスト伯爵は涼しい顔のまま、




「その線もありますね。ただ、このトンネルを通っていざという時に

 避難するために用意しているというのも考えられるのでは?

 それなら多くの貴族がやっていると思いますが?」



その答えを聞きながら、凍えるような視線でメフィスト伯爵を睨むオリヴィア。

その視線に一切反応することなくメフィスト伯爵。


しばしの間、二人の間に沈黙が流れる……


ただ、オリヴィアの方は、苦々しいことが明白で口元が歪んでいる。




「だが、避難のためにここまで大きく、

 さらには長いトンネルを作る必要などないだろう?」



「何かの時に屋敷に籠る必要が出てきた場合に、

 食料や備品の輸送も出来るように配慮したのでは?

 それとトンネルを各貴族の屋敷の下を通したのは

 同じ貴族で仲間意識のある者たちの家々ですからね。

 逃げることも何かの拍子に助けに向かうことも考えてつなげたのが、

 これほど長くなっているのではないですか?」



「プルメリアホテルは貴様の派閥ではないが?」



「関係ない個所に出口を掘れば、誰もがここに出口があったのかと

 意表を突くことができますからね。

 私はどうしてここにトンネルがあるのかは知りませんが、

 そうではないかと思いますよ」



その言葉にキッとした表情をしたオリヴィア。




「ハン! 知らない!? 派閥の頭のお前が知らない!?

 笑わせるな! お前の指示だろう?」



そんな言葉に余裕の表情のままのメフィスト伯爵。




「私の知らないことはたくさんありますよ。

 頭なんて聞こえはいいですが、私はただ伯爵位についているだけですし、

 その私を慕って来ている者たちがいるだけです。

 慕ってくれているとは言え、そこに上下関係はなく、仲間というだけですよ。

 だから、お互い知らないこともたくさんあります。

 例えば……このトンネルのことなど、私は知らなかった。

 知っていれば、私の屋敷の下にもトンネルが通るはずですが、

 このトンネルは私の屋敷の下を通っていませんからね」



オリヴィアがどう迫っても軽やかにかわすメフィスト伯爵。

まあ、そんなもんだろうな……と二人のやり取りを聞きながら思っている。


緊張感がある二人のやりとりの横で

ローズに縛り方を聞いている騎士たちの会話なんて一切耳には入ってこない。



……お前ら今それやる必要ある?



ローズも分かっているなら教えずに静かにこの二人のやり取りを見つめろよ!?



どう攻めても躱されてしまうっというか、

この程度では躱されることが分かっているだろうオリヴィアは、

苦々しい顔から企んでいる笑みを浮かべて、急に俺の方へと向き直る。


そして顎でメフィスト伯爵の方へ指し示すと、短い命令を俺にだすのだ。




「やれ!」



……俺が何を企んでいるかなんて一切話していないのに、

次の一手があることを見抜かれていることに

何とも言えない気持ちになるが、

俺はオリヴィアの言葉に従うようにローズに指示をだす。




「ローズ!」



俺がローズの名を呼ぶと、手に持っていたロープを

渋々と言った感じで放して、トンネルのある一画へと向かう。


軽く……足でトンネルの側面を蹴りながら……


女性がする仕草ではないけど……


ある場所にたどり着くと足を止めて、その側面を思いっきり蹴り上げた!




……ローズ……オリヴィアのことを絶対に言えないだろう……



と、内心で思いながら、俺はオリヴィアとメフィスト伯爵、

エドモンドへと視線を向けて、




「調査をしている一環で、たまたまトンネルの側道を発見していてね。」



そこでニヤリと笑うオリヴィア。


エドモンドは困惑の表情を浮かべるが、まあ、それが普通の反応だよ。


メフィスト伯爵は、まった堪えることもなく、余裕の表情は崩れない。




「で、だ。マコト……この穴はどこにつながっていた?」



視線をメフィスト伯爵に向けたまま悪い笑みを浮かべたまま

俺に尋ねてくるオリヴィアに俺は答える。




「造幣局につながっていたよ。」



その答えを聞いてオリヴィアはますます笑いながら、




「そうかそうか、それはどういう風に言い逃れするのか楽しみだな……

 なあ、メフィスト伯爵? 説明をしてもらおうか?」



その質問に肩を竦めるメフィスト伯爵。




「まったく私の知らないことだよ。

 ただ、まあ、公人としての推測では、

 このトンネルのつながっている貴族たちは、

 造幣局に侵入しようとしたと判断して間違いないだろうね。

 ふむ……ろくでもない連中だ。

 ならば……エドモンド君だったかな?」



急に自分の名前が呼ばれて驚きながら、返事をするエドモンド。




「そ、そうだ……いや、そ、そうです」



「衛兵隊長として君がすべきことは何だい?」



「この件に関わった人間の逮捕です!」



「ならば、一刻も早く確保を急ぎたまえ。

 犯人共に時間を与えてはいけない案件だからね。

 必要なら我がメフィスト伯爵家の人間を使ってもらっても構わない。

 いや、出すべきだね」



そう言うとこの場から立ち去ろうとしたメフィスト伯爵の方を

ギュッと掴んでオリヴィアは、




「まあ、待て。貴様は当事者たちの頭だからな。

 手心を加えるかもしれん。

 なら、ここは公正公平なノースベルト家から人を出してやる。

 貴様ら!! 何を遊んでいる!

 今すぐ上にいるメフィスト伯爵家の付き人共を確保しろ!

 それとノースベルト家に行って、兵士を出せ!

 衛兵と協力するように指示をしろ!」



「「は!」」



オリヴィアの命令を聞いてすぐさま動き出す騎士たち。




「……まあ、当然私も疑われますよね」



メフィスト伯爵の言葉にキリっとした表情をしたオリヴィは断言した。




「当たり前だ!」



「この現状ですので従いますが、私は本当に潔白なので

 その点をご配慮くださいね。

 うちの使用人たちの逮捕はいささかやりすぎですよ」



「ああ、安心しろ。すぐに軟禁にしておいてやる」



「ククク、軟禁とは穏やかではないですが、

 危害を加えないのならいいでしょう。

 配慮していただいたと判断しましょう。

 それでこの後はどうするおつもりで?」



メフィスト伯爵はオリヴィアではなく、俺に尋ねてくる。

その質問にのっかるようにオリヴィアもまた俺に視線を向けてきた。




「次の一手はないよ。これですべて」



そう言いながら両手を上げて首を横に振って何もないとジェスチャーする。

その間に3人の中でしばらくの間沈黙が流れる。


一番の最初のその沈黙を破ったのはオリヴィアで、




「……フン! まあいい。ここまでの功績でも十分だ。

 何より……手駒が減って残念だな、メフィスト伯爵」



そう言うと踵を返して、トンネルの外へと戻って行くオリヴィア。

メフィスト伯爵の方は、その言葉を聞いて肩を竦めて、




「アズーリ準男爵には借りが出来たね」



ニッコリとほほ笑みこちらを見てくるメフィスト伯爵に俺は、




「借りではなくて“恩を売ってもらった”って思ってもらいたいけど?」



俺の回答にクスクスと笑い、




「そうだね、そうだね。

 この恩はしっかりと覚えておくよ。

 さて、私の使用人たちが不当に扱われていないか

 確認をしなくてはいけないから、私はこれで失礼するとしよう」



そう言って立ち去るメフィスト伯爵。

だが、数歩歩いたところで、急に立ち止まってこちらに振り向いて、




「これから長い付き合いになりそうだね」



「俺は、一切付き合いはしたくないけどね……」



「そうは言ってもきっと私と君はこれから嫌でも

 付き合うことになると思うよ。

 では、これからも末永く一つよろしく頼むね……

 マコト・フォン・アズーリ準男爵」



それだけ言うとまた前を向いて

トンネルの外へとメフィスト伯爵は歩き出すのであった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

是非ともブックマークと評価をよろしくお願いします。

そのワンポチが・・・やる気スイッチに直結しております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ