95話目 襲撃13
「いつまでクソガキにやられているんだ!!!」
今日も今日とて失態の報告を聞くことになり、怒り心頭に発する。
俺の前にいる部下が震えて小さくなっているが、
毎日毎日毎日同じ姿を見せれていれば、
その仕草がこちらを虚仮にしているとしか感じない!!
「毎日! 毎日! 毎日!! 同じ報告をしやがって!
お前たちは成長もしないのか!?」
「も、申し訳ございません!!」
勢いよくまた頭を下げる部下に罵声を浴びせるが、
ただただ頭を下げ続けるだけで何も変わらない。
「……で、ガキが一人でいるところを襲って、なぜ失敗した?
貴様らは、入念に下準備をして、
ガキが一人で図書館から帰るところを襲撃すると言っていたと思うが?」
「は、はい!
そ、それが……タイミング悪く、襲撃時に衛兵隊長が傍にいて……」
「はぁ!?」
思わず部下の言葉に呆れた声が出てしまう。
「なら、止めればいいだろう?
想定外の事態があったのなら、当然止めるという選択肢しかないだろうに?
なぜ止めなかった?」
「あ、いえ……時間がなかったもので……」
この発言に俺は、軽いめまいがした。
「そんなことで変えたのか?
だいたい時間がないとはどういうことだ?
時間よりも確実に殺すことこそ優先事項だろうに?」
俺から威圧が込められた質問にタジタジになりながら部下が答える。
「く、クズ子爵から首領が責められているのを見るのが嫌で……」
「お、お前ら……」
な、泣かせてくれる言葉を言ってくれるぜ……
思わずグッと目頭が熱くなるのを感じたのだが、
それをグッと堪えて俺は部下たちに先ほどの叱責を謝罪しようとしたのだが……
それを許さない来訪者が突然現れたのであった!!
「……こんな茶番を聞きに来たのではないけど……」
聞こえて来た声に俺も部下も目を見開いて驚き、
そして声の聞こえて来た入り口の方へと視線を向けると、
そこには優雅にこちらに歩いてくる女がいた。
その女を見た瞬間に俺はもちろん、部下も目を見開いて驚いた。
「お、お前……アズーリのところの……」
そこまで言いかけたところで、
次の瞬間には俺の目の前にいきなり現れたかと思えば、
頬に女が持っていた短剣をペチペチと当ててくるのである。
「その先の言葉を言えば……殺すわよ……。
いい子ね、分かっているなら私のお願いを聞いてくれるかしら?」
俺は女の言葉に従い言葉を続けずにうなづくと、
その行為に満足したような笑みを浮かべて、
頬に当てられていた短剣をどけて、
近くにあったソファーへと歩き、そして優雅に座った。
こいつにとって敵陣だと言うのに、
その態度は完全にこちらを舐めていやがる!!
……というか、こいつにとっては、ここは敵陣でもなんでもないんだろう……
自分達の目の前を優雅に歩いているというに、
誰一人動くことができないでいるのだ。
すでに先ほどの行動と共に込められた殺気で皆が感じている。
圧倒的強者の前で俺達弱者が何をやっても無駄だということを……
「私からのお願いは……今すぐ私たちの傘下に入ること……だけよ」
ニッコリとほほ笑みをこちらに向けてくるが、
すでに断ることが出来ないことを悟っている。
お願いでもなんでもねえ、ただの脅迫であり、そして従わなければ……
一瞬の間が空いた後、俺は覚悟を決めて深い溜息を吐いた後、
「……わかった。お前に従う。
ただ……この決定を受け入れられない部下は…‥見逃してくれ。
その代わり、俺は必ずお前の下で働く、
いなくなった部下の分までもしっかりと働くから……」
部下からこちらに何とも言えない視線を感じるが、
これがこちらの出来る最大限のお願いだ。
部下の命のためならこの身の一つぐらい安いもんだ。
そんな俺の回答に満足したのか、女の方は、
「ええ、もちろんわかった。
良かったわ、すんなり私のお願いを聞いてくれて。
おかげで手間がかからなかったもの」
嬉しそうに話し女だが、ふとその言葉に反応して質問をしてしまう。
「もし……断っていたら?」
恐る恐るといった質問に女の方は面倒だと言わんばかりの態度で立ち上がった後、
アイテムボックスから何かをゴロゴロと出して、床に転がすのである。
「……ひぃいぃい!?」
「うげ!?」
思わず悲鳴を上げる部下たち。
俺も目を見開いて驚くが、何とか声を出さずに堪えることが出来たが……
床に転がっているのは、生首の数々である。
男も女も関係なく転がっている。
「あなた達の前に、お願いをした組織があったのだけど、
私のお願いが断られちゃったから……根切りしてきちゃったのよ」
笑いながらこんなことを言ってくる女……
頭のねじが何本もぶっ飛んでやがる……
唖然として、目の前に広がる光景を見ていると、
女の方が早速俺たちにとんでもないことを言いやがった。
「最初のお願いは……コレ、クズ子爵の屋敷の前に置いてきて。
あ、いくつかは外から屋敷の中に投げ入れておいてね」
とんでもない依頼だが断るなんて選択肢はなく、
俺達はただただ頷くことしかできなかった。
「私の方は、ちょっとあなた達には無理だから、
クズ子爵にメッセージを送っておくから。
今日中にやっておいてね。」
それだけ言うと、次の瞬間には女が目の前から消えるのであった!
取り残された俺たちは、互いに何かを確認しながら、
生首を拾ってクズ子爵の屋敷の前へと持って行ったのであった……
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