94話目 襲撃12
「お帰りなさいませ、マコト様。今日はお早いお帰りですね」
ホテルについて、すぐにローズが俺の傍に寄ってきて出迎えてくれた。
「ああ、面白い物を見つけてな。」
そう言うと、俺は一枚の紙を広げた。
「……また図書館から盗んできたんですか?」
ジト目で見てくるローズに対して、
「またって何だ? またって俺は一度もやったことがないけど?
それに俺の経営している図書館なんだから、
そこの地図を持ってきても問題ないだろう?」
「……そのために図書館を作ったんですよね。
地図を集めたり、各領の特産品や収穫量、鉱石の採取量のデータなどを
個人で集めると色々と問題があるから、
図書館という公共の場所を作って隠れ蓑にするためですからね」
「……言い方になにか引っかかりを覚えるのは気のせいか?」
「大丈夫です。引っかかるように言っているのですから」
そんなことを言ってニッコリとほほ笑むローズ。
……こいつ、完全に俺のことをおちょっくってきやがる。
ローズに何を言っても皮肉でしか返ってこないと悟り、俺は話を続けていく。
「それでこの地図だと、ここにプルメリアホテルがある」
地図上のプルメリアホテルを指さす。
指さした場所を確認したローズは頷き、
「それで何か見つかったのですか?」
「ああ、こことクズ子爵の屋敷をつなぐんだ。」
そう言って、クズ子爵の屋敷からプルメリアホテルへとまっすぐ指でなどる。
それを見ていたローズは、
「なるほど……」
どうやら俺が言いたいことを理解したようだ。
神妙な面持ちでうなづくローズ。
「わかったかローズ?」
「はい。マコト様の指がキレイだってことですね」
「ちげえよ!! 今は、そっちじゃあない!
俺の指を見るんじゃなくて、指の動きを見ろよ!
そんでもって、結んだ直線の先を見て分かったかと聞いたんだよ!」
「あ、そっちも分かっていますよ。王城につながりますよね」
「……分かっているなら、そっちを先に言ってくれるか?」
俺の指摘に頭を下げて謝るかと思ったら……
「私じゃなくて……指が綺麗なマコト様に問題があると思うんです!」
「何でこっちに責任を持ってきてんの!? え? 何? 俺が悪いって!?」
「はい、そう言っているじゃないですか」
悪びれた様子もなくこちらを完全に悪役にしてくるローズ。
それに対して言いたいことがたくさんあるが、
言っていると話が進まないためこれ以上は言うことなく俺は話を続ける。
「多分、この直線上にある貴族共屋敷はすでにクズ子爵……というか、
メフィスト子爵によって懐柔されているか、寄子かだろう。
で、クズ子爵の所から地下に穴を掘って王城を目指している」
「……本当ですか?」
声は神妙に聞こえるのだが、なぜか一層笑顔が強くなっているローズ。
「……何で笑ってんの?」
「え? だって、面白そうなことが起こりそうじゃないですか」
「……いやいや、そこは期待したらダメなところなんだけど」
「いや、陰謀とか好きなんです。
さすがは王都、魑魅魍魎が住み着く街ですね。
なんだかワクワクしてきます」
ワクワクが止まらないのだろう。
ものすごくテンションが上がり、嬉しそうなローズを何とも言えない表情で見ながら、
「……ろくでもない性格だな。
まあいいや、で、地下道を通したいがために
このホテルを何とか手に入れようと躍起になっていたんだろう」
「なるほどなるほど……それが本当だと面白そうですね!」
「まあ、突拍子もないだろうけど。
ちゃ~んと調べたんだよ。
この直線上で一部道の下を通っている個所があるから、
その個所で地面を叩いて、音が変わることを確認した」
そう言って地図上で二か所ある道の下を通るであろう箇所を指さし、
ローズの方を見るとローズはうぅ~んっと唸った後、
「……勘違いってことは?」
あくまで疑うと…まあ、確かに突拍子もないことを言っている自覚はある。
だが、俺は推理小説で読んだことがある!
だから、クズ子爵とプルメリアホテルの位置関係を見た時には、ピーンときたんだ!
すぐに道のところを突き回って、周りから怪しい目で見られたけど……
それでも空洞があることを確認した!
「間違いなく。明日にでも確認してくれば。」
「わかりました。
もしそれが本当であれば、オリヴィア様に連絡を取るのですか?」
ローズの言葉に首を縦に振る。
「オリヴィアには伝えるけど、それよりも前にしないといけないことがある。」
「‥…? 何をでしょうか?」
小首をかしげるローズ。
そんなローズに対してニヤリと笑い。
「こいつらが掘っているであろう地下道と……ここをつなぐ」
俺が指さした方向を見て、ローズが益々笑みを強めて、
完全に悪役がするような笑みを浮かべていた。
「いいと思います……というか、そちらは私が手配を進めます!!」
「そうしてくれ。
ただ、あいつらは俺達が王都にある使いやすい組織を、
潰しに潰してきたからそろそろ当人たちが動いて来るからな。
出来るだけ早く手配を進めてくれ。ただし秘密裏だ」
「もちろんでございます。
すぐにそして秘密裏にひっそりと完成させてみせます」
俺とローズは二人して悪い笑みを浮かべている。
……傍から見たらきっと俺たちが悪者だと思われるだろうけど、
これでも悪を潰す側なんだけど……
そこでふと思い出したことがあった。
「そう言えばこの間、俺を襲ってきた組織はどうした?」
「え? 潰しましたけど。
あ、大丈夫です! しっかりと根切りもバッチリです。」
「……根切りって?」
聞きなれない言葉に恐る恐る尋ねると、満面のいい顔をしながらローズは……
「一族もろとも根絶やしに!」
「……そっか……。」
遠い目をしながらローズの言葉を聞かなかったことにした。
俺の耳に入るアズーリ準男爵は、苛烈とか、狂暴とか街中で聞く声の主原因は
間違いなくローズが引き起こしている……
まあ、それは甘んじて受ける…受け入れるが……
ナイフで組織一つをメッタ刺し!?
それだけではなく……
全員モヒカンにされている!?
何ていろんな意味でセンセーショナルなことをしやがるから、
「アズーリ準男爵様って、頭がおかしいんじゃない?」
とか、
「アズーリ準男爵様って、趣味がおかしいよ……」
とか、大変不名誉な噂まで流されていた。
前半は甘んじて受け入れよう……ただ、後半はどういうこと!?
何でそんなことしたの!?
って、王都民の疑問を俺もまた思うわ!!
ちなみにローズにそのことを聞くと、
「殺伐とした雰囲気の中に笑えるモニュメントが欲しかったのです。」
って……
じゃあ、絶命させるなよ!!
捕まえるだけでいいじゃんかよ!!
あと、遺体をモニュメントとか言うな!!
……はぁ~これからも思いやられるな……
一応釘は刺したけど、微塵も響いた感じはしない。
心の中でため息をつきながら俺は、次の一手を打ち、
そしてそろそろ動き始めるであろうクズ子爵たちの動きを警戒するのであった。
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