89話目 襲撃7
エドモンド来訪2回目!
「で、忠告してやったのに……何で、一週間後にこんな事態になってんだよぉ!!」
バン!っと目の前にあったテーブルの上に書類の束を叩きつける。
それを平然と見ているあの女……アズーリ準男爵家に仕える執事のローズという女。
「アズーリ商会の紙を使っているようでありがたいわ」
「それじゃねえよ! わかっているだろうが!!
この束はすべて賞金首の懸賞リストだよ!!
それもすべてこの一週間でアズーリ準男爵様に狩られた連中だ!!
ありえねえだろう!? 一週間だぞ一週間!
それで数百名の賞金首を狩るなんてよ!!」
「そんな褒めなくてもアズーリ準男爵様にとっては普通のことよ」
「褒めてねえよ! それに何でこんな事態が普通なんだよ!?」
俺の怒声を涼しい顔で聞き流すローズの態度にイライラが増していく。
ローズは、ちっとも俺の怒声に肝を冷やすこともなく、
今なんか目の前にある賞金首の金額を足して、総額を算出しようとしてやがるし!!
「だいたい一週間で犯罪組織を100以上潰すとはどういう了見だ!?
それも中小の犯罪組織だけじゃなく、大組織もその手にかけやがって!!」
「その分だけ、あなたには手柄になったんじゃない?
こっちは冒険者ギルドに渡さずにあなたの所に渡してるんだから。」
「ああ、そりゃ~ありがてえよ。おかげで涙がでるわ!!
って、言うと思ったか! ありえねえだろう!
今や留置所もいっぱい、刑務所もいっぱいだ!
臨時の収容所を作らなきゃいけない始末だよ!」
「とっとと斬首にすればいいじゃない」
「出来るか!! 物事には順序ってもんがあるんだよ!
それに軽犯罪しか犯してない奴を斬首なんかに出来るか!!」
「あら、そう? じゃあ、次は時間がかからないように
首だけ渡すようにアズーリ準男爵様に伝えておくわ」
はぁ~っと思わず間抜けな顔になってしまう。
何を言っているんだこいつ!?
「誰も斬首の時間を短くしろなんて言ってないんだよ!
軽犯罪者には更生の機会を与えるんだよ。
それでしっかりと更生して、世のため人のために働くんだ。
その機会を潰す奴がどこにいるんだ!?」
そんな俺の言葉にげんなりといった顔をしながらローズは、声を絞り出す。
「あれはダメ、これはダメって面倒くさいわね……」
「だいたい、こんなに組織を潰したら、王都内が混沌するじゃねいかよ。
いいか、王都には王都のルールてもんがあるんだよ。
あんなクズ共でもなあ、それなりにバランスを取りあっていて、
それで一応王都内は平和になっていたんだよ!!」
「……道を歩けばゴロツキ20、30人に絡まれたけど?」
「……そりゃ~そんな時もあるかもしれねえが、それは稀だ稀。
よっぽどのことがねえ限り、平和に暮らせるし、
まあ、目をつけられて小突かれて金をとられるかもしれねえが、
その程度で収まっていたんだよ。
それなのにアズーリ準男爵様が暴れて今や、王都内の犯罪組織は
虎視眈々と潰れた組織の後を狙ってやがる。」
「潰された組織の跡地とか、経営していた娼館とかでしょう?」
「そうだ。なんだ分かっているのか。
今は、まだどこもどこが動き始めるかを冷静に見ているから、
何も起きてないけどな、これから我先にって動き出すんだよ。
そうなると取り合いだ。
ゴロツキどもだけで小突きあう分にはいいがな、
そこから王都民にもそのしわ寄せが来るんだよ。
それでなくても王都は不況で仕事がないって言ってんのに、
お前たちが今までの平和をかき乱してくれたから、
おちおち王都民は夜も安心して寝られなくなっちまったんだぞ。
どうしてくれんだ? 分かっているのか?
自分たちがしでかした事の事態の大きさを?
アズーリ準男爵様にもお灸を据えなきゃいけねえんだ!!
だから今日こそは会わせろよ。」
俺がローズを睨んで言うのだが、ローズの方はまったく堪えてなく、
いつものように涼しい顔をして、まったく取り次ぐ気もない様子だ。
……こいつは……とことんこっちをコケにしやがって……
イライラが募っていく俺に対して、やっと口を開いたローズは、
「安心しなさい。アズーリ準男爵様は手を打っているわ」
「……どういうことだ?」
「言葉通りよ。それにアズーリ準男爵様が言っていたけど、
古い組織が潰されたとしても出来た空き地には必ず新しい組織が生まれるとね。
だから、何の心配もいらないわ」
「……新しい犯罪組織が出来るのを俺達が許すと思うのか?
出来た時に潰しておかないと気がつけば大きくなりすぎていて、
手も出せないなんてことになるわけにはいかないんだよ!」
「あら? さっきまでは組織があればこそ、
平和が保たれるって言っていなかったかしら?」
「そういう面もある。が、それとこれとは別だ。
そもそも組織があることを俺達は良しとはしねえ。
だけど、出来ているのなら仕方がなしに利用するまでだ」
「……腹黒い衛兵さんね」
「はん! 世の中をうまくわたっていくには必要な事だろうに…。
で、さっきの言葉からするに何かをアズーリ準男爵様は、
やるって言うか、やっているんだな?」
「ええ、すでに手を打っているわ」
「……まあ、ならいい。確かに面倒ごとをおこしてはいるが、
それでもキッチリとするべきことはやってくれるだろうからな」
良くはないが、それでもこのまま王都が最悪な状況になるよりかはマシだ。
あのガキは、確かにこの一週間で100以上の組織を
潰すといった離れ業をやってのけたんだ。
ただ歩き回れば出来るってことじゃねえ。
しっかりと策を練らなきゃできねえしろものだ。
そのガキが、空き地が出来ることに対して、大丈夫だって言っているということは、
何かをしてくるのは間違いねえ。
たしか、ノースベルトの方に、ガキがやってるアズーリ商会とか言うのが
あるって言っていたが、そこが経営に乗り出すってところか?
だが、そんなことをすればアズーリ商会が目の敵にあって、
集中攻撃を受けるだろうに……
まあ、俺程度の男が考えたところで、何の結論もでねえだろうからな。
まあ、策があるって言うガキに任せてみるか……
気がつけばローズは俺の前から立ち去っていったのだが……
って言うか、またあのクソアマは俺にアズーリのガキを会わせやがらなかった……
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