79話目 採用試験
「ローズ、君に採用試験を課す。」
俺の提案にローズは一瞬キョトンとして、なるほどっと手を打ったかと思うと、
「まだ、日も出て明るいというのに……
まあ、私はいつでもOKなので、じゃあ、寝室に行きましょう」
そう言って、俺の手を取って俺を寝室へと導こうとしてくる。
「違う! そうじゃない!!」
「そうなのですか? ……残念です……」
ちょっと残念そうな顔をするとこっちの良心にガッツリと傷がつく。
決してこちらが悪いことをしていないのに……
そもそもそんなことをローズとしたことないから!
そんな関係でもないから!!
こっちを悪者にするのは止めてください!!!
「では……今から領内の人間を皆殺しに?
では、一時ほどおまちくだ……」
「ストーーープ! ストップ! 待てローズ!
そうじゃない、俺はそんなことを一言も言ってない!」
「じゃあ、どのような試験を課されるのですか?」
本当にこいつは油断すると人を殺そうとする……恐ろしすぎる……
後でエヴァさんにクレームを入れておこう……と思ったけど、
逆に延々と愚痴を聞かされそうなので、
この件はエヴァさんには触れないようにしておこう。
気を取り直してローズの方を見て、
「アーサー・フォン・ナイツについては知ってる?」
「ええ、もちろん。チャラ男でしょう?」
「……一番先にその言葉が出てくるとは思わなかったけど……
まあ、そのチャラ男に絡んだ試験だ」
「ああ、去勢をして来いと?」
「違う! いや、必要かもしれないけど、今は違う。
実は俺は職が聖騎士なんだ」
「もちろん知っております。
ほかにも個人情報ですが12歳で、レベルは600を超えております。
それに聖騎士ではありますが、聖剣技は“イージス”と“カラドボルグ”の
二つしか使えません。
あと聖騎士なのに聖剣に嫌われているとも聞いております。
本当に聖騎士なの? と疑惑の目が向けられております……」
「……なかなか、人の古傷をえぐってくる回答をありがとう。
それと知りたくない情報まで教えてくれて……。
というか、個人の秘密をどうやって暴いてるんだ?
誰も知らない情報が含まれていたんだけど……」
そうすると人差し指を唇に当てて、
「乙女の秘密です。」
「……乙女? 今何歳だ……」
言いかけたところで冷やりと首筋に何かが当たる。
気がつけば俺の後ろにローズが回り込んでいた。
手に……ナイフを持って……
「乙女ですよ……そうでしょう?」
「・・・はい」
俺の返事に満足したようで気がつけば俺の正面に立っており、言葉を続ける。
「ここから推測するに聖剣技と関連しているのでしょうが、
あのチャラ男が関係しているのでしょうか?」
「ああ、どうやら俺は聖剣技を一度見ないと
その聖剣技を使えないらしい」
その言葉にえ?っといった顔を浮かべてローズは、
「詠唱を唱えても使えないのですか?
そのレベルだとどんな聖剣技でも使えると思いますが……」
「ああ詠唱は知っていて、唱えるけど、一切発動することはない。
で、イージスとカラドボルグは、アーサーが使っていたのを見て、
発動するようになったんだ」
「そんなこともあるんですね……
まだまだ私の知らないことがたくさんありますね……
分かりました、試験はあのチャラ男にマコト様の前で
聖剣技をすべて披露させるっということですね?」
「その通り。出来そう?」
「もちろんでございます。1時間もいただければ、
王都からこの場に連れてきて、
あとは闇魔法で少々脳を弄ればすぐにでも可能となります」
「……脳を弄るって……」
「大丈夫です。聖剣技はこちらが言えば放つようにはします。
ただ、それ以外は何もできなくなると思いますが」
「いやいや! それって人形にするってことだろう!?
王国最強の騎士は、今後のためにもちゃんと存命してくれる!?」
そういうと、ダメですかっと深いため気を吐いた後、
「では、次案ですが、その場合王都にマコト様に来ていただいた方が
手っ取り早いかと思いますが、いかがでしょうか?」
「どうするの?」
「チャラ男を誘惑魔法でひっかけて、その場で聖剣技を披露させます。
その時にカッコいい! とか言っておけば、勝手にどんどんしてくれると思います」
「……アーサー……一応王国最強騎士なのに、完全小馬鹿役にされてるな……
ちなみに成功確率は?」
「そうですね……99.99%だと思います、控えめに言って」
「控えめに言って!? アーサー完全に舐められているな……
ちなみに0.01%の失敗する可能性は?」
その質問に頬をポッとして、両手で頬を押さえてモジモジしながらローズは、
「マコト様に見られているので……
手元が狂って自我を崩壊させてしまう可能性です」
「……アーサーによる抵抗とかではないのね……。
王国最強の男なのに……。
まあ、いいや、じゃあ、その案のために王都に行くか」
「かしこまりました。すぐに準備をします」
こうして、俺とローズで王都へと向かう。
ホフマンは、まだまだ騎士団?の訓練等々しなくちゃいけないことがいっぱいあるのと、
エヴァさんはアズーリ商会の仕事でラガー領の方へと行っていていない。
“絶対にこの書類すべてに目を通して、サインしてくださいね!!”
っと、宿題の束を俺の執務室の机の上に置いていったけど……
まあ、見えなかったことにして、俺は王都へとそそくさと向かうのであった。
ああ、やっぱり人手が足りないなぁ~、俺の代わりに書類仕事やってくれる人を探さなきゃ!
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