78話目 ローズ・フォレスト・クラウン
がぜんやる気を出しているローズによろしく!と言って、
俺はこの話が終わったと思ったのだが……
「いやいや! ちょっと待ってください!
今、ローズ・フォレスト・クラウンって言いましたよね?
確実にローズ・フォレスト・クラウンって言いましたよね!?」
エヴァさんが慌てふためきながら俺に確認してくるので、
「そうだよ」
「いやいや、何そんなに冷静に!? え?
ローズ・フォレスト・クラウンってエルフって言いましたよね!?
彼女がエルフなわけないじゃないですか!? だって、耳だって普通の……」
そこまって言って、ローズの方をエヴァさんが見るのだが……
口がこれでもかってくらい開く。
……めちゃウケる。
言葉に出来ないほどの衝撃を受けているエヴァさんに変わって、
ローズに俺が質問する。
「それって……阻害する魔法とか?」
俺の質問にうなずきながらローズは、
「基本的には誘惑の魔法です。
自分の思うように誘惑させているのです。
例えば、恋するとその相手がとても美しく見えたり、
カッコよく見えたりするかと思います。
その意識を誘惑魔法で誘導して、私の認識を阻害し、
エルフの特徴部分を人と同じように見せるようにしております。
それを美しいと思うようになると、耳の形などのエルフの特徴が
自分の好きなように見えてくるのです。
……なのですが、以前お会いした時も思ったのですが、
私の誘惑魔法にアズーリ様はかかりませんよね?」
「・・・やっぱりあの時、誘惑魔法をかけていたのか・・・」
俺は思い当たる節があった。
意識がボォ~っとする感じになったのが、誘惑魔法によるものなんだろうな……
確かに美人だけど……
そこは否定しないが、それでもあんなに引き寄せるなんて普通はないよな。
「ええ、ですので、皆さん私に夢中になったというのに……。
あの時、アズーリ様だけがかかっておらず、
すでに魔法を私が発動していることを認識していため、
アズーリ様が皆さんに後天的な衝撃を与えるような発言をして
皆さんの目を覚まさせてしまったから……あんなことに……」
「・・・何気に俺のせいにしてないか?」
「え? そうですけど?
アレがなければ、今でも私はエルフ王国の王女として、
蝶よ花よと育てられていたんです……。
なのに……こんなことになるなんて……」
「……自業自得だと思うけど……」
俺がジト目で見るとその視線に気づいて、おびえたような態度となり、
顔を隠し、シクシクと言い始めるローズ。
「……いや、絶対に泣いてないよね?
まったく悪びれた様子も見受けられないけど?」
「……テヘ。バレちゃった」
テヘっとした姿が可愛らしい……
美人がやるとなんでも許されるって言うけど、
あながち外れてはいないよな……じゃない!!
「・・・ずいぶん地が出てきた感じだけど?」
「それはアズーリ様の前だからですよ……
あ、二人の時は、マコト様って呼んでいいですか?」
「……ダメって言ったら?」
そう言うとニッコリとほほ笑んで、きっぱりと言い放つ
「手が滑ってここにいる皆さんを皆殺しにするかもしれません」
「……それは脅しって言うんだけど……」
「そ、そんな私が脅すなんて!?
ひどい……こんなにマコト様に尽くしているのに……。
オロオロ……」
そう言いながら、顔を両手で覆って泣き真似をする。
「……まだ、尽くされる前だけどね。
……はあ、まあいい。契約魔法は本当なんだろう?」
そういうと泣き真似をサッと止めて、
先ほど見せてくれた契約書をこちらに見せてくれてる。
次の瞬間に魔法陣が紙から浮かんでくると、
そこに書かれた文字を説明してくれる。
「こちらに書かれていることが契約魔法に書かれている内容ですよ。
ほら、何の問題もないでしょう?」
俺にマジマジと見せてくれるので、俺はジッと読んでいく。
……確かに問題ないけど……
これが本当に契約魔法の内容か疑問はわくけど……だからといって、
俺にこの契約魔法をどうにかするような力はない……
いつもいつも思うけど、ここでチートか何かで
契約魔法を書き換えるとか俺はできないのだろうか?
……いや、まあ、出来ないんだけどさ……言ってて悲しくなってくるな……
「まあ、ローズを信じるしかないな」
「ありがとうございまーす!!」
満面の笑みで嬉しそうに返事をしてくるローズ。
まあ、下手に市中に潜まれて命を狙われるよりも
手の届く範囲にいてくれた方がいいだろう。
というか、手の届く範囲にいても気がつけば殺される可能性が高いけど……
俺とローズが円満解決?を迎えようとした時に
慌てて二人の間に入ってくるエヴァさん。
「ちょ、ちょっと待ってください! ローズさん!
さっきの話は本当なんですか!?」
慌てふためくエヴァさんにニッコリとほほ笑んでローズは、
「はい、間違いございません」
「い、いや、そんな笑顔で断言されても……」
唖然とするエヴァさんは、さらに言葉を続けて尋ねる。
「そ、それにさっきの話が本当ならエルフ王国の王女が
どうして家事が出来るんですか?
特技って言ってましたけど……いや、確かに超一流の仕事をしていましたし……」
「ええ、王女と言っても小さなエルフ王国ですから、
当然家事は自分達でやることもありますし、
何よりエルフの習慣で夫婦になった相手には尽くしていくのが習慣なのです。
ですから、当然家事全般王女と言えどしっかりと仕込まれるのです。
さらに、私の場合は王族ですので、そちらの礼儀作法も仕込まれております」
「だから……あんなに素晴らしいのですね……」
感心しているようで、引いているようなエヴァさんに、
アッという表情になって何かを思い出したローズは、
「そう言えば、特技に追加項目があります」
「・・・ふぇ?」
間抜けな返答をするエヴァさんに、さらに一段笑みを浮かべたローズは、
「暗殺です」
「ふぎゃ!?」
「音もたてずに、自分が死んだのも気づかない間に
ご希望の殺害方法で暗殺できますよ。
お望みなら、今すぐ誰かを首チョンパしてきますが?」
笑顔で軽く言い放つローズに対して、エヴァさんは、
「いやいや、そんな能力執事にいりませんよ!?
というか、誰も暗殺して欲しいと思ってません!!」
「・・・あ!」
「な、何ですか? つ、次は何を言い出すんですか?」
「一人じゃなくても大丈夫です。
複数でも……ただ、王都くらい人がいると……1日いただければ大丈夫です」
「全然大丈夫じゃない!!
まったく大丈夫じゃない!!
そんなこと私は望んでません!!!」
「じゃあ、どこにいる相手を首チョンパしてくればいいんですか?」
「いやいや、聞いていました!? 私の話!?
……む、無理です! 私に彼女を制御するのは無理です!
アズーリ様! 何とかしてください!!」
エヴァさんが俺の両肩を掴んで懇願してくるのだが、俺は笑顔で答える。
「無理、だって俺よりも強い相手なんだし」
「・・・え? アズーリ様より・・・強い?」
「そうだよ。なあ、ホフマン?」
俺の言葉にずっと黙っていたホフマンは静かにうなずく。
それを見たエヴァさんはわなわなと震える。
俺を掴んだままでいるため、その震えが俺にまで伝わってくる。
そして、ホフマンに向けていた顔がギギギっといった感じでこちらへと戻ってきて、
「そ、そんな人を私が制御できるはずありません……」
今にも泣きそうになっているエヴァさんに俺は、優しく肩に手を置いて、
「頑張れ! エヴァさんならできる!」
そんな俺の言葉にエヴァさんは、
「そんな言葉じゃ誤魔化されませんからね!!
私の手に負えるわけないでしょう!?」
「大丈夫! それにローズは諜報活動も得意だよね?」
俺がローズに質問すると、ローズは力強く返事を返してくれる。
「もちろんでございます。
すでに情報網を構築しておりますから、
何ならエヴァさんのスリーサイズを教えましょうか?」
その質問にローズをキッと睨んでエヴァさんが、
「そんな個人情報を漏らさないでください!
というか、犯罪組織の情報網でそんな些末な情報収集をしないでください!!!」
「けど、その情報網があれば商売に役立つんじゃない?」
そんな俺に言葉にエヴァさんは、一瞬考えて、
「た、確かに情報は商売には大事ですが……」
一瞬の躊躇が生まれたエヴァさんに俺はまた肩を叩いて、
「じゃあ、よろしく」
それに合わせるようにローズがエヴァさんの横にいつの間にか立っていて、
「よろしくお願いします、エヴァ様」
ニッコリとほほ笑むのであった。
「・・・い・・・いやぁぁぁあああ~~~!!!」
……エヴァさんのクールビューティーが崩壊したな……
けど、まあ、これはこれで可愛らしいね。
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