黄泉の神との面会
生い茂った木々に囲まれた、
ゴールの見えない石段の道を俺はひたすら登っていく。
汗をかいたりする事もなく、暑さや寒さも感じる事はないので止まる事なく進んでいけるのは
死んだ人のいい意味の特権である。
ある程度登りつめたところで
意識がぼやける感覚と共に、一瞬にして違う場所に俺はいた。
「ようやく、ゴールに辿り着いたな、、
にしても、この瞬間転移的なものにはいつも驚かされるなー」
「そして、、、今回は何故神殿の入り口ではなく、直接あなた様の前なのですか?
生と死、そして黄泉の神、イザナミ様」
いつもなら、神社の様な石の道があり両端に灯籠が連なっている参道に移転され、
部下の者と一緒に神殿まで入りイザナミ様の元につれてってくれるがお決まりなのだが、今回ばかりは違う。
直接、イザナミ様といつも面会している部屋に転生されたのだ。
ちなみに部屋は薄暗く、蝋燭の灯りが何本か並んだだけの明るさしかなく、時代劇なんかに使われているお白州のような部屋である。
「赤と青が意思を飛ばしておしえてくれたんでありんす。
故にそちとは何度も顔を見合った間柄じゃ〜
わざわざ家来のものを使わんでも良いじゃろうと思うてな〜」
と言って顔を振り、長い髪の毛を横になびかせた。
イザナミ様は、神々しいと言うよりも妖艶で
美しい綺麗な女性だ。話し方にも廓言葉が混じってる為、会話をすると尚それに拍車がかかってしまう。
(ほんと、会うのは死んでる時でよかった。
生きてる時に合ってたら、、興奮冷めやらぬ状態で夜も眠れなくなるところだ。)
そんな事を思っていたら、イザナミ様が続けて言葉を発した。
「それにしても、ほんに何度も何度もおいでくんなましー。そちは、いこう死ぬのが好きなエテ公か、もしくはあちきに惚れたか、
もし、あちきに惚れたとしたら大変な事になるでござりんす。」
「そんな、恐れ多いですよ。
ちなみに、興味本位で聞きますが、惚れていたらどうなるんですか?」
イザナミ様は不敵な笑みを浮かべた。
「そんなの、決まってるでありんす〜
性奴隷一択。朝から晩まで、その幽体がなくなり正気を全て吸い尽くすまで。」
俺は興味本位で聞いた事を後悔した。
質問に冗談で答えてる雰囲気ではなく、本当に正気を吸い取られる感じがして、恐ろしくなったからだ。
「ご冗談を、、、俺みたいな死にまくりのボンクラを性奴隷にしても、しょうがないでしょ、、」
「あちきはしんもじでありんす〜
そちなら、特に可愛がってあげるでござりんす。」
そう言って、イザナミ様舌をペロッとだし下唇を舐めた。
「・・・・・・・・」
俺はどうしていいか分からず黙っていると、イザナミ様が先に口を開いた。
「ほんにそちは可愛いのー
ただ、戯れはここまでにして本題に戻るでざんす。
何故、ここまで生まれ変わっても尚、黄泉に戻ってきた?偶然の死ではなかじゃろう。
まさか、とは思うが特殊能力を授かるのが目的かえ?
田無浩司、、、いや、櫻井雅也」
イザナミ様の目が、薄暗い中でも本気になるのがわかるぐらい変わった。
ーー櫻井雅也、これが消しても尚消える事のない
本来の俺、人格全てである。
そして、死んでも消える事ない記憶を作った元凶だ。