三途の川の門番
扉は大きい割には、音も立てずにゆっくりと内に開いた。その奥には、直角に近いもはや壁とも言っていい程の大きい道が現れた。
まるで、生きている者は絶対的に拒絶すると言っているみたいだ。
空は、扉の前の真っ暗よりも若干明るくなった為か紺色かがっていた。
「いつも思うが、この道を作った方は何を考えてんだろう。こんな道にしても、生者は絶対にこれないだろうし、死者なんて体力関係なしに上だろうが下だろうが行きたい場所にいけるのに、異質なだけで意味なくないか?」
毒を吐きながら、扉を通過した。
それを確認してるかのように、扉もすぐにゆっくりと閉じた。俺はそれも当たり前かのように、後ろも振り向く事もなく道を進んだ。
道の先は相変わらずとても長く中々ゴールが見えない。
疲れる事もなく、代わり映えのない道をただただ
単調に進んでいく。
楽しくも面白くもなく、退屈でしかない。
(はやく、、、着かないかな、、
電流並みのスピードが出てるはずなのに、こんなに時間かかるなんて、、、万里の長城かここは、、)
(いや、間違いなくそれ以上か、、、)
そんな事を思いながら、体感的に5分ぐらいだろう。
天辺が見えてきた。
「やっと、着いたぜ、、」
天辺にたどり着くと、そこには草原が広がっており
真ん中にひしめき合うように、青い鳥居が連なって道ができている。それを、俺は休むことなく奥へと突き進んでいった。
暫くすると、色とりどりの8個のドアが見えてきた。
「右から3番目の白いドアだったな」
声を出して再確認し
躊躇なくドアを開け向こう側に進んでいった。
ドアの先には、先程までの景色とうって変わって、
雲1つない青空、目の前には河原と川が広がっていた。
そして草や木も生い茂っており、まるで田舎にあるような川辺が広がっていた。
ーー俗に言う、三途の川である。
川の上には木製で作られた船が浮かんでおり、その船の中には何人か人が乗っているようだ。そして船の前と後ろには白装束の人らしき者がおり、木のオールの様な物でひたすら漕いでいた。
河原にはその船を待っているのか、人らしき者の列が
何箇所かできていた。
それを横から通り抜け、砂利道を突き進んでいった。
途中、列に並んでる者が川に飛び込んでるのを見たが
すぐに変な影に襲われていた。そして、そのまま跡形もなく消えていってしまった。
(死んでるんだから、、そんな、焦ってもしょうがないだろう、、、バカなのか?)
(あー急いでいる俺もある意味バカか、、
墓穴を掘ったな、、)
そんな事を思いながら、進んでいくと
砂利道の向こうに大きい山が見えてきた。
徐々に近づいてくにつれて、先程も見た青い鳥居の道と
大きな影が2つ見えてきた。
「前鬼と後鬼かー」
前鬼と後鬼。こいつらは神域の入り口にいる門番である。万が一死者が三途の川を渡らずにここまでたどり着いてしまった場合、入りこまない様に追い返したりする役目を主にしている。
そして、体長4m程もある2体の鬼の前までたどり着いた。
俺は鬼に声をかけられる前に、自分から声をかけた。
「よー久しぶりだな。信号コンビ!」
「我が名は、一本角の青鬼、前鬼」
「我が名は、二本角の赤鬼、後鬼、
誰だ我らを冒涜する呼び方をするのは?」
そう言って2体は怒りの態度をみせた。
「こんな、呼び方するのは俺ぐらいしかいないだろ?わからないかな?」
2体は少し悩めている表情をして、赤鬼の方が先に口を開いた。
「もしや、お主は!!!
いや、ありえない、、ありえてはならぬ!前鬼!」
「兄者しかし、この太々しい態度、ここにすんなりと来たのを見るとあやつしかいない。」
2体はどうやら納得したようだ。
「わかったところで早速、通してもらっていいかな?」
「・・・あぁ、よかろう。
正し1つ質問がある。なぁ、前鬼よ」
「あぁ、そうだな兄者、
流石に気になるからの」
2匹は一斉に声を揃えて言い放った。
『お主は、何度目の転生だ?』
俺は普通に答えた。
「30回目だな、少なくとも記憶の都合で把握しているのは」
「そうか、、、やはり間違えないようだな、、道を開けるぞ、前鬼」
鬼達の巨大な身体が横にずれ、鳥居の道が現れた。
「サンキューな!」
鳥居を進もうとした時、青鬼が寂しそうな声色で言葉をかけてきた。
「次は、、、"寿命で死ねる"といいな」
「あぁ、努力はするよ」
「健闘を祈る」
「別に何かと闘ってる訳ではないんだが、
まぁいいや、ありがとう。2人とも門番頑張ってなー」
そう言って俺は鳥居の奥へと突き進んだ。
ここからが神がいる場所、、、俺が目的としていた場所だ。