勇者パーティの日常Ⅰ
第二話です!
物語が動き出すのはもう少し先なので、一気に読みたい方は勇者パーティの日常はまとめ読みすることをお勧めします!
「せやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
勇者の振るう刀身からはまばゆい光が放たれ、その餌食となった悪魔型のモンスターは跡形もなく消滅した。
全身を包む青を基調とした鎧はところどころに金の装飾がほどこされ、それをまとう青年は絶世の美少年というに相応しいほどに整った顔立ちをしていた。その風貌はまさに勇者然としていて、彼と出会った人間はよほどひねくれていない限り彼に好意を抱くであろうことは容易に想像できるほどだ。
「流石カイト!!レベル100の魔物相手にも余裕ね!!」
そういって駆け寄る魔法使いの少女もまた、絶世の美少女であった。燃え盛るような赤髪と勝気そうな瞳からは彼女のプライドの高さと強気な性格がにじみ出ていた。
「クレハの魔法のおかげだよ。また腕を上げたんじゃないか?」
「えへへ。まぁそうね!感謝しなさい!!」
そんな二人のやり取りを複雑そうな面持ちで見ていた重そうな全身鎧に包まれた金髪の少女は、ふぅとため息をつくと、諭すように話しかけた。
「お二方。ここがどのような場所かお忘れか?ここは還ってきた者のいない魔物の領域、魔境。もう少し緊張感を持っていただかなければ。」
「ははは。ごめんごめん。でも今のを見ていただろう?いくら魔境といっても神の加護を受けた僕たちの敵になるようなモンスターはいないよ。シャルももう少し肩の力を抜いたらどうだい?」
「そうよ!!魔物なんて私の魔法でぶっ飛ばしてあげるから安心なさい!!」
まったくもうとあきれる彼女の顔にも、自分たちならなんとかできるという自信がみなぎっていた。
そう、彼らは勇者パーティ一行。魔境を超えた先にある魔国。その王である魔王を倒し、世界に平和をもたらすことを期待され、神聖ラングリア王国からやってきたのであった。
ドワーフの深火山、エルフの大森林、ホビットの中央平原など、様々な場所を冒険した彼らは十分に成長し、確かな力と自信を胸に魔国へと向かってる最中だった。
しかし、そんな中、カイト、クレハ、シャルと比べると圧倒的にみすぼらしい恰好をしたものが混ざっていた。全身は砂ぼこりに紛れ、もともと緑であっただろう農夫風の服もところどころ破れている。これまた壊れかけた革の軽鎧に身を包み、背中には大きなリュックを背負っていた。
「お、これはまだ使えそうだなぁ」
「あんたまたそんなゴミ拾って!荷物が増えるじゃない!!」
「いて!!」
クレハの放った魔法がレオに直撃し、衝撃で吹っ飛ぶ。
こうやってパーティにどやされるのも彼の常であった。
「痛いじゃないですかクレハさん!それにこれはゴミじゃありません。れっきとしたアイテムです!」
そういってレオは今しがた集めたアイテムを自慢げに見せつける。
「はぁ!!?それがアイテムですって??どっからどう見てもただのガラクタじゃない!!なんのアイテムだっていうのよ!」
「それは、、、ちょっと待ってくださいね。鑑定!」
ピコん♪
<<悪魔の差し歯>>
歴戦の悪魔が愛用していた差し歯
闘いのなかで欠けてしまった前歯の代わりに使っていた。
かの有名な名工ドワッフンのロゴ入り。
悪魔の体液が付着していて汚い。
「。。。わかりました!!これは悪魔の差し歯です!!」
「ただのゴミじゃないの!!こんのバカぁぁぁぁ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
先ほどのものとは比べ物にならない威力の魔法で吹き飛ばされるレオ。
しかし、手にはしっかり悪魔の差し歯を握っていた。
「ははは。まったくレオは相変わらずだね。」
「クレハ殿、やりすぎです。レオが死んでしまいます。」
「ふん!!こいつが悪いのよ!!」
「やった!!悪魔のコンタクトレンズだ!!」
「いい加減にしなさい!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そんないつものやり取りにみんな笑いあうのだった。
勇者カイト、大魔法使いクレハ、王国騎士シャル、そしてそのサポートのレオ
実力にばらつきはあるものの、シャルが敵をひきつけ、クレハがそれを援護し、カイトがとどめをさす。
バランスの取れたパーティだった。そして基本戦闘に参加しないレオはそんな彼らの普段の生活を陰ながら支えていた。といっても彼が弱いわけではない。むしろ上級冒険者と比べてもその実力は勝るとも劣らなかった。が、自分の役割に徹していたため、彼らを見た人たちにはただの足手まといに見えていたのもまた真実であった。
もう少し日常です^^
楽しんでいただけたら幸いです^^