第3部分
目を覚まし、向かうは飼料屋だ。ここで傷んだ野菜や果物といった食用には向かない物を買い集める。籠一杯に買い集めて代金を払おうとすると、「スモールボア討伐に使うんだろ?お代は貰えないよ。頑張って倒してくれればいい。」そう言われ、飼料屋を後にする。
おっさんの話によると、
・畑にもスモールボアは居るが、そのまま立ち向かうと逃げられる。
・畑から離れた場所に屑野菜や傷んだ果物を撒いておく。それに集まったスモールボアを攻撃すれば、餌を取られまいと反撃してくる。
・一気に餌を撒くと、大群を呼び寄せるので注意しろ。
・餌籠は木に吊るせば取られないので、気に吊るしておけ。
といった話だった。畑の野菜に群がる害獣を、餌を撒いて倒す。確かに効率はいいが、それでいいんだろうか。まぁでも、一般的な方法みたいなので、いいんだろう。
早速、両手で掬えるだけの量を畑から離れた場所に置いてみる。
スモールボアが集まるまで少し木の陰に隠れて待機しよう。
暫くすると、小型の猪のような生き物が餌に向かって歩いてくる。冒険者ギルドで特徴を教えてもらっているのでわかる。あれがスモールボアだ。
スモールボアはフゴフゴいいながら餌を食べている。木の陰からこっそり近づこうと動くと、すぐにこちらに気付かれる。
フゴフゴ……フギャアアアア
おっさんの言う通り、怒って襲ってきたな。
餌を背に威嚇を続けるスモールボアに盾を構えジリジリと近づく。突進してきたところを躱し、横から蹴り飛ばす。態勢を崩したところでショートソードをその胴体に差し込む。
はじめての戦闘はっさりと終了。ロープで足を縛り、手に持って村に戻ることにする。
向かうは商業ギルド。毛皮と肉の依頼を受注・達成する。解体する勇気はないので、報酬が半額になることを受け入れ、解体をお願いした。
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名前:ヤマト
職業:村人A
所持金:27,500G
所持P:50P
冒険者ギルドG 1/10件、商業ギルドG 2/10件
Eショートソード Eバックラー Eハードレザーセット
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冒険者ギルドで依頼を受ける前に、武器屋へと足を運ぶ。
「スモールボア討伐をやっているんだが、何か良い武器はないだろうか?」
武器屋のリリーさんに相談をしてみる。
「ベタな選択だけど、技能がある前提で言うなら弓か投槍、投げナイフ。動きを封じる意味で罠を使う人も居る。予算は跳ね上がるけど、魔道弓というものもあるわ。技能がない前提だったら、毒餌になるのかな。肉がダメになるから商業ギルドからは良い顔はされない。」
うーん、どの武器も上手く使える気がしない。魔道弓は気になるけど、値段が跳ね上がる時点で買えるものではないことが分かる。毒は肉がダメになっちゃう時点で意味がないし、無難なラインは罠なんだろうか。
「スモールボアでよく使われる罠っていうのを見せてもらえるかな?」
リリーさんは奥から金属製の小型トラバサミを持ってきた。
「罠はこれなんだけど、1つだけ欠点があるの。仲間が罠に掛かると、スモールボアは逃げてしまうから、1回に倒せるのは1匹になるの。」
これも駄目だな~。お金を溜めて魔道弓を目指すしかないか。
リリーさんにお礼を言って、冒険者ギルドにむかう。
「こんにちは。スモールボアの討伐依頼を受けたいのですが、手続きお願いします。あと、台車の貸し出しをお願いします。」
ギルド職員のエルサさんに手続きをお願いする。
「依頼の手続き完了しました。台車の貸し出しはギルドの裏手で行っていますので、こちらの用紙を持って裏に回ってください。お気をつけて、行ってらっしゃい。」
エルザさんはニコニコと送り出してくれた。
ギルドの裏に回り、職員に台車貸し出しの用紙を見せ、台車を借りる。小型のリアカーみたなものだった。餌にする屑野菜入りの籠を台車に乗せ、村の外れまで移動する。
前回同様の餌場に、餌を置き離れた木陰から観察する。
1匹やってきて、飛び出そうとした時にもう1匹やってくるのが目に入る。2匹同時は大丈夫か?何か牽制になる物があればいいが…。周囲を見回し石を見つける。ショートソードを軽く地面に刺し、当たれば幸運!と思いつつ石を2匹目のスモールボア目掛けて投げる。
フゴフゴ……ゴフッ…
餌を食べていたその頭に見事石は命中し、絶命はしていないもののピクピクしている。
武器を手に取り、餌場へと駆け寄る。
フゴフゴ……フゴ?…フギャアアアア
近くで仲間が倒れたことにやや混乱しつつも襲い掛かってくる。攻撃を避けて側面を蹴り飛ばし、追撃で武器を突き刺す。動きがとまったところでピクピクしているやつにも武器を突き刺す。2匹の討伐達成。
台車を餌場まで運び、スモールボアを台車へと乗せる。
残りの餌を撒いた後は同じ木陰から観察タイムだ。今回は事前に石を探して、5個ストックがある。暫く様子を伺うも、寄ってくる気配はない。日差しも良く、ポカポカで眠くなる。はっ、と目を覚ますと餌に群がる大量のスモールボアが目に入る。これは厳しいよな…。と思いつつも、離れた場所にいるスモールボアに石を投げてみる。
フゴフゴ……フギャッ…
1匹目は見事命中。ピクピクしている。
続けて2投目、外れた。3投目、命中。4頭目、命中。5頭目、外れた。
3匹のピクピクをどうやって回収するか悩む。10匹以上に囲まれるのは勘弁して欲しい。
暫く様子を見ていると、餌を食べ終えたのか、周りをキョロキョロしはじめた。
今がチャンスかも!と盾を構えて大声を上げて突進する。
一瞬、反撃する素振りも見せたものの、幸運なことに残りのスモールボアは逃げていった。
ピクピクしている3匹に武器を突き刺して回り、台車に回収する。
餌も無くなったので、ギルドに報告に戻ろう。
まずは冒険者ギルドに寄りエルサさんに依頼の完了処理をお願いする。
「スモールボアの討伐完了ですね。…今回は5匹討伐ですので、報酬は10,000Gになります。ギルドカードをお願いします。…はい、続き完了です。お疲れ様でした。」
冒険者ギルドでの討伐依頼は無事に達成することができた。
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名前:ヤマト
職業:村人A
所持金:37,500G
所持P:50P
冒険者ギルドG 2/10件、商業ギルドG 2/10件
Eショートソード Eバックラー Eハードレザーセット
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台車を借りたまま、商業ギルドへと足を運ぶ。
商業ギルドに入り、エステルさんに依頼の受注と完了処理をお願いする。
「こんにちは、スモールボアの毛皮と肉の納品ですね。全て納品で宜しいですか?…はい、それでは5匹分の毛皮と肉の依頼を達成となりますので、報酬は5,000Gとなります。解体費用として半額頂きますので、補修は2,500Gです。今回の依頼でランクアップとなりました。おめでとうございます。」
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名前:ヤマト
職業:村人A
所持金:40,000G
所持P:600P
冒険者ギルドG 2/10件、商業ギルドF 0/30件
Eショートソード Eバックラー Eハードレザーセット
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「ありがとうございます。ランクアップで新しい依頼が増えたりしますでしょうか?」
エステルさんに美味しい話はないかと聞いてみる。
「Gランクと同様の依頼と、Fランクでの依頼でしたら、スモールボア関係ですとこちらになります。」
・素材調達 スモールボアの毛皮 報酬:1匹あたり500G
・食材調達 スモールボアの肉 報酬:1匹あたり 500G
・素材調達 スモールボアの毛皮5匹単位 報酬:1単位あたり3,000G
・食材調達 スモールボアの肉 5匹単位 報酬:1単位あたり 3,000G
数量を要求される代わりに、報酬はやや多い。端数は1匹ごと処理が可能か。
「わかりました。ありがとうございます。」
エステルさんにお礼を伝え商業ギルドを後にする。自宅に戻る途中、冒険者ギルドに寄り台車の返却も忘れずに行う。
自宅へと戻り福引Pが溜まっているので福引をしてみようと祈りを捧げる。
貧血の眩暈のような感覚があり、気が付くとそこは転生課だった。
「ヤマトさん、おかえりなさい。福引に戻られたのですね。どの係に向かわれますか?」
案内のおねーさんは少しフレンドリーになっていた。
銀なら6回、金なら3回福引が出来る計算。何にするか…
「これからもPは入手できますので、職業か技能を増やされてはいかがでしょうか?それ以外ですと、加護を与えてくれる女神を増やすという手もあります。加護が増えると、組み合わせにもよりますが、職業や技能に発展することもあるそうです。」
うーん、悩む。そのまま職業や技能を選ぶことがアンパイだとは思うけど、加護を増やして職業や技能を増やすのも手だな。女神の加護をコンプしたら嫁になるとかあると面白いな。
「そのような機能はございません。」
おねーさん、こういう時はしっかり考えを読んでくる。
「では女神を金2回、銀2回でお願いします。」
「転生女神登録係」へと移動し、福引を引く。
金「狩猟の女神A」
金「戦争の女神A」
銀「戦争の女神C」
銀「戦闘の女神C」
戦争の女神を2枚も引いてしまった。これは完全にPの無駄だ。
「戦争の女神の加護を受けると…戦争が起こりやすくなると言われています。ただ、今回引かれたのはABですので、C単独よりは制御がしやすいはずです。過去に引かれたCも同時に使用すると、戦争の女神(特)となり、確実に戦争が起こることとなります。」
あっ、察し。という顔で説明してくれる。確実に戦争が起こる世界とか要らんでしょ。
戦争の女神はごみ箱にポイである。
「狩猟の女神Aは戦闘と生産の両方に良い影響があります。戦闘面としては加護の恩恵で戦闘技能の弓術Bと投擲術Bが取得されます。生産技能としては解体Bと罠製作Bが取得されます。戦闘の女神Cは特に取得可能な技能はないのですが、戦闘時に与えるダメージ量がやや増加するといった恩恵があります。この2つの加護はプラス方向に働きますので、使われることをお勧めします。」
おねーさんの言う通り、プラスになるので使うことにしよう。
「では戦争の女神は使用しない、狩猟の女神と戦闘の女神は使用するということで問題ないでしょうか?」
話さなくても話が進むので、慣れると便利になってくる。その方向でと返事をして、おねーさんの案内で「転生室」へと向かう。
転生室では呼ばれた狩猟の女神Aと戦闘の女神Cと軽く挨拶をする。
2人の女神と話している時、2人の後ろで3人の女神?がなにやら騒いでいる。
案内のおねーさん曰く、戦争の女神ABCが選ばれなかったことが不服だとふじこふじこしているそうだ。
少し面倒そうだけど、3人の女神とも話すことにした。
「戦争が頻繁に起こる世界は望んでいないので、選ばなかったのですが、そんなに問題でしょうか?」戦争の女神に問いかけてみる。
C「人間ごときが我々の加護を断るなぞ論外」
B「人間ごとき戦争で滅ぶことが望みであろうに」
A「平和の女神が邪魔しなければ、とことんやるぞ」
……これ完全にあかんパターンよね。Aに(特)になった場合、どんなことが出来るのか?聞いてみた。CBは話が通じる気がしないので、放置だ。
A「ほう、(特)に興味をしめすか。(特)があれば、あらゆる妨害を阻止し戦争が行える。戦争もCBのような一時的なものではなく、世界規模で永遠に行うことができる。」
戦争の女神は本当にハズレだな。ふじこふじこを無視して、転生の魔法陣へと向かう。
狩猟の女神、戦闘の女神に送り出され、異世界へと戻る。
「ハッ!!」福引がおわり戻ってきた。外を見るとまだ明るいので、そんなに時間は経過していないのであろう。
ステータスカードで全てを確認する。
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名前:ヤマト
性別:男
年齢:16
職業:村人A
所有技能(戦闘):
・剣術C
・格闘術C
・弓術B
・投擲術B
所有技能(生産):
・解体B
・罠製作B
所有技能(その他):
・幸運C
・甲種仲間B
隠蔽技能:
・大地の女神Bの加護
・商売の女神Bの加護
・狩猟の女神Aの加護
・戦闘の女神Cの加護
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しっかり反映されている。戦争の女神といった地雷は回避できている。
同じくステータスプレートで簡易を選択してみる。
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名前:ヤマト
職業:村人A
所持金:40,000G
所持P:0P
冒険者ギルドG 2/10件、商業ギルドF 0/30件
Eショートソード Eバックラー Eハードレザーセット
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こちらは所持Pの部分だけの変化か。間違いないな。
弓術、投擲術を覚えたので急いで武器屋へと向かい、武器を探す。
「弓と投擲武器を見せてくれないか?」
リリーさんにお願いする。
「あら、弓も投擲も駄目だって言ってたのに。気が変わったの?ちょっと待っててね。」
前回来た時には弓は使えないと言ってたのに、翌日来た時には使えますと言う客が居たら確かに違和感は凄いよな。と、思っていると、リリーさんがいろいろと抱えて戻ってきた。
・短弓(無限矢筒付き) 20,000G
・強化短弓(無限矢筒付き) 50,000G
・投げナイフ10本(専用ベルト付き) 20,000G
・小型鉄杭5本(専用ベルト付き) 20,000G
「強化短弓は弓術Bがないと引けない。小型鉄杭は投擲術Bがないと上手く投げられない。ショートソードとバックラーを下取りに出すなら、少し値引きもできるよ。」
これは悩む、技能的には弓なんだが近接武器が0になるのはどうなんだろう?
「弓と剣を同時に装備するのはやめたほうがいいわ。弓の女神と投擲の女神は相性が良いけど、弓の女神と剣の女神、盾の女神は相性が悪いの。技能が有効に使えなくなると、なろうの縛りで決まっているの。護身用の短刀を解体用ナイフとして持つことは認められるそうよ。」
途中でサラッと「なろうの縛り」という気になることを言われたが、そういうルールなら仕方がない。
手持ちが40,000Gしかないとリリーさんに伝える。武器の下取りと値引きで70,000Gを60,000G(うち下取り20,000G)でという話で購入した。護身用の短刀は中古品を貰った。
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名前:ヤマト
職業:村人A
所持金:0G
所持P:0P
冒険者ギルドG 2/10件、商業ギルドF 0/30件
E強化短弓 E小型鉄杭 Eハードレザーセット
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見事にスッカラカンになり、その足でおっさんの家へと向かう。
おっさんと夕食を食べながら商業ギルドのランクが上がったこと、武器を買い替えたことを話す。
「全財産を装備に使うことは冒険者としてよくあること。飯はうちで食べたらいいし、良い装備は身を守るから間違ってない。ギルドランクも上がって悪いことはないから、どんどん上げていくといいぞ。」
ガハハハ!と笑いながら背中をバンバン叩かれる。
おっさんとの食事を終え、自宅に戻り弓と投擲の練習を行う。
技能補正のお陰か、的のど真ん中に吸い込まれるように当たる。便利すぎる。
ひたすら弓を射ち、鉄杭を投げて疲れたので就寝した。
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名前:ヤマト
職業:村人A
所持金:0G
所持P:0P
冒険者ギルドG 2/10件、商業ギルドF 0/30件
E強化短弓 E小型鉄杭 Eハードレザーセット
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