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回想、、、からの~

それから暫くは森の中を歩きながら、遭遇する魔獣を相手に戦闘を繰り返した。 もう何十体目かも分からなくなった頃、休憩をとるために熊型の魔獣を銃の先端につけた剣で切り伏せる。

『だいぶ馴染んできたな』

『はい。 この辺りのやつらなら、もう遅れを取ることはないかと』

剣についた血を払いながら肩に担ぐと、適当な石に腰かけた。

『初めて会った頃は、剣を持つのがやっとみたいな感じだったが、、、今じゃ、それなりの手練に見えるな』

アゲートさんは倒木に座りながら干し果物を口に入れる。

『王都に着いてからは、騎士団の皆さんと訓練したりしましたからね、、、それに、冒険者になってからも多少なりとも経験を積んでますから』

私がえっへんと胸を張ると、苦笑しながら干し果物を投げ寄越された。

『自分で言ってたら世話ねぇな。 このあとはどうする?』

アゲートさんの問いに、迷ったが希望を伝える。

『お願いがあるんですが、、、』


結局、日が暮れる少し前まで、アゲートさんを相手に対人戦闘を訓練した。 『へっぴり腰だぞ!』とか、『こんなもんか、お嬢!』とか、『へなちょこ根性は捨てちまえ!』とか、、、散々罵倒されながらも、的確な指導をしてくれたお陰で、だいぶ見れる様になっていった。 帰り道で、アゲートさんと先程までの考察を交える。

『対魔獣戦闘に関しては、文句のつけようがないレベルだ。 武器の特性も生かしてるし、肉体の鍛練についても十分だと思う。 しかし、対人戦闘に関しては、、、だいぶマシにはなったが、まだまだ気後れしてるな?』

図星にぐうの音も出ない。 いくら自衛官として訓練していたとはいえ、人を相手に殺し合いなど経験があるはずもなく、、、日本というお国柄、殺生を良しとしない精神は、自分の根底に根付いている。

『まぁ、すぐにどうこう出来るものじゃないが、、、』

そう前置きした後に、夕陽に照らされた王都の門を背にアゲートさんが真剣な顔で続けた。

『時として非情になれなければ、いつか大事なもんを失うことになるぞ』

大切なもの、、、その言葉に私は自嘲気味に吐き出した。

『大切なものは、とうの昔に亡くしましたから、、、』

『ユーリ、、、』

私の独白に、アゲートさんが言葉を告げずにいる。

『私、は、、、昔、自分の判断で大切なものを失いました。 、、、それなのに、また大切なものが出来てしまって、側にいたらまた同じ事を繰り返すのが分かっているのに、それでも拒絶して離れていくのが怖くて、迷っているんです。 その手を離すかどうか、、、ズルいですよね』

しばし無言で大通りを歩いた後に、少し人気の無くなった辺りでアゲートさんが口を開いた。

『狡くはないんじゃないか?』

『、、、え?』

『大事なもんを無くすのは、生きていれば誰しも経験することだし、別れを知ると出会いや繋がりが怖くなる。 だが、人間ってのは、他人の温もりを求めてしまう生き物だ。 一見、相反する感情だが、それぞれがあって初めて生きていけるもんじゃないか?』

アゲートさんの言葉が心に染みていく。

『でも、私は隠し事だらけなんです! あんなに親身になってくれてる人達にも、言ってないことがたくさんあって、、、自分の都合だけで生きてるんです』

『それも普通だろ。 俺だって嘘ばっかりで、何が本当なんだか分からなくなってるくらいだ』

ニヤリと笑うアゲートさんを見ていると、私の悩みが大したことないような気すらしてくる。

『お嬢は、真面目過ぎるんだよ。 人間なんて狡く生きて当たり前なんだ。 狡くて、ワガママな生き物なんだよ。 酸いも甘いも、全ては自分次第だろ、、、お嬢が深刻に考えてる事も、やつらには大した問題じゃないかもしれない。 もう少し、お前が大切だと思ったやつらを信じてみてもいいんじゃないか?』

アゲートさんの言葉に涙が出てきた。 まだ全部を話したわけではないけれど、本当はこんな風に受け入れて欲しかったのかもしれない、、、そう思いながら、私は久々の涙を流した。

それから数日後、まさかのプロポーズを受けたのだった。 これまでを少し振り返りつつ、明日以降の行動を決める。

(まずは明日で家庭教師をおしまいにしよう。 それからアウイン国王の元へ行って出立の日取りを決めないと、、、国王への面会調整、めんどくさそうだな~)

ゴロリとベッドに寝転んだまま天井を見つめ、よし!と気合いを入れて頬を叩く。

「なにはともあれ、今日は寝よう!」

そう決めて、寝る支度を済ませてベッドに入った。


翌日、いつも通りシュヴァルツと朝の鍛練を済ませ、皆と食卓を囲む。 昨日の求婚があったから、果たしてどんな顔で会えば、、、などと考えてたけど皆は普段と変わらず、こちらが拍子抜けしてしまった。 とりあえず、家庭教師の時間もあるので、食事の後は手早く身支度を整えてから、中剣だけを帯びて出発した。

「ジェード王子、、、家庭教師ですが、今回を最後にさせて頂けませんか?」

王子の自室での授業の前に唐突に申し出た私に、相手は青い瞳を(しばた)かせた後、悟ったような笑顔になった。

「出立が決まったんですね」

「先程、ここに来る前に国王にお会いしたので、旅立つ旨を伝え、日取りとしては1週間後に決まりました」

「そうですか、、、彼らには?」

少し目線を落としながら首を振る。

「まさか、伝えないおつもりですか?!」

「、、、別れ難くなりそうで、迷ってます」

素直に打ち明けると、少し膨れた顔をしながら

「私には、離れ難いと思っていただけないですか?」

「えっ? いや、もちろん王子にもお世話になりましたし、会えなくなるのは寂しいですが、、、」

しどろもどろといった私の言い訳めいた言葉に、王子は苦笑しながら真面目にアドバイスしてくれた。

「冗談ですよ、師匠。 しかし、彼らにはしっかり話をしておかないと、そちらの方が未練となって後から辛い思いをすることになると思いますよ。 それに、彼らにも気持ちを整理する時間が必要かと」

「そう、ですね、、、分かりました。 今日の夜にでも伝えてみます」

そこまで話してから今日の授業を始めた。 授業が終わってから、中庭へやってくると、カルセドニーが笑顔で出迎えてくれた。

今日、晴れて自由の身になれるらしく嬉しそうだった。

「良かったね、カルセドニー」

「ありがとう、全てはユーリのお陰よ」

カルセドニーに抱き締められ、私にはない柔らかな双丘に顔を埋めながら、(精霊のくせに~、、、)と思っていると、体を離して、カルセドニーが顔を覗きこんできた。

「私には定住地もないし、ここを出てから戻りたいところもない。 だから、貴女の傍にいさせてくれないかしら?」

意外な申し出に、戸惑う。

「私はもうすぐこの街、この国を出るよ?」

「問題ないわ」

「むしろ、魔障を追って危険な旅になると思う。 カルセドニーは強いから大丈夫だと思うけど、命の保障もできない」

「ええ」

「むしろ、私の不注意や弱さで迷惑や損害を(こうむ)ることになるかもしれないよ?、、、それでも付いてきたいと思う?」

「無論ね」

まっすぐに私を見つめ、迷いなく頷く彼女に私が根負けした。

「分かった。 流石に一人旅は心細かったし、よろしくお願いします」

私が深々と頭を下げると、にっこり笑って頷いた後、思い出したようにつけ加えた。

「そういえば、アルマースには言った?」

「いや、、、まだだけど?」

「あいつ、ああ見えて嫉妬深いから、早く伝えとかないとめんどくさくなるわよ? 貴女の一番の精霊を自負してたからね~」

嫉妬深いとか到底結び付かない件の彼の顔を思い浮かべながら、兄妹からの忠告なので真面目に受け止めておくことにした。

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