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尾行のできない人達

まず彼女が向かったのは、道具屋。 旅の必需品から生活用品まで幅広い品揃えを誇っている。 何を買うのか気になったが、流石に同じ店内にいるとバレるとのルーファの判断に俺とシュヴァルツはしぶしぶ頷いた。 しばらくすると道具屋から片手くらいの紙包みを4つ持って出てきた。

「なんだろうな、あれは?」

「さぁ、、、見方によってはプレゼントのようにも見えますが、、、」

プレゼントという単語に、皆が暗い顔になり、俺も胸が苦しくなる。 結局、マリーから尻を叩かれたにも関わらず、ユーリの慌ただしさと自分たちの多忙に想いを告げる機会を逃していた。 そんな矢先のこの出来事に、誰もが気が気ではないのが事実だ。

「まさか、本当に言い寄ってくる奴でもいるのか、、、?」

「、、、八つ裂きにしてやる」

シュヴァルツのドス黒い発言に、ルーファも笑顔で黒い毒を吐く。

「そうですね、、、そんな輩がいたら消し去って差し上げましょう。 しかし、まだ行くところがあるみたいなので、しっかり見張りましょう」

皆、頷くと、また尾行を再開した。 次についたのは市場だった。 王都の市場だけあって、やはり活気も品揃えも他のどの街より桁違いだ。 あまりの人混みに見失いそうになるが、なんとか人の間をすり抜けて追いかけると、突然彼女の姿が路地に消えた。 慌ててその路地へ向かうと、3人のゴロツキのような男達に囲まれて怯えているユーリの姿があった。 それを見た瞬間、3人とも尾行のことなど忘れてユーリを守るため剣を抜いていた。

「カイルに、ルーファ、シュヴァルツまで、、、どうしてここに?」

悪党の常套句を述べる前に地面にのされた男達を挟んで向かい合う俺達に、ユーリは驚きながら声をかける。 まさか尾行してましたとは言えず、黙りこむ俺とシュヴァルツ。

「カイル?」

後ろ暗い俺達にあどけない表情で首を傾げるユーリに、嘘をつくことができず、諦めたように事情を説明する。

「すみません。 最近、ユーリが怪我して帰ってきたりして心配だったので、皆で様子を見させていただきました」

ルーファの説明にハッとした顔になるユーリ。

(こんなの、嫌われるに決まってるよな、、、)

いくらなんでも自分たちのした事の卑しさに、今更ながらに後悔の念に苛まれる。 彼女から罵倒されても仕方ないと腹を括り、せめてもの誠意としてユーリを真っ直ぐ見つめると、悲壮感漂う俺達の姿にユーリは穏やかに微笑み、そのあとすぐに真面目な顔で頭を下げてきた。

「ごめんなさい。 いつも声をかけてくれていたのに、3人にそこまで心配をかけていたとは気付かず、、、本当にごめんなさい」

ユーリからの意外すぎる謝罪に面食らっていると、彼女は穏やかな笑顔でこう続けた。

「今は詳しく説明出来ないけど、、、私は私が生きるために必要な事をしているだけで、危ない事や悪いことはしてないから、大丈夫だよ?」

「、、、誰か好いてる奴でもいるのか?」

直球なシュヴァルツの質問に、ユーリは目を丸くしてから少しいたずらっ子のような笑みを向けてきた。

「大好きな人達はいます」

ユーリの答えに3人とも息を呑む。 すると、クスクス笑いながらこう続けた。

「今から会いに行きますけど、、、一緒に来ますか?」

ユーリの想定外過ぎる誘いに、嫌な気持ちを圧し殺して頷いた。 そのまま彼女に導かれ、訪れたのは王都の外れ、スラム街を過ぎた辺りだった。 治安の悪さに驚いていると、ユーリは慣れた表情でスタスタ歩いていく。

「こんな所へ出入りしていたのか、、、?」

「こんな所なんて言わないでください。 ここで必死に生きている人達もいるんです」

厳しい表情で振り向くユーリに、「すまない」と謝ると、ニコッと微笑み、

「ちゃんと触れ合えば、いい人達だって分かりますよ」

そう言って近付いてきた建物は、古い礼拝堂の様だった。 建物の前にいたのは、幼い子供達。 こちらに気付くと、笑顔でかけよってきた。

「ユーリ!」

「ユーリねぇちゃん!」

「お姉ちゃん~」

駆け寄ってきた子供達に笑顔で道具屋で買った包みを渡していく。

「みんなで分けるんだよ?」

ユーリに笑顔で応えると、建物の中に消えていった。 すると、少ししてから先程の子供達も含めて12、3人出てきて、ユーリから渡された包みを開けると、ドライフルーツの入った小袋がたくさん出てきた。 それぞれ食べ始めた頃に、初老の女性が建物から出てきて笑顔でこちらまでやってきた。

「あらあら、今日はハンサムな恋人をたくさん連れてきて、、、いらっしゃい」

"恋人"という単語に俺達はドキッとするが、ユーリは苦笑しながら否定する。

「だから、、、この間も言ったけど、みんな助けてくれた恩人であって、そんな間柄じゃないから。 相手に失礼だよ」

否定されたことに少し傷付きながらも、ユーリの言葉に引っ掛かりを覚える。

「まぁ、こんな色男に囲まれて、なんとも思わないの? そんな貴女が、私は心配だわ」

「大丈夫だよ。 それなりに酸いも甘いも経験してるから」

普段は意図して話さない過去を珍しく匂わせる発言に、思わず身を乗り出してしまう。 それは他の二人も同じだったようで、それぞれそ知らぬ振りをしながら聞き耳を立てている。

「酸いも甘いもって、、、まるで殿方とお付き合いも結婚もしたような口振りねぇ」

女性の言葉に無言で頬笑むと、ユーリは子供達の方へ向き、声を掛けた。

「そろそろ始めるよ~!」

その声に皆がわっと歓声を上げながら走ってきた。 ユーリを囲うように座ると、みんなの期待の眼差しに応えて、ユーリは持っていた鞄の中から紙の束を取り出し、その絵を見せながら御伽話を始めた。 内容は青い丸々と太った猫の魔獣が不思議な術を用いて、困っている子供を助けるという、初めて聞く話だった。

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