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終息

ービシビシ、、、バリィィィンッー


突如、轟音と共に頭上から氷の柱が落ちてきて、目の前に突き刺さった。 先程まで影がいた場所には、美しい氷柱がそびえていた。 予想外の出来事に、その場にいた誰もが呆気にとられていると、空より水色の髪の青年がフワリと降り立った。

「ちっ、、、外したか。 ユーリ、死ぬ気か?」

「アルマース!」

私の声にこちらを呆れ顔で見つめ、それから振り向く青年。

「カイル、、、お前はいつになったらユーリを守れるようになるのだ?」

「っ!」

アルマースの凍てついた言葉にカイルが胸を押さえて下を向く。 何も答えられないカイルの横にもう一人の精霊がやって来た。

「アルマース! 貴方も人のこと言えないでしょ?! 何をちんたらやっていたのよ!」

自分に辛辣な言葉を投げ掛ける女性に、アルマースはムッとした顔をしながら話しかけた。

「カルセドニー。 久方ぶりに会った兄にちんたらなどと、、、このような鳥籠に囚われていたくせに、少々言葉が過ぎるのではないですか?」

「お兄ちゃん?」

さらに予想外な家族関係に混乱しつつも、目の前に現れた頼もしい精霊に助言を求める。

「アルマース、アイツを倒したいんだけど、、、」

「残念ながら、私の属性ではアイツを仕留めることは出来ません。 精々、氷漬けにするくらいしか、、、」

「そんな、、、」

そう言いながら、影を探すと、何故か氷の側を避けるように立っていた。

「そうだ! アルマース、力を貸して! あとカルセドニーも!」

私の声に皆が集まる。

「精霊術士殿、何か策が?」

「はい、レンズの作用を利用すれば、お肉も焼けちゃうんですよ? それを活用出来れば、アウイン国王の力を増幅できるかもです!」

「レンズ?」

聞き返すアウイン国王にカイルが隣で影の攻撃を防ぎながら言う。

「ユーリはあれだけいた魔獣を一網打尽にした。 その彼女の策さえあれば、やつも倒せるはずです!」

「準備が必要です。 カイルと国王で時間を稼いでください」

「、、、分かった。 指示は任せる」

そう言うと、二人は影に向かって走って行った。

「アルマース、絶対に溶けない氷って作れる? しかも、こんな形の、、、」

そう言って地面に木の枝で絵を描いていく。 中学の美術で3/10しか単位の取れなかった私の絵を見ながら、アルマースが氷を作り上げていく。 それを空中に持ち上げてもらって、カルセドニーに雷で作った光球を氷の前に持って来てもらうと、氷を挟んだ反対側の地面に光の点が生まれた。 そこから煙が立ち上るのを確認すると、カイル達に合図を出す。

「カイル! こっちへ!」

カイルと国王の連係プレーで影が気付かれぬうちに光の点に近付いていく。

「ふんっ! なかなかやるなっ、、、カイル!」

「はっ! 陛下もさすがです!」

二人の余裕そうな態度が気に入らなかったのか、影が猛烈に攻め始める。 それを余裕でかわす二人に感心していると、影がちょうど光に差し掛かった。 すると光の点が影を縫い止め、影が苦しみ始めた。

「よし、今です!」

私の合図に、周りの茂みに隠れていた衛兵達が鏡を手に現れ光球の明かりを鏡に反射させ影に当てていく。 すると、影はどんどん薄れ、ほとんど見えないくらいまでになった。 そこへ国王が近づき、光の魔術を宿らせた剣を振りかぶる。

「これで、最後だ!」

ーザシュッー

そこにあった影を切り裂くと、地面に亀裂が走り、そこに埋められていた呪いの元 ー 綺麗な装飾の施された小箱が現れた。 それにカイルが剣を突き立てると、真っ二つに割れ、

「終わった、、、」

カルセドニーの言葉に終息への安堵からため息をついた。

その後は後片付けや、事態を収拾させるためにみんなバタバタとしていて、私も詰所に帰るよう言われて大人しく帰ってきた。 私の傷だらけの姿にルーファは無言で抱き締め、シュヴァルツもそっと背中を撫でてくれた。


ゆっくりお風呂に入った後、自室へ戻るとアルマースがいた。

「久し振りだね」

そう声をかけると、少し怒ったような顔でこう告げた。

「結界があったせいで、なかなか側に行けなかったからな、、、」

カルセドニーの言っていた例の結界、、、どうやらアルマースにも有効だったようだ。

「久し振りだし、ゆっくりしてく?」

「いや、そろそろ帰るが、、、」

ゆっくり頭を振りながら話すアルマースはどこか歯切れが悪い。 不思議に思って首をかしげると、ばつの悪そうな顔になる。

「カーリーを、、、カルセドニーを助けてくれて、ありがとう」

予想外の言葉に目をパチクリさせていると、

「一応、心配はしていたんだ。 ただ、私もあんなだったし、、、情けないな」

俯きながらひとりごちるアルマースに、自然と笑みがこぼれた。

「良かったよ、アルマースの大切な家族を助けることができて。 これで少しはアルマースにもらった恩を返すことが出来たかな?」

私の言葉に呆けた顔をするアルマース。

「ふっ、、、お前にはたくさんのものを貰ったが、お前ほど無償の愛で包み込める者はそういないだろうな」

「無償の愛って、、、私はそんな出来た人間じゃないよ。 、、、全ては、贖罪、かな?」

私の言葉の意味を理解しかねてアルマースは首をかしげる。 そんなアルマースに、私は胸に(わだかま)る"もの"を吐き出したくて顔を上げるが、すぐに笑顔の下にそれらを全て隠した。

「30年も生きてると、負い目のひとつや二つ、出てくるんだよ」

言外にこれ以上踏み込ませないよう壁を作り、適当に話を流すと、アルマースもそれ以上は追及してこなかった。 アルマースの対応に心の中で感謝しつつ別れを告げ、この日は布団に入った。


(誰かに吐露してしまえば、罪の意識も軽くなるし、赦された気になって忘れてしまう、、、でも、そんなのが赦されるのは、私じゃない。 私の"これ"は死ぬまで自分だけで背負うべき業だから、、、)


日々見る悪夢を思い返しながら、あの時のことを決して忘れないよう、一コマ一コマを心に刻み込む。 それが、私に出来る唯一の贖罪であるかのように、、、

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