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人には向き不向きがあるんだよ?

久しぶりの投稿になります。

待っていてくださった方がもしいれば、お待たせしました。

これに懲りず、気長に応援してください。

午後に部屋をノックされ扉を開けると、普段の鎧姿ではなく、薄い水色のシャツに白いズボン、腰に剣を帯びた姿に思わず見惚れてしまった。

いつもより細身に見えるが程よく締まった体躯が強調される服装に色気が3割増しだ。


「そんなに熱い眼差しを向けられると、このまま拐ってどこかに閉じ込めてしまいたくなりますね」


まじまじと見つめていた私の腰を取り、そっと顔に手を添わされ上向かされると、至近距離で見るイケメンの顔にドキドキしてしまう。


「ちょっ、、、近いよ、ルーふぁっ?」


おでこにそっとキスをされ、ルーファの名前を上手く呼べないばかりか、首まで真っ赤になっているであろう己の痴態に、必死に手足をバタバタさせて逃げようとする。


「可愛い顔で見つめてくるユーリが悪いです。 さぁ、そろそろ行きますか」


そうイタズラっぽく囁きながら腕を解かれ、膨れた頬をつつかれる。


「可愛いって、、、私には無縁の言葉だし、年上に言う言葉じゃないでしょ」


「年上だろうと年下だろうと、私は真実しか言わないですよ? ユーリは可愛いです、食べてしまいたいくらいに、ね」


艶っぽい笑みを浮かべられ、やっと落ち着いた頬がまた熱を取り戻す。

何故かルーファに玩ばれ翻弄される理由が分からず不満そうにしていると、「まぁ、今はあまり気にしないでください」と言いながら部屋を出るルーファについていき馬車に乗ると、王城を出た。

行き先が城の外とは知らず、思わぬ外出に目を白黒させていると、王城に程近い薄緑の豪邸の前で止まった。

周囲の建物から見ても、かなりの豪邸であるのは確かだが、庭も建物も品良く纏められていて、住んでいる人のセンスの良さが伺えた。


「センス良いですね~、、、」


「奥方様に言って差し上げれば、喜びますよ」


「奥方? 誰の?」


私の質問に答える前に、執事らしい初老の男性が来て出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。ミルニカ子爵、ユーリ様」


ルーファが礼を返しながら中へ入るので、私も続いて中へと進んだ。

シャンデリアに、調度品の数々。

入ってすぐに大きな階段がある定番な造りだが、日本にはない光景に見惚れてしまう。

すると家人がゆっくりと階段を降りてきた。


「遅かったな、ルーファ。 ユーリもよく来た」


「! カイル!?」


そう、降りてきたのは、カイル・フォン・ルベウス、その人だった。

見慣れた顔だが、いつもと違って白いシャツに黒いズボン、腰に剣を帯びているシンプルな格好だが、普段は鎧に隠れた首筋や胸板などもはっきりと分かり、ドキッとした。


(ここにも、またイケメンが、、、)


最近は見慣れてしまっていたが、目の前の絵になる二人も、シュヴァルツも、、、出会う人達は揃ってイケメンだ。

慣れって恐ろしいな、などと考えながら目の前で談笑する二人を眺めていると、もう一人階段から降りてきて、カイルの横に並んだ。

ふわりとした栗色の髪に黒い瞳、幼そうな顔立ちだが、豊満な胸元がアンバランスさを強調して、大人の色香が漂ってくるようだ。

淡い黄色のドレスからすらりと伸びる細い白磁の手は私の浅黒い肌と違い、キメの細かい柔らかさを感じさせる。

文句のつけようがない美女に面食らっていると、鈴を転がすような可愛らしい声でその女性がルーファに話しかけた。


「いらっしゃい、ルーファ君。 待っていたわ」


「奥方様をお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした。 出発前に、愛らしい子猫と戯れていたら、時間があっという間に過ぎてしまいまして、、、」


そう言ってチラリとこちらを見るルーファに、私は少し顔を赤くする。


「あらあら、、、可愛らしいお嬢さんだわ。 彼女が件の?」


「あぁ、彼女のドレスを見繕ってほしい」


そう言ってカイルが隣の女性に返事をする。

彼女が"奥方様"ってことは、旦那様は、、、そこまで考えると胸が少しザワザワした。

そんな私を置いて話が纏まったらしく、男性陣はそれぞれ美女の手にキスを落としてから去っていき、玄関先に二人残された。

人見知りする私は何も話しかけられず固まっていると、奥方様がこちらを向き、ニコリと微笑みかけながら話しかけてきた。


「はじめまして、私はマリー。 マリー・フォン・ルベウスよ」


やはり同じ名前ということは、カイルの奥さんという事だろう。

カイルが結婚していたという事実に衝撃を受けつつ、なんとか自己紹介をする。


「、、、申し遅れました。 私はユーリと申します。 お会いできて光栄です、奥方様」


頭を垂れると、クスッと笑われ「女性はあまり深く頭を下げなくていいのよ」と教えてくれた。

マリーに連れていかれ、応接室のような部屋に入ると、部屋を埋め尽くさんばかりのドレスが用意されていた。

圧巻の光景に言葉をなくしていると、「何色が好き?」と尋ねながら、何着かドレスを取り出しては私にあてがっていく。


「すみませんが、、、ドレスには慣れておらず、合う色なども含め何も分かりません。 良ければ見立てていただいてもよろしいでしょうか?」


私の願いに目をぱちくりさせてから、花が綻んだような笑顔で承諾し、それからは私はただ立っているだけで事が進んでいった。

そして2着まで絞られたドレスを前に悩み、とりあえず両方着ることに。

1つはアシンメトリーなデザインの濃紺の襟ぐりの開いたドレスだ。

着てみて、胸があったら似合いそうだな~と言うと、可愛いから大丈夫だと謎の太鼓判を押された。

もう1着はあまりフリルやリボンが付いてない、揃えた中ではシンプルなドレスで、首まで覆うデザインだった。

シンプルながらもゆったりとしたビロードのような布地のおかげで決して地味ではなく、むしろ好感の持てる物だ。

着心地もよく、マリーも初めての謁見ならばこちらの方が良いかもと言ったので、それにすることにした。

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