改めて王都を目指します。
あれからは怒濤のように時が流れた。
戻った街では、あの爆発の中、無事に戻ってきた私達に歓声があがり、街を上げてのお祭り騒ぎになった。
だけど、私は思った以上に魔力消費が激しかったらしく、その後しばらく寝込む事となった。
アルマースには、「あれだけの事をやれば当然だ」と言われ、みんなにも絶対安静を言い渡されたため、アゲートさんが手配してくれた部屋で大人しく過ごした。
街が落ち着きを取り戻したのはそれから5日後だった。
街の復旧、傷病者の治療、みんなが元の生活に戻るため、力を合わせた結果、魔獣襲撃の前にはあった騎士団と冒険者との間の溝もすっかり埋まり、今では夜になると肩を組んで呑んでいる姿を見掛けるようになったほどだ。
そして、騎士団が王都へ出発する今朝も、冒険者や街の人達が街の門まで見送りに集まっていた。
それぞれ思い思いに別れを告げる。
「王都に来たら、また飲もう」などと約束し合っている者達もいる。
「あれだけ仲悪かったのに、今じゃ竹馬の友ですね」
「確かにな、、、」
私が感慨深く言うと、カイルが同意する。
「あ~あ、、、私ももう少し街の人達や冒険者の人達と仲良くなりたかったな~」
目の前の光景が羨ましくてそうぼやくと、後ろから抱き抱えられ、いつもより高い目線になった。
「うわぁっ、、、アゲートさん!」
「そんなに気に入ったなら、また来ればいい。 だろ?」
私の視界に入ったのは、街の人達の奥に最初の頃にこの街で出会って助けた少女が、一生懸命ジャンプしながらこちらを見ようと頑張っている姿だった。
アゲートさんの肩に座らされてる私の姿に気付いた少女は、満面の笑みで手を振り、
「騎士様、ありがとう! また、来てね~!」
それが嬉しくて、周りの喧騒に掻き消されないよう私も叫んだ。
「絶対に来るから! それまで、元気でね!」
「さぁ、出立だ!」
カイルの号令で騎士達が街を出る。
振り返れば、街の人達は見えなくなるまで手を振り続けてくれていた。
私は荷馬車の荷台に乗り、別れを寂しく思いながらも、私はまだ見ぬ王都に胸を馳せる。
王都までは1日半だそうで、そこまで遠くないなと思ってしまうのは、この世界に慣れてしまったせいだろうか?
今までズレていた感覚が少しずつ合っていくことに、最初は愚痴ってばかりの自分の順応力に感嘆するばかりだ。
(こんなんで戻ったら、日本で生活できるのかな? でも、有事の際の度胸はついたかも、、、)
元の世界の事を思い出し、少し切なくなる。
戻りたい、とはそこまで思わない。
残してきた家族もいないし、自分のアパートの処分に大家さんが迷惑を被るとは思うが、大したことはないだろう。
どちらかというと、職場の方だ、、、仮にも公務員、自衛官が失踪など、、、みんなが総出で探す羽目になっているであろう事態に、少し青ざめる。
(ヤバい、班長とか怒り狂ってるだろうな、、、これは真剣に帰る方法を探した方が良いかも)
私が一人悶えていると、馬車が止まった。
「休憩だ~、休憩~!」
どうやら本日の行程の半分ほど来たらしく、昼休憩のようだ。
私は馬車から飛び下り、大きく深呼吸をしながら伸びをしながら気持ちを切り替える。
(今はまだ考えても仕方ない! 今後については、とにかく王都に着いてから調べて考えよう!)
それからは特に問題もなく、そろそろ王都が見えてくる辺りまでやって来た。 私は馬車の中でじっとしているのも飽きてしまい、御者台に座らせてもらって外の景色を眺めていた。 先程から道が広く、また石畳で舗装され、馬も人も歩くのが楽になったのか、ペースが上がっていた。
「もう見えてきますか?」
何度目かの同じ質問にも、御者台に一緒に座る騎士さんは嫌な顔せずに答えてくれる。
「もうすぐですよ。 ほら、あそこの丘を越えたら、王都が見渡せますよ」
「ほんとですか?! うわぁ、早く見たい~!」
御者台の上ではしゃぐ私に、周りに並ぶ馬上から他の騎士達も声をかけてくる。
「王都にはこの道の倍くらいある大通りが城まで続いてて、お店も王都で買えないものはないと言われるくらい、活気に満ち溢れているんですよ」
みんなが教えてくれる情報に目を輝かせていると、あっという間に丘の上までやってきた。私の目の前には、視界いっぱいの白い壁と、美しい街並み、その奥に白亜の王城が見えた。 まだ見ぬ出会いに胸を躍らせていると、ルーファが馬車に馬を寄せてきた。
「そろそろ王都に着きます。 今の貴女の格好から、騎士の一人として民達は見るでしょうから、街中では落ち着きある言動を心がけてください。 一度、皆と一緒に騎士団の宿舎まで行き、その後については追って連絡が来ると思います」
「分かりました。 ありがとうございます」
ルーファの言葉に浮かれていた気持ちを引き締め直して、王都を見る。
(ここで、また何か得るものがあるハズ、、、楽しみだな)




