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私の中の誰かと、、、

暗い場所を歩く。

上も下も分からない、、、ただただ真っ暗で何もない所だった。

立ち止まると足下から崩れてしまいそうで、怖くてひたすら歩き続けた。



ー誰か、、、いないの?



声を出してるつもりでも、音にならない。

手を前に出して、手探りで歩いていると、ふいに指先に氷のように冷たいものが当たった。

びっくりして一度は手を引っ込めるが、再びゆっくり伸ばすと、それは変わらずにそこにあった。



ー何?これ、、、



硬く、石のように無機質な感触。

不思議に思いペタペタと触っていると、突然目の前の何かが光りを放ったと思ったら、その光と共にありとあらゆる負の感情が溢れ出し、私を呑み込んだ。

胸を引き裂かれそうになる程の様々な感情。

あまりの苦しさに息をするのも困難になる。

私が押し寄せる感情と息苦しさにもがいていると、突然、頭の中に声が響いてきた。



【お前のせいで、みなが苦しむ、、、】


ーえっ?


【お前が生きている限り、お前を取り巻く全ての生命が苦しみ続けるだろう。 それでも、お前は生きることを望むか?】


ー苦しむ? どうして、、、


【それがお前の運命だからだ。 全ての生命がお前の中の我に惹かれ、我を欲する。 時として、お前個人への恋慕の情だと勘違いする者もいるだろう。 しかし、魂ある限りそれは我を求め、欲する本能に逆らえず、足掻き続けるだろう】


ー運命って一体なんなの? "我"って、貴方は誰なの?


【運命の歯車は既に動き始めている。 現に、お前を求める何者かの仕業で、お前の周囲の人間達は死闘に身を置いている、、、】


その言葉と共に、私は突然空に浮かんでいた。

眼下に広がるは見覚えのある街の外壁と、そこへ襲いかかろうとしているおびただしい数の魔獣の群れ。

それに立ち向かおうと駆け出す冒険者と騎士団の人達、、、その先頭には、私がよく見知った顔の、大切な家族(シュヴァルツ)の姿が。

私は咄嗟に彼の名前を叫ぶも、向こうには聞こえてないどころか、私の姿も見えてない様子。

傷付きながらも、懸命に魔獣に闘いを挑む彼らをただ見ていることしか出来なかった。



【彼らもまた、お前の運命に巻き込まれ、苦しむ者の一人だ】


ーそんな、、、私のせい? 私がここにいたから? そういえば、さっき、私を求める何者かの仕業でって言ってたけど、この魔獣達の襲撃には犯人がいて、それは全て私に関わっているってこと?!


【無論、お前がこの街にいなければ、この街の者達が魔獣の群れに襲われることはなかった。 命の危険に晒されることもなかった】


もう、私は何も言葉を発することができなかった。

全ては私のせい、、、あまりに突飛だが、それでもこの世界に来てからずっと突飛なことに曝され続けていたおかげで、何故かすんなり受け止める事が出来てしまった。

確かにカイルもアゲートさんも言っていたではないか。

『こんな場所に、こんなに多くの魔獣が現れるなんて、異常だ』と、『通常、ありえない』と。



ーそうか、全ては私のせいだったのか。 それなのに、私は、、、


【お前は生きることを諦めないのか?】


ー諦める諦めないの話じゃないよ。 私のせいでこんなことになっているなら、私は自分でケリを着けないといけない。 死にたいと思うのも、生き続けたいと願うのも、それが終わってから、全てに決着を着けてからがスジでしょ。


【、、、、、】


ー貴方が誰なのか、全く分からないけど、私をみんなのところに戻して。 その力があるんでしょう? 私はここに留まる訳にはいかない。 あそこで闘っているみんなを助けに行かないと!


【お前ごときに、助けるだけの力があると?】


ー分からない。 けど、少なくともここにいるよりは役に立つし、こんな私にも力を貸してくれるって言ってくれた精霊達(ひとたち)がいるから、きっと何か出来ることがあるはず!



私の力強い意志に、名無しの声は暫くの沈黙の後、声を出した。



【そこまで言うのならば、我は高みの見物といこう。 お前という存在が、果たして吉と出るか、凶と出るか、、、我に、世界に示してみせよ!】


目映い光に包まれたのと同時に、私は目を覚ました。

勢いよく、ガバッと起き上がった私の視界に真っ先に飛び込んできたのは、窓から外を眺める水色の髪の青年だった。


「アルマース、、、」


私の呼び掛けにゆっくりと振り向いたその顔は、いつにもまして厳しいものであった。


「ユーリ、、、気分は?」


「だ、いじょぶ」


「他に言うことは?」


アルマースの詰問に、必死に頭を巡らせながら答える。


「、、、ごめんなさい?」


「なぜ疑問なのだ?」


「私が眠っている間、子守りを押し付けられたから、、、怒ってる?」


私の精一杯の回答に、アルマースは嘆息した。


「ここまで、馬鹿だとは思わなかった。 お前が寝ている間、守ることなど造作もないし、それを苦痛に思う事もない。 私が怒っているのは、また無茶をしたにも関わらず、その時に私を呼ばなかったからだ」


私を心配しての怒りだと主張する精霊に、少し笑いながら謝ると、「なぜ笑っている?」と渋い顔をされる。


「心配をかけたことは申し訳ないと思うんだけど、それと同時にアルマースがそこまで心配してくれたことが嬉しくて、、、」


そう答えれば、呆れながら許してくれた。 本当に優しい精霊だ、、、


「もうすでに始まっているぞ」


「知ってる」


間髪入れずに答える私に驚いた顔をしたアルマース。

その疑問に、寝ていたときの事をかい摘まんで説明すると、


「ふぅむ、、、魔障に関係する何かの意識と会話をしたと考えるのが妥当か? そうなると、魔障に眠る意識と考えられるのは、、、魔王?」


自分が話した相手が魔王かもしれないとの発言に、少しビビった。


「それから、この襲撃が仕組まれたものであるというのは、ユーリの力などを鑑みると、十分考えられるな。 お前はあまりにも多くの者が渇望しているものを持ち合わせている。 その妬みや欲望から、このようなことをする者も少なくないだろう、、、」


アルマースの考察に、気持ちが重たくなる。

自分のせいで、みんなが危険な目に合っている、、、その事実への申し訳なさと、やるせなさに胸が苦しくなった。


「魔獣を操れるのは、相当の力を持っている者でないと無理だ。 だが、私の森での一件もあるから、あまり軽視しない方がいいだろうな」


話を聞いて、顔色が悪くなってきた私を見かねて、


「まぁ、今考えられるのは、そこまでだな。 そろそろ王都からの増援が到着する頃だ。 戦況を見に行こう」


アルマースに促され、私はアゲートさんの執務室を出た。

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