夕陽を見ながら
明けましておめでとうございます。
いたらない作品ではありますが、本年もよろしくお願いいたします。
私は、ベッドの上で上体を起こしながら、窓の外に沈む夕日を眺めた。
部屋は夕日の差すところ以外、薄暮が迫っていた。
今は部屋に1人。
先程まで優しい保護者達があれこれ世話を焼いてくれていたが、今は王都から使者が来たと呼ばれ、渋々出ていった。
部屋の外には護衛の騎士さんが二人体制でいてくれてるらしいので、何かあればすぐに声をかけるように言われている。
そんなこんなでひと息つくと、私はこれまでのことを思い出していた。
(この身に宿る"何か"が私の人生を大きく左右するとは思っていたが、、、あの時、フードの男達に痛めつけられ意識を手放すと、別の誰かが私を動かした。 恐らく、それはこの胸の石と関係しているだろう)
胸に埋め込まれた石を服の上から触る。
3人には知られてしまったらしいが、異彩を放つそれは、魔障に関係した何かだ。
私の中で着実に成長しつつあるそれを感じて身震いする。
感じた恐怖を振り払うように頭を振り、先程まで傍にいてくれた彼らを思い出して気持ちを持ち上げる。
(カイルさん、ルーファさん、シュヴァルツ、、、皆が傍にいてくれると言った)
それが永遠に続かないのは、夢見る少女でもウブな乙女でもないので十分分かっている。
だけど、私が『望む限り』共に生きてくれると誓った彼らを、今は信じてみようと思う。
失う事を恐れて手を離すより大変だけど、、、1人でいるより四人でいた方が、きっと素敵な明日が待っているだろう。
すっかり暗闇に占領された部屋から瞬く星を眺めながら、私のために叱り、親身になって寄り添ってくれる彼らを思う。
(会いたいな、、、)
翌日、朝食を運び込みながら、カイルさん達が会いにきてくれた。
一晩ゆっくりして、だいぶ良くなった体をベッドから起こし出迎えると、「無理するな」と気遣ってくれた。
そんなみんなの優しさが嬉しくて、素直に気持ちを口に出す。
「昨日の夜、1人でいて少し寂しかったけど、、、でも、朝からみんなの顔を見ることが出来てスゴく嬉しくて、私、今とても幸せかも」
ニヤけるのを我慢できない。
そんな私を見て、3人は盛大にため息をつくと、口々に文句を言われた。
「朝から、、、ヤバイな、それ」
「貴女という人は、無自覚な分、達が悪いですよ」
「連れ去っていいか?」
よく分からない文句もあったが、少し膨れながら反論する。
「だって、、、昨日、みんなが傍にいてくれるって言ったから、今まであまり縁のなかった家族が、、、兄弟ができたみたいで嬉しかったのに、一晩1人で寝るのはやっぱり少し寂しいよ。 寂しかった分、会えて嬉しかったからそう言ったのに、、、」
「家族、、、?」
カイルの言葉に、シュヴァルツも呟く。
「兄弟?」
放心状態で呟く二人に小さく首を傾げる。
「? 年齢的にはそうだよね?」
「"要は"、相変わらず、通じてないってことですね?」
ルーファさんのにこやかな笑顔に、なんのことだかさっぱり分からないが、とりあえず曖昧に頷く。
そんな私を見て、3人は本日2度目にして、最大のため息をついた。
××××××××××
「まさか、あそこまで鈍いとは、、、」
シュヴァルツの苦虫を噛み潰したような声に、俺とルーファも同意を示す。
朝食が終わり、また後で来ると言い残し部屋を出てきた俺達は、宿屋の食堂の隅で丸いテーブルを囲んだ。
「折りを見てゆっくり誰か伴侶を選んでもらおうと思ってましたが、そうも言ってられなさそうですね」
「いくら常識に欠落があるとはいえ、最大級の求婚をあそこまで流せるとは、、、」
「形振り構わず攻めるのがベスト、といった所でしょうか」
お互いの顔を見合いながら、頷き合う。
「正々堂々、恨みっこなしで行こう」
「そうですね」
「負けない」
大きな壁を目の前に、決意を新たにしたカイル達であった。
結局、ずれにずれた王都への帰還準備を午前中のうちに済ませ、ユーリの元へ急ぐ。
俺の愛しい"家族"は寂しがりやだと今朝方、公表し俺の心を大いに揺さぶった。
そのあとに切ない事実も突きつけてきたが、それでめげていてはルーファ達に先を越されてしまう。
宿屋の2階、通い慣れた部屋の前で一呼吸置き、ノックをすると、ずっと聞いていたくなる凛とした声で返事があった。
ゆっくり扉を開けると、午前中ずっと会いたかった人物がベッドラックに背を預けながら座っていた。
「カイルさん、お疲れ様です」
優しく労をねぎらってくれる。
こんな風に仕事帰りに玄関で迎えられたら、どれだけ至福だろうかと考えると、自然と口許が緩む。
そんな妄想を端にやりながら笑顔で近寄り、ベッドに腰掛け短い黒髪を優しくすくと、少しくすぐったそうにしながらも、されるがままになっていた。
そんな姿すら愛しくて、今すぐ抱きしめて押し倒したいが、それを理性で押し留めながら、話し掛けた。
「もうだいぶいいのか?」
「はい。 でも、ベッドから出ちゃダメだってルーファが、、、心配性ですよね」
苦笑する彼女に、俺は別の事が気になり話半分で返事をしながら彼女に問う。
「ルーファさん、とは言わないのか?」
俺の疑問に、「あぁ、、、」と少し困った顔をしながら話してくれた。
「昼前に一度、ルーファが訪ねてきてくれた時に、、、
『家族って言う割りには、さん付けで呼ぶなんて壁を感じますね』
『えぇっ? でも、ルーファさんは偉い人なのに、庶民が呼び捨てなんて、、、』
『庶民? 私達は"家族"なんですよね? それなのに、身分が、、、とか言うんですか? 言わないですよね??』
『あぅ、、、はい』
『じゃあ、ユーリも私を呼び捨てにしていただいて構いませんよ?』
『、、、ルーファ』
『良くできました』
、、、という事がありまして。自分で言っておいてアレですけど、改めて"家族"って言われると、くすぐったいですね」
照れたように笑う姿を見つめながら、ルーファの行動力に舌を巻く。
(一番早く来たつもりだったが、、、)
気を取り直して、ユーリに声をかける。
「そんなことが、、、では、俺も倣わないとだな」
「え?」
キョトンとする彼女に柔らかく微笑みかけながら、
「ルーファやシュヴァルツが名前で呼ばれているなら、俺も名前で呼んでくれ。 その方が、より家族に近付くんだろう?」
「それは、、、」
困った顔をしながら見つめてくる彼女に、気付かない振りをしてにこやかな笑顔を向けていると、根負けしたユーリが諦めたようにため息をついた。
「カイル、、、」
目尻を赤く染めながら俺の名前を呼ぶ姿は、可愛すぎるくらい可愛かった。




