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討伐作戦

拙い文章ですが、お付き合いいただけたら幸いです。

「報告します! 1キロ先、霊守の森手前辺りに標的『ケツァル』を確認。 数は10です!」


白を基調とした服装の上に鎧と腰に剣を下げた姿の若者が、指揮官と思われる30代半ばくらいの男性に声をかけた。

若者と同じデザインだが、赤を基調とした服装に、年季の入った鎧を纏い、腰に下げた剣もシンプルながら匠の業を感じさせるものであった。

赤みがかった茶色の髪に黒い瞳、190くらいありそうな長身に、鎧の上からでも引き締まった体がよく分かり、落ち着きと大人の色気を纏った端正な顔立ちが、この場に女性がいたならば、思わず見とれてため息が出そうなほど完璧なバランスを作り上げていた。

男の名はカイル・フォン・ルベウス、32歳。

コランダム王国近衛騎士団の若き団長である。


「分かった。 皆の者、今回の討伐遠征の目的はこの辺りに新たに住み着いて、村や街道を行く旅人に被害を出しているケツァルの殲滅。 これ以上の犠牲を出さない為にも、王国騎士団の名に懸けて一匹残らず刈り取るぞ!」


その場に整列した先程の伝令と同じ格好をした者達の顔が引き締まる。


「隊列は先ほどの通り、副団長率いる第1小隊は右から」


副団長と呼ばれた男は、命令した男より細身で、腰までありそうな美しいブロンドに翠の瞳を悪戯っぽく煌めかせ、レイピアのような細身の剣も持ち主を写したように洗練としていた。

名前はルーファ・ミルニカ。

年齢は27歳、こちらも若くしての大出世である。


「了解、団長。 半数はこちらに任せてもらっていいよ」


団長と呼ばれた先程の男は、呆れたような顔で返しつつ、他の部隊に指示を出す。


「シュヴァルツ率いる第2小隊は左、第3小隊は私に続き正面から叩く」


シュヴァルツと呼ばれた男は、副団長とは対照的に銀髪に紫の瞳、団長ほど身長はないが鍛え抜かれた体躯はまるで豹のようにしなやかさをまとっていた。

自分の身長と同じくらいの大剣を背中に背負っているが、動きは身軽そうだ。

名前はシュヴァルツ・イェーガー、29歳。

この騎士団のNo.3である。

その彼は、団長の指示に静かな声で応えた。


「こちらも半数は任せてもらう」


「それでは、第3小隊の出番がないじゃないか」


「団長はのんびり、どっしり構えてれば良いってことだよ」


ルーファの発言にシュヴァルツも頷く。

二人に獲物を取られた感のあるカイルは、ちょっと不満そうな顔をしつつ、いつもの二人の態度に諦めたように、


「くれぐれも慢心するなよ。 では、全員かかれ!」


「「「はっ」」」


カイルの号令に応え、それぞれ任務を全うすべく出発した。




しばらく進み、目視できる位置にケツァルを確認すると、案の定、1小隊も2小隊もすでに交戦を始めていた。


「相変わらず、速いな。 さぁ、こちらも始めるぞ!」


カイルのかけ声を合図に第3小隊もケツァル目掛けて突き進んだ。




前と後ろから攻撃を仕掛けられ、さすがの魔獣も狼狽えたのか、すでにルーファとシュヴァルツに2体ずつ仕留められ、他の騎士団員達と交戦中の2体もそろそろ力尽きそうだ。

そんな時に横からさらに増えた増援に、カイルにすれ違い様に2体、第3小隊の団員達に1体仕留められ、森を背に残りの3体はそれぞれ狂ったように哭きながら、森の手前を背にそれぞれカイル、ルーファ、シュヴァルツの元へ走り出した。


「「一際大きいのは私が(俺が)」」


カイルの横へと移動していた二人が同時に言い、睨み合っている。


「仲が良いのは良いが、あまりのんびりしていると他に手柄が取られるぞ」


カイルがそう声をかけながら剣を閃かせ、2体を仕留める。

二人は睨み合いながらも互いに連携を取っているかのように華麗な剣戟を繰り広げ、最後の一体を沈めた。


「今のは私だったね」


「いや、最後の俺の一閃が効いた」


なんだかんだと言い合っている二人を置き、団員達に魔獣の死体を集めるよう指示を飛ばす。

そして、しばらく待っても終わりそうにない二人の言い合いに終了の声をかけようとした、その時、、、突如として目の前の森から雷鳴のよう地響きと閃光が走り、大地が揺れた。

あまりの揺れに立っていられず、団員達は膝をついたりし、カイルら3人も剣を支えに持ちこたえたものの、何が起こったのか、その場にいる誰にも分からなかった。

少しして揺れが落ち着き、カイルは辺りを見回しながら被害状況を確認するよう、ルーファに伝えた。


「なんだったんだ?」


「分からないが、何か嫌な感じがする、、、」


俺の疑問に、シュヴァルツが周囲に目配せしながら返事をする。


「確かに、、、森がざわめいてる?」


「何もなかった、訳ではなさそうだな」


シュヴァルツの声に頷きで返しながら、今優先すべき事を考え、集まってきた団員の無事を確認する。

そこへルーファが戻ってきた。


「とりあえず人員、装備に被害は無さそうだよ。ただ、、、」


「どうした?」


「魔獣の死体が1体が消えた。しかも、私とシュヴァルツが最後に仕留めたやつが」


「なっ、、!」


シュヴァルツも驚きを隠せないでいた。

普段から、敵にも味方にも容赦ない彼が、まさか手を抜くはずなどなく、それはルーファも同じだ。

二人は己のミスであるかもしれない事態に、悔しさを滲ませていた。


「お前達が手を抜くことも、仕留め損ねることもないだろう。 しかし、討伐対象が消えたのも事実、、、足取りを追え。 そして、汚名返上してこい」


カイルが言うと、二人は力強く頷き、自分達の部下を連れて、それぞれ散っていった。




少し森から離れた見通しの良い位置に移動。

野営の準備が終わる頃には全員戻ってきたので、団長の天幕前に集まった。


「どうだった?」


カイルの問いかけに、二人とも首を横に降った。


「一番近くの村まで行ってみたが、見た奴はいなかった」


「私も、街道沿いを辿ってみたけど、商人や冒険者達も特に変わりはなかったよ」


「そうか、、、残るは、この森だけだな」


カイルの声と目線に、二人も目の前に広がる森を見やる。

『霊守の森』、、、我がコランダム王国の西に位置し、その広さは国の実に4分の1を占める。

王都からは片道20日ほどかかるが、この森でしか採れない特別な薬草などを求め、依頼を受けた冒険者などがしばしば足を運ぶ。

ただし、森の半分は立ち入り禁止となっており、森に入ってしばらく進むと結界があり通れないようになっている。

その奥には聖霊が住まうとされているが、誰も進めず、誰も見たことがないため、おとぎ話として子供達に語り継がれる程度になっていた。


「もし、逃げ込んだなら見つけるのに時間がかかりそうだね」


「だが、必ず見つけて、今度こそ息の根を止めてやる、、、!」


獲物を狩る目を森に向けている二人に、


「とりあえず夜は危険だ。 明朝、日の出と共に出発するぞ」


「「了解」」


ヤル気満々の二人と共に森を見上げた。

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