【クールな勇者とやさしい魔王7】お別れの始め方
※単独でも読める物を目標に書いていますが、シリーズを通して読んで頂けたら嬉しいです。
シリーズURL⇒http://ncode.syosetu.com/s6551d/
ノリと勢いだけで、駄文を生産し続けている本シリーズ。
今回のお話は、後味の悪い物となっているかと思います。
ですが、この展開は当初から予定していた物となりますので、予めご了承ください。
「聞いてくれんか!」
「こんな夜遅くに、慌ててどうしたんだい?
今日はちょっと、疲れてるから早く休みたいんだけど」
「スマンが、それはもう少し後にしてくれんか?
早急に対処せねばならん事態が起きたんじゃ!」
「穏やかじゃないね・・・
いいよ。話してみて」
「オヌシの進言通り、周辺諸国と外交したじゃろ?」
「そうだね。お陰で同盟国が増えたって、この前喜んでたじゃないか」
「うむ。そこまでは、オヌシの想定通りじゃった。
じゃが、ヤツら欲に目が眩んだのか、ワシらを裏切りよった!
もっと寄越せ、さもなくば、同盟を解消するぞ。
などと、脅してきたんじゃ!」
「なんだって!?・・・ゴメン。
想定していなかったボクの失態だ。
人族の欲深さを知っていたはずなのに・・・」
「その事はよい。
オヌシがいなければ、国が持ち直す事もなかったんじゃ。
ワシを始め、誰もオヌシを恨んだりなどしておらん。
それに、事がそれだけであれば、他にもやりようはあった」
「という事は、他にも何か要求されているのかい?」
「い、いや、スマン。言葉の綾じゃ。
とにかく、ヤツらの要求を呑まざるを得ぬのか?
というのを、オヌシに相談したかったんじゃ」
「・・・難しい所だね。
要求を呑むと、また次をって際限がなくなる。
かといって、断った時に報復されるのも良くない」
「うむぅ・・・。そうじゃ!
採掘量が落ちたとか、鉱脈が枯れた事にするのはどうじゃ?」
「あまり良い手とは言えないかな。
どんな国だって諜報機関を持ってるんだ。
一時は凌げても、事が露見したら今より事態が悪くなる」
「やはりか・・・
では、逆に輸出規制をかけるのはどうじゃ?」
「それも悪手だね。
一国に対して共同で行うか、よっぽどの国力がないと、逆に潰される。
それに現状だと、相手側が規制をかけてくる可能性が高い。
そうなると、食料問題が再発しかねないよね?」
「たしかにの・・・
他に、他になにか打つ手はないのか?」
「即効性はないけど、友好国との関係強化と諜報活動かな。
あまり好きじゃないけど、弱みを握って、逆らえない様にすればいい。
後は適当に甘い汁を与えておけば、従順になるんじゃないかな?」
「むぅ・・・
その手段はワシも好まんが、致し方ないのか・・・?」
「すぐに思いつくのは、これぐらいしか・・・
あまり役に立てなくてゴメン」
「何を言う!オヌシが謝る様な事ではない!
ひとまずの方針はできた。
あとは、それをどうするかじゃな!
助かった。夜遅くにスマンかったの」
「いいよ。それより、事が事だ。
対応は慎重にするんだよ?
何があっても、キミ達から仕掛けちゃダメだからね?」
「わかっておるわ!オヌシは何も心配せんでよい。
あとは、ワシらの仕事じゃからな!
じゃから、オヌシはそこで惰眠を貪っておるが良い!」
「そんな乱暴に扱うと、扉が壊れるよ!
・・・・・・・・ふぅ。
キミは、本当に隠し事に向かないね。
大方、勇者を差し出せ。とか言われたんだろう?
やさしいキミの事だ。ボクに危害が及ばない様にしてくれたんだろうね。
けど、そんなやさしいキミだから、無茶をしたくなるんじゃないか。
さて、ちょっと忙しくなりそうかな?」
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「ここか!・・・なんじゃ?ここにもおらんのか?
自室にもおらんとなると、一体どこに行ったというのじゃ・・・
ヤツらが前言撤回した事、教えてやろうと思ったのにのぉ。
・・・・・・ん?なんじゃ?手紙か?」
『やさしい魔王さまへ
たぶん、キミが一番最初に読んでくれていると思う。
そう期待して、この手紙を書く事にした。
まずは、何も言わないで、急にいなくなったりしてゴメン。
誤解しないでほしいんだけど、キミ達に愛想を尽かした訳じゃない。
ただ、ボクがボクの責任を果たす為に、そうせざるを得なかったんだ。
だから、キミは何も気にする必要はない』
「たわけ!気にするなと言われても、無理に決まっておるじゃろ!
ええぃ!何か手がかりは残しておらんのか!?」
『なんて書いたとしても、キミの事だ。
ボクの事を探してくれるんだろうね。
けど、それはダメだよ。
だって、人族の国に魔王が来たら大混乱になるだろ?
せっかく手に入れた安息なんだ。
ボクなんかのために、乱しちゃいけない』
「なんじゃと!?まさか、知っておったのか・・・?」
『ほら、いつも言ってたよね?
民の為なら、何でも我慢できるって。
だから、ボクを探すなんて事はしないでほしい。
ボクの命なんかで魔族が助かるなら、安い物じゃないか。
そう言っても、キミは聞き入れてくれないだろう。
だから、何も言わないで出て行く事にしたんだ。
多数を救うために、少数を切り捨てる。
そんな非情な決断、キミにはできないよね?
そうそう、仮にボクが戻らなかったとしても、気に病む必要はないよ。
だって、ボクに残された時間は、もう長くないんだから』
「なんじゃと!?どういう事じゃ!!」
『おかしいと思わなかった?
ただの孤児だったボクが、魔王の前に現われるだなんてさ。
そんな都合のいい話、御伽噺の中でしかありえない。
前に言ったよね?盗みをして、捕まったって。
その時勇者の資質が、なんて言ったけど、アレ、嘘なんだ。
だってそうだろう?
資質の有無がわかるなら、人族全員にやってないとおかしい。
けど実際は、そんな事をやってない。
魔族との戦争で、人的資源が減って来た彼らは、禁忌に手を出したんだ』
「禁忌、じゃと・・・?」
『まぁ、簡単に言ってしまえば、人体実験だね。
薬を使われたし、特殊な魔術も使われた。他にもイロイロと、ね。
その実験でさえ手探りで、望んだ結果が得られる確証はなかった。
だから、ボクは色々な死を目にする事になったんだ。
発狂し、自らの命を絶つ者。薬が合わず、体内から溶けていく者。
魔術に耐えられず、身体の内側から破裂した者。
そんな異常な光景を、彼らはなんとも思わず、淡々と記録するだけ。
そんな中で、なんの因果かはわからないけど、ボクは生き残った。
けど、それで終わりじゃなかったんだ。
今度は生き残り同士で、殺し合いをさせて選別をしだす。
闘技場に集められて、さぁ殺しあえ。
そんな感じで、ボク達は殺し合いを強制された』
「じゃからか・・・。じゃから、オヌシは最初・・・」
『まぁ、それは、もうどうでもいいか。
自然の摂理に反した代償、とでも言えばいいのかな?
そんな訳で、ボクの体は結構ガタがきてるんだ。
キミにバレない様にするのは、割と大変だったんだよ?
まぁ、事ある毎に頼ってくるキミは、子犬みたいで可愛かったけどさ。
あ、そうそう、余談だけど、色々仕込まれたのはホントだよ?
王侯貴族を暗殺する際、近付きやすいようにって事だったんだけどさ。
どうせなら、純粋に何かを学びたかったかな?』
「ふん。そんな事、ワシがいくらだって叶えてやるわ」
『まぁ、そんな事はどうでもいいか。
それで、ボクを寄越せって言って来た事については、想像がつく。
どうせ、実験の成功例を野放しにしておくのが、惜しくなったんだろう。
だから、ちょっと行ってくるね。
大丈夫。ボクも死にに行くつもりなんてないんだから。
きっと、キミの元へ帰ってくるよ。
その時には、笑顔で迎えてくれると嬉しいな。
魔王の友人である勇者より』
「オヌシは・・・。オヌシは、いつもそうじゃ・・・
苦しみは自分だけで抱え込み、笑顔で覆い隠してしまう。
なにが、『やさしい魔王さま』じゃ・・・
オヌシの方が、よっぽどやさしいではないか・・・
わかっておったはずじゃ。事態に気づけば、オヌシがどう動くか。
じゃと言うのに、ワシは・・・・・・
そうか・・・。オヌシには、昨夜からわかっておったのじゃな。
じゃから、あの様な事を言っておったのか。
ワシは・・・ワシは一体、どうすればよいのじゃ・・・?
教えてくれ・・・」
ここまでお読み頂き、まことにありがとうございます。
前書きにも記載させて頂いた通り、本作は当初から予定していた流れとなっております。
私の我が儘にお付き合い頂きました事、改めて御礼申し上げます。
さて、次がシリーズ完結のお話となる予定です。
どう物語を締めるのか?
書いている私自身、候補を絞りきれていない状態ですので、今しばらくお待ち頂ければと思います。