超短編 神を嘲笑う者
この手応えは、確実に殺したな。
真昼の交差点で、取るに足らない人間を轢き殺したのを確信すると、俺はテレポート能力で現場を脱した。あとには、もぬけの殻の盗難トラックと轢死体、そして野次馬どもが残るのみという寸法だ。
今頃、神でも逆らえない『運命を外れた死の掟』に従い、神はあの人間の魂を異世界に送り、チート能力を与えて転生させているところか。この手口でもう一万人は殺した。いい加減、神もチートのネタが尽きてきたことだろう。クズのようなニートや底辺労働者相手に平身低頭する神の無様さを考えると、愉快でたまらない。
しばしぶらつき、駐車場で新たなトラックを見繕うと、テレポートで中に乗り込み、超能力でエンジンをかける。
俺は運命を狂わせる存在、『神を嘲笑う者』――。俺の行いとその結果は、例え神でも予測できない。