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31火星の人

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――――かなりきつかったが生産的な一日だった。

  きょうは考えるのがかったるかったので、二五〇リットルの水をどこで手に入れるか頭を絞るかわりに、肉体労働にいそしんだ。たとえいまはカラカラの役立たずでも、とにかくもう一山、土をハブに入れなくてはならないのだ。


 汗牛充棟。山積みの本を前に、気分はアンディ・ウィアー著「火星の人」の主人公、マーク・ワトニーだった。

 違うのは生産的な一日だったかと聞かれると首をひねる点。ベッドの枕元といい机の上といい、部屋に所狭しと積み上げた本の片付けおよび整理である。自分の怠惰が生んだ現状の後片付けだ、どこに生産性がある。

 火星でじゃがいもを作る場面で、マーク・ワトニーは土をハブに運び入れている。この点も真逆であった。自分の場合は、とりあえず本の山を部屋の外に運び出すところから始めている。


「これもう本棚買った方がいいんじゃね」


 とはこの部屋の現状、いやもはや惨状を目にしたムラマサの言である。今日は日曜日、満を持して本棚を買ってきた。今は要するに、本棚を組み立てるスペースを作っていると、そういうことである。

 本と本棚しかないような部屋だった。物の多さにかけては他人の比ではないが、殺風景さにかけても同じことが言えそうな部屋。

 七畳半、南向き。階段の天井が張り出している関係で、七畳半のうち半畳分は胸の高さくらいの棚代わり。

 買ってきた本棚は高さ一八〇センチの大型のもの。詰め込むだけなら床にまで溢れている本類すべてを収納することができるだろう。

 説明書など読まずとも、鼻歌交じりに本棚を組み上げる。木目調の本棚。部屋には同じものがいくつも並んでいる。それを壁際に空いたスペースに設置し、手当たり次第に本を詰め込んでいった。

 こういうとき、自分が今何の本を持っているかは極力確認しないようにしている。巻数がばらばらになってしまわないよう、最低限のチェックはしているが、できるだけ中身のことについては確認しないように――部屋の片づけをするとき、漫画や小説、アルバムなんかを懐かしく思って読み始め、片付けが進まないのはよくある失敗だ。自分はそのような轍は踏まない。

 同じシリーズの本はまとめておいてあるので、巻数だけを薄目でチェックしながら本棚に本を詰めてゆく。

 そのとき。


「ん……?」


 目を擦る。表紙を再確認すると、「DEATH NOTE」の四巻である。問題なく見えているのを確認し、傍らに置いた目薬を注して悶えることしばし。再び本棚への本詰め作業に戻る。

 きっと薄目で本を見るなんて変な真似をしていたからだろう。一瞬本の表紙がぼやけた――そんな気がしたのだ。

ただいま。これからも更新が安定するとよいですがしばらくはどうなるかわかりませんね。


「火星の人」は今年の春先にやっていた映画「オデッセイ」の原作になります。普段全然映画なんて見ない僕がふらっと映画館へ赴き、感激した作品です。火星にたった一人で取り残されたマーク・ワトニーが、それでも希望を捨てず、地球への帰還を目指してあがき続ける話――なにがすごいって、現実的に起こりうることしか起こらないという点でしょうね。火星人なんて出てこないし、NASAの陰謀もありません。

 次回はできるだけ近いうちに。

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