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22物語シリーズ

 22



『もうそろそろ予鈴です。五時間目が始まってしまいます。』


 篠目がそんなことをノートに書いて、本の話ですっかり盛り上がっていたらしいことに気が付いた。とにかく篠目とは、本の趣味がよく合う。お互い乱読派であり、色々なジャンルの本を片っ端から広く浅く、手に取った順番に、呑むように消費する。そんな読み方をしているのだ。昼ご飯を食べていないのは彼女曰くお昼ご飯代を本に回すためらしい。その会話の流れで聞きだしたのだが、赤沢たちにいじめられることはあれど、今のところ金銭的な被害は被っていないそうだ。それを聞き出した後で、自分はその情報をどうしようというのかと思ったが、自分に対する訝しみは感じなかったことにして、弁当を片付けた。結局会話の方に集中しすぎてしまい、ほとんど手がついていない。篠目はすべて食べ終えたようだが、意思疎通と食事が同時にできるって考えようによっては便利だな。


「今日は楽しかった。最高のお礼だったよ。逆にこちらからお礼したいくらいだ」


 そう言って篠目を見ると、彼女は頷き、ペンを走らせた。しかし気に入らなかったのか、そのページを破ってぐしゃぐしゃにしてしまうと、部屋の隅に投げ捨ててしまった。次のページに再びペンを走らせる篠目。


『また来週。ここで、一緒にお昼を食べませんか?』


 にこりともせずに、自信なさげに突き出されたノートに震え交じりで書かれた文字。俯き加減の伏し目がち。

 自分はそれに対し、肯定とも否定とも取れる曖昧な頷きを返して部屋を後にした。冷や水を浴びせかけられたような気分、ふと我に返ったのである。

 結局彼女は、一度も笑わなかった。

 また、という約束を迫られた時に感じた気持ち。

 自分は付き合ってはならない人間と付き合いを持とうとしている。篠目は赤沢たちにいじめられている、いわゆる「いじめられっこ」だ。

 もし彼女と接点を持てば、自分にも火の粉が降りかかるかもしれない。それに、降りかかるのが火の粉ではなく大火である可能性だって否めない。普通の人間であれば、交友関係は付き合うことで自分に損害のない、気楽な奴を選ぶ。ついでだから物語シリーズから引用すると、「相手のために死ねないのなら、私はその人を友達とは呼ばない」――真実、そんな関係を築けるのは本当の意味での親友だけだ。自分にとってのムラマサがそうである。しかし自分が篠目のために死ねるかといえば――今はまだ、なんとも答えが出せないといった状況であった。


 物語シリーズのオフシーズンって蛇足じゃない?

 出版されたらすぐ買いに行って読んじゃう身からすると「どの口がそんなこと言ってんだ」って話ですけど。

 オフシーズン面白いです。

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