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12引用なし

 ガイダンスでした(多分)

 いや、これ投稿される時間帯ならまだガイダンスしてるかも。

 12



 足にかかった程度なので別に命に別状があったわけではないが、三人のうちの一人――名前は知らない――は、右膝の一部と左脛のあたりに一生消えない傷を負ってしまった。酸による火傷は完治するまでに何か月もかかるようなひどいものではなかったが、それでも傷は傷である。醜い痕が一生彼女に付きまとってしまう。

 悪いのは誰か? そんなのは、誰に聞いても九割が「自分たちが悪い」と答えるだろう。因果応報、自業自得という言葉がある。三人が三人とも平等に罰を受けたわけではないから公平ではないと思うかもしれないが、そもそも「脛に傷がある」人間に公平などという言葉は適用されない。しかしそれは一般の理屈であって、大勢で一人を囲んで嬲るような頭の悪い楽しみを見出すような彼女たちの法に適用はされなかった。


――――わたしの足に一生消えない傷ができたのは、一体誰のせいだ?

――――理科室で「遊んでた」わたしたちを「驚かせた」、あいつのせいだ。

――――驚いたせいでビーカーを倒してしまったのだ。


 暴論も暴論である。だからこっちだって暴論で返すとすると、そんなこと知るか、だ。どう考えてもそっちが悪い。もちろん彼はそう主張した。

 いつの間にか、芳賀山へのいじめは減っていき、三人と彼の対立の構図が生まれていた。

 しかし彼には親友がおり、その親友のおかげで彼には何人もの仲間がいた。そのせいで彼と三人との膠着状態は続き、惰性のように続く芳賀山へのいじめだけが再びその内容をエスカレートさせていった。

 そして。

 彼と彼女たちとの間の溝は、時間の経過とともに埋まっていく。

 互いにその存在を気にかけないという、冷戦状態とも称するべき歪な関係。表面上は一切の喧嘩もいじめもなく、体育館シューズが隠される程度の以前と比べて等閑な「いたずら」だけが思い出したように繰り返される期間が、一学期間ずっと続いた。

 しかし完全に埋まったように見えても、一度できた溝は消えはしない。溝の間にナニカがつまって埋まって見えても、その何かは所詮異物でしかない。地面にできた亀裂で考えても、亀裂の中に後から堆積した部分の方が弱いのだ。そんなものは雨でも降ればすぐに流されてしまい、またもとの亀裂が露出する。つまりはそういうことだった。

 彼と彼女たちとの間の亀裂が、再び露わになってしまったのである。

 そしてその呼び「水」となったのは、二年生の二学期。日帰りで行く、異文化交流遠足であった。



 今回は引用なし。

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