10南米でオーパーツ探してる場合かよ!!
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――――なんてこった。これだけペンダントが並んでいる中で、ジェット機に見えるのはたったの一個だけだ。こ、これは、アカンバロの恐竜土偶と全く同じパターンじゃないか。たくさんある中からたまたまジェット機に似ている1個だけを取り上げて、「不思議だ! こんなに似ているのなら、この時代にジェット機があったに違いない!」とアピールしているんじゃないか。その他大多数の都合の悪い展示品は一切無視を決め込んで。
文字を追う目がかすみはじめ、丁度良い、とさくら剛著「南米でオーパーツ探してる場合かよ!!」に栞を挟んで閉じた。こんな風に海外を旅して、それを本にする生活は正直憧れる。
顔を上げて壁掛け時計の方に視線を向けるが、ぼやけてしまってうまく焦点が合わない。まあ良いや、と、目薬の蓋を開けた。今、何時だろう。そろそろ眠ろう。本を読むのに熱中しすぎると、あっという間に時間が過ぎるのは本当にどうにかならないだろうか。
滅茶苦茶に染みる点眼薬にもだえ苦しみながら、手探りで目薬の蓋を閉めてベッド脇のテーブルにおく。と、
「あ、しま……っ」
カタン、と音を立てて何かが倒れ、落ちる。テーブルの上には額縁に入った賞状の類がいくつか飾ってあって、素材がガラスなので、落とすと割れてしまう可能性があった。どちらかというと資格の合格認定証であるので、賞状とは違うかもしれないがそれはさておき。なんとか痛みもおさまり、明瞭になってきた視界をテーブルに向けると、語彙力検定準二級の合格認定証が入った額縁が倒れてしまっていた。確か中学三年生の六月に受験したものだ。二級は高校に入ってから合格している。
ともあれ、ガラスが割れていないようで良かった。額縁を起こして再び立てる。と、その時、指先が何かに触れた。紙だ。いらない紙を適当に束にして机の下に置いておいたのを一緒につまみあげてしまったらしい。
薄青い表紙。
中学校の時の、異文化交流遠足のしおりであった。
南米でオーパーツ探してる場合かよ!!(MEDIA FACTORY)
は普通に紀行ものとして面白かったです。中南米を著者であるさくら剛さんが旅して、現地のオーパーツの謎を解いていく、みたいな。ほとんどゲロはいたり下痢になったり乗り物酔いしたりしてるだけなんですけどね。担当編集の女性とメールで喧嘩して、ホテルに出た巨大ゴキブリの写真添付して送ったらガチギレされたりとか。結局オーパーツの謎も解いてないですけど、ぐだぐだな旅自体が楽しそうです。




