第1話 突然現れた世界
処女作であり練習作です。
夢を見た。山で駆け巡る少年。
あれは俺だ。ずっと昔の俺の姿。
浮遊感、奇妙である。
ガツン!
「いっ…てぇ」
後頭部の痛みで目覚めると、空があるはずだったそこには天井があった。
天空に都市。地上にも都市。飛び回る奇っ怪な生物。光る太陽のような玉。
わけがわからず無意味に見回す。見知らぬ光景、見知らぬ土地、見知らぬ生物。
わからん。夢か?明晰夢ってやつか?夢を見ながら夢だと自覚できるアレなのか?
思わず頬をつねる。古典的な方法ではあるが、やらずにはいられない。痛みはあった。痛いだと?じゃあなんだ、ここはまさか現実?…リアルガチ?
ふむ、どうも寝起きでぼんやりしてる気がする。俺はとりあえずこんな事になる前の記憶を掘り起こすことにした。
俺、高山優一。24歳独身。実家暮らしニート…もとい家業の手伝い。今日は畑仕事を終えて裏山で木にもたれながら昼寝をしていたはずだ。
裏山というのはうちの祖父が所有してる土地のことで、俺が小さい頃から遊び場にしている。
爺ちゃんには怒られたが、子供の頃こっそり忍び込んでは友達を連れて探検ごっこをしていたものだ。
高校卒業後あたりからは怒られることもなくなり、そのうちに立ち入り禁止令も取り下げられ自由に出入りすることを許可された。
俺は裏山が好きだった。成人した今でも休憩中にわざわざ昼寝しに来るくらいには大好きだ。
いや、そんなことはどうでもいい。どうでもいい記憶はちゃんと覚えてる。一応脳は正常のようだ。
俺は改めて自分の立っている地面を見た。
土だ。言うまでもない。では空にあるものはどうか。あれも土だ。言うまでも…ある。
空に土?というか土が空?どちらかというと地球に急接近した他の惑星…と見えなくもないが。改めて見渡したところでここは俺の見知った裏山ではないし、ついでに言えば新種の動物がわんさかいる。凶暴そうに見えるのであまり近づきたくない。
つまり、完璧に異次元ワールドだ。異次元、異世界、陳腐で好ましくない表現だと思ったが、そんな言葉がぴったりだ。
疑問はたくさんあるものの、俺はひとまず視界に見える町らしきところへ向かおうと思った。
凶暴そうな動物たちから隠れつつ進もう。
夢かうつつか幻か。まあどれだとしても良い。
地上と天井の間に浮かぶ光の玉が、優しく笑ったような気がした。
明るくて、暖かな光だった。