主人と下僕 3
表に面した渡り廊下を歩いて、はじめて目にする一角に出た。
和式の造りから一転、西洋モダン様式、というのだろうか。一変したレトロな造りに美桜は目をしばたたいた。
戸口を入ると、窓枠の形や壁にかけられたレリーフ、照明のひとつひとつにもアンティークな装いがある。小物置きのチェストに、巽家ではじめて見る階段。
いきなり違う世界に迷い込んだ気がした。
シュウは戸口で備え付けのスリッパを取り出すと、自分と美桜に置いてスタスタと進む。
左手の一室をノックして応答が返り、辺りをキョロキョロ見回していた美桜もあわてて向かった。
開いたドアの先は広い一室だった。
やはり西洋モダンな造りで、重厚なアンティーク家具の色合いと落ち着いた色のカーペットで、すこし暗い色調が目に飛び込んでくる。
部屋には十人掛けは優にあるアンティークテーブルが占めており、そこに掛けた三人の人物を認めて、美桜は息をのんで後ずさった。
上座に巽老人、右手に知らない女性と、昨日の若者だった。
横にいたシュウがスッと何気ない動きで美桜の前に立つ。思わずその彼の服の端をつかんで背中に隠れるようにしていた。
室内からは苛立ったような若者の舌打ちが響く。巽老人が口を開くよりも、新たな物音が響いて声がかけられた。
「───美桜」
その声に室内をのぞき込んだ美桜は、別の戸口から姿を見せた伯父を認めた。
「一匠おじさん………!」
とたんになによりも安堵して室内に踏み込んだ。伯父のもとにかけよると、伯父も美桜のほうに数歩つめた。
美桜をながめて少しく眸がやわらぐ。暖かい手が美桜の頭に乗せられた。
「遅くなって悪かった。………怪我は」
いたわられる暖かさに、さんざん泣いたのにこみ上げるものがあって、美桜は急いで首をふった。大丈夫、と。
伯父は美桜の頭をなでると、支えるようにして巽老人の近くの椅子に座らせた。左足がびっこ引いているのはすぐに見破られていた。
伯父が出てきた戸口から家人らしい女性が現れて、美桜たちの前に淹れたての紅茶が置かれる。巽老人たちの分も入れ替えられて、気品ある香りが立ちのぼった。
部屋に静寂がもどり、巽老人が息をつく。
「───まずは、美桜さん。当家で起きた不祥事を心よりお詫びする。同じ種族が起こしたこととはいえ、彼の行為をかばい立てる気はない。処分はいかようにも、あなたの望むように計らわせてもらう」
美桜はとまどった。身内だから警察などには通報されなかったのかと思うが、聖魔の存在が秘されている状況で、たとえ彼女が処分を求めてもたいして効果はないように思えた。
だいたい、伯父がそばにいてくれるから彼と対面しているのも耐えられるが、ほんとうだったら全速力で逃げだしたいところだ。
ふたたび若者からは舌打ちがもれ、一匠が静かに言葉を発した。
「貫成さま───。美桜に彼を罰することを求めるのは、身内をかばい立てているも同然でしょう。彼の処遇は私に一任ください」
「なんとするね」
「しばらく───モンゴル僻地で妖魔討伐にあたってもらいます。戦闘兵に混じり、一兵士として。もちろん、使い魔の力はこのまま封じます」
「な………っ!ふっざけんなッ」
激した感情がテーブルにぶつけられ、茶器が音を立てた。美桜はとっさに身をすくめた。
となりの伯父からはこの上ない、冷ややかな気配がただよいだした。
「もちろん、ふざけてなどいない。貴巳。おまえの処遇は巽家ご当主の一存に置かれた。一条家の秘蔵っ子だからといって、横暴なふるまいのすべてがゆるされると思うな。───ゴビ砂漠や北極圏に飛ばされないだけ、ありがたいと思え」
圧倒的な伯父の叱声で、室内は占められた。若者も怒気を見せたのは一瞬で、すぐに伯父の迫力にのまれ言葉を失った。
はあ、と言葉にしたため息は若者のとなりの女性だった。
年頃でいうなら、美桜よりいくらか年上ぐらいの、可愛らしい顔立ちをした女性だった。小柄な身体つきに、エネルギッシュな双眸。
その性質を示すように、スパン───!と目にも止まらぬ早さと容赦のなさで若者の後ろ頭がはたかれた。
見事にテーブルに顔面を打ち付けた若者が次いで激怒する。
「てっめえ………!ウ」
スパン!ともう一度彼の頭がはたかれる。その彼女の腕は一瞬、しなやかな木の枝に見えた。またたく間に人の腕にもどっている。
「その名で呼ぶなって、何度言ったらわかるの。このノータリンバカ」
冷ややかに告げて、あからさまなため息がもれた。
「まったく男どもと来たら、年食ってもすぐに頭に血を上らせるのはガキんちょと変わりないんだから。───一匠も、大事な姪を傷つけられて怒り心頭なのはわかるけど、それよりも先にやることがあるでしょうが」
黙した彼らの前で女性はとなりの若者に目を投げてうながした。
「謝りなさい、バカ貴巳」
若者の顔には憤りと、激しい葛藤がせめぎ合った。たすけはない。せめぎ合うプレッシャーと───なにより気に食わない相手を前にして、矜持をへし折られる耐えがたい屈辱感。
かみしめた奥歯が噛み砕かれないのが、ふしぎなほどだった。
「………悪かったよ」
ようようしぼり出した声は、はあ?聞こえない、とわざとらしくとなりから返される。同家のくせに、と貴巳はカッと燃える怒りに支配された。
「悪かった、っつってんだろ!!んだよ、そんなクソ女!ヒマつぶしでなきゃ、だれが手を出すかってんだよ!」
とたんだった。美桜と一匠の背後で座らずたたずんでいたシュウが、目にも止まらぬ早さでテーブル向こうの彼を蹴り飛ばし、壁にぶつかった彼の額に氷色の銃口を押しつけていた。
一瞬の出来事だった。
おそろしいほどの沈黙に占められて、だれも言葉がなかった。
「───シュウ」
静かな一匠の声が彼の凶行を止める。ふッと氷色の銃が消え、床にへたり込んだままの若者からは、憎々しげな声がもれた。
「クソ野郎………母親殺しの大罪人が」と。
美桜はなにを思ったのかわからなかった。ぼうぜんと、目の前の光景を映していた。
再度、意識したように大きな息がつかれる。シュウ、と。
「控えなさい。貫成さまの御前よ。───ってか、一匠。なに私に止めさせてんのよ。バカ貴巳が消されてもよしとしわけ?」
「それほどの愚か者なら、聖魔と名乗るのもおこがましい」
美桜が昨日も聞いたセリフだった。伯父はなにに対してか逆手に取ったようで、彼女の知らない緊迫がただよった。
なぜだかわからないが、美桜はあの!と身を乗り出していた。なんでだか夢中だった。
「あの………もう、いいです。昨日のことは………忘れます。もう大丈夫です。だから、あの………如月さん。ほんとうにもう、大丈夫だから」
暴力がふるわれる光景はただ怖い。シュウが(たぶん)美桜のために怒ってくれたのはありがたいが、目の前の光景は彼女をおびえさせた。
女性の声がその場を仕切る。
「だそうよ。彼女に感謝しなさい、バカ貴巳」
チッ、と忌々しそうになにかを吐き捨て、若者は立ち上がった。シュウはそんな彼を一瞥して美桜たちの背後にもどる。
「………黒崎の関係者だって知ってたら、手なんか出さなかった」
つぶやいて倒れた椅子に足を引っ掛けた若者は、ふたたび女性に叩かれた。今度は人の手で、鋭く高い音が響いた。
「あんた、全然反省してないのね」
若者が怒気を見せる余裕もないくらい、あきれはてた怒りの気配だった。
「女に暴力ふるっておのれの性欲のはけ口にしかできない男は、クズよ。存在する価値もないわ。シュウや一匠が手を下す前に、私があんたを始末してあげるわ」
指先だけが鋭利な木の切っ先になり、若者の喉仏に据えられた。ごくり、と彼の喉が鳴る。
同族同士の力は周知の事実だ。その実力も───本気度合いも。
「…………悪かった。二度と、しない」
沈黙が続いてふッとそれが解かれた。
「次に似たような報告受けたら、あんたの股の間にぶら下がってるもの、チョン切ってやるから」
初対面の美桜にもわかった。その声音に秘められた本気度合いが。
女性は気配を一変させてふりかえると、美桜ににこりと笑いかけてきた。
「こんなところで許してやってもらえるかしら。このバカを連れて来ちゃったのは私なの。私からもお詫びさせてもらうわ。ほんとうに、ごめんなさい」
深く頭を下げられて、美桜はあせった。彼女が謝ることじゃないと思う。
「あの………ホントに、もういいです」
困ってとなりの伯父に目を向ける。伯父もため息で気分を入れ替えたようだった。
「美桜が謝罪を受け容れても、貴巳の起こした行動は問題だ。ペナルティは受けてもらう。そして再度、同様の件が起きた場合、制裁を覚悟するように。これは最終宣告だ。それでこの件は終了とする。───それでいいか?美桜」
「………うん」
一匠は視線を巽家の当主へあずける。巽老人も少しく息をついてうなずいた。そうして女性と若者に視線をやる。座りなさい、と。
二人が元のように席につき、言葉は美桜にかけられた。
「驚いたろう、美桜さん。聖魔には血の気が多いものが多くてね。各家でも色々と手を焼いているよ。年寄りには頭が痛い問題だ」
その言葉に女性がそっと目をそらし、若者が忌々しそうな顔で舌打ちをこらえていた。巽老人は気にせず続ける。
「紹介が遅くなったね。こちらは京都の一条家に属する聖魔で」
「芳野小梅。小梅って呼んでね。美桜ちゃん」
巽老人の言葉に割って入った女性はにこりと人懐っこい笑みを見せる。指を伸ばしてとなりの若者のイヤーカフを引っ張った。
「こっちのバカも一応親族の一人で、芳野貴巳って言うの。覚えなくていいわよ。すぐに一匠に僻地に飛ばされる身だから」
小梅といった女性に押される勢いで、美桜もあいさつした。
「………高城美桜です。はじめまして」
ペコリと頭を下げて小梅の面白そうな眸に気付く。
「ふーん。チャコの言ってた通り、キレイな子ね。蓉子さんの面影があるじゃない。一匠。だからひっしになって隠してたわけ?」
伯父はもう一度大きく息をついた。
「ウメ。初対面の時ぐらいは本名を名乗るのが礼儀だ」
「………その名で呼ぶなって、言ってんでしょ」
「タマとキャラがかぶっているぞ」
「うっさいわね!現代でも通じる名前を付けられたあんたにはわかんないわよ。だいたい、なによ。そのジジくさい髪の色とヒゲ。全然似合ってないわよ」
「十数年ぶりの場所に出入りするのに、細工なしのふるまいも問題だと思うが」
「だれが老婆メイクなんてするもんですか!あんたでしょ。特殊メイク技術に援助して一族に広めてるの。やりたきゃ自分一人でやんなさいよ。私はぜったいにゴメンよ」
貴巳という若者がそこでよけいな一言をポソリとつぶやいた。
「ババアはババアだろ」と。
瞬間、愛らしい顔立ちが、鬼のご面相になった。貴巳のイヤーカフが今度は引きちぎられる勢いで引っ張られ、聖魔の彼でも声をあげて痛みを訴えた。ふたたび謝罪の言葉を引き出して、フン、と小梅の鼻が鳴らされる。
美桜はただ目をパチクリとさせていた。巽老人が低く笑いをもらして美桜に話しかける。
「好戦的なのも聖魔の性質かね。美桜さん。あなたはそうでないことを祈るが」
その言葉にピクリと反応したのは、耳朶を押さえて痛みをなだめていた貴巳だった。
「やっぱり、聖魔か………!カラスもアカザも口を開きやがらねえ。巽のじいさま、聖魔の誕生を隠してたのはなぜだ」
「きみのように先走って彼女を傷つけるものがいるからだよ。貴巳」
貴巳は舌打ちをこらえ、激しやすい感情を押さえるように声をつむいだ。
「言葉遊びはたくさんだ。その女にさわったら、いやに力がみなぎった。如月のありえねえ力と言い、ヤツの百雷くさいにおいと言い───巽のじいさま。なに隠してやがる。その女はいったい、何者だ?」
言葉と昨日も見た鋭い視線にさらされて、美桜は身をすくめた。貴巳、とやわらかな巽老人の声がかけられる。
内容は声音と真逆のものだった。
「それを話すのはきみとではない。きみでは役者不足だ。それに───そろそろ、下がりなさい。謹慎を言い付けたきみをこの場に同席させたのは、美桜さんへの謝罪のためだ。きみの処分は決まった。半人前が大人の話に嘴を突っ込むものではないよ」
「な、ん………っ」
「私はなにか、間違ったことを言ったかね?」
穏和でにこやかな口調なのに、いままでの怒気を示しただれのものとも違う、逆らえないおそろしさがあった。
一匠や小梅でさえも緊張をかくした風情で押し固まっている。
貴巳はこの時ようやく、巽家のお屋敷で暴挙をふるった───それをしてしまった意味を理解した。
取り返しがつかない。
穏和そうに見えて、好々爺の裏の顔で貴巳の使い魔をあの後すぐさま封じた手腕はあざやかだった。貴巳のように使い魔の力で他者の優位に立つ者は、それを戒められると赤子のように無力になってしまう。
クッ、と歯軋りして拳でテーブルをひとつ叩くと、そのまま椅子を蹴って部屋を出ていった。
巽老人は飄々と動じない。
「乱暴者がいると空気がピリピリしていけない。美桜さん、悪かったね。ほんとうなら彼と顔を合わせるのも怖かっただろう」
美桜は小さく首をふった。巽老人の穏和な物腰から出る威厳にビックリしていた。
となりで伯父がかるく息をつく。
「本題に入りましょう。ウメ。例のものは?」
「コ・ウ・メ!」
青筋立てて繰り返しながら、小梅は脇の荷物から銅製のアンティークな小箱を取り出した。テーブル上をすべって一匠の手元に来る。
精緻な紋様と錆などは浮いていない手入れの行き届いた、時代を感じさせる箱だった。
一目見ただけで、美桜は高そう、と思ってしまう。伯父の意識は別のところに向いているようだった。
「どうやら、本物らしいな」
蓋には不格好な紙が貼りついて開けなくなっていた。美桜にはわからない外国語が書かれている。小梅の得意げな声が出た。
「あったりまえでしょ。この私が偽物なんかつかまされるわけないじゃない」
「しかし───どこでどう、依頼相手がすり替わったのか。これを手に入れるよう依頼したのは、幸隆だったように記憶しているが」
「あんなボクちゃんにヴァチカンの伝手なんてあるわけないでしょ。感謝してよね。おかげでヤツらに気付かれることもなく、こんな短期間で手に入れられたんだから」
ふっと伯父も少しく苦笑した。そうだな、と。そして箱を美桜の前に置いた。
「開けてみなさい、美桜」
「え。でも───」
蓋の口にある紙は開けられるのを拒むためとしか思えない。
「大丈夫だ。危険なものではない。これは───おまえに必要なものだ」
疑問に思ったが、伯父がそういうかぎり確かめなければ話は進まない。美桜は箱を手に取った。
封印のような貼紙は年期が入っていて、はがすのはとうてい無理そうだ。開けろというからには破いてもかまわないのだろう。
ん、とちょっと力を入れてみると、箱の蓋は拍子抜けするほどあっさり開いた。貼紙を破いて。
「わ………」
中には黒繻子の台座に埋め込まれた、二粒の宝石が輝いていた。無色透明だったから、宝石ではなく水晶なのかも知れない。けれど、久方ぶりに陽の目を浴びたような純然たる輝きにあふれていた。
なるほどね、とつぶやきは小梅のほうからもれる。
「バカ巳じゃないけど、その子が聖魔って話には半信半疑だったんだけど………。聖魔にしか破れない封印呪が破れるのなら、やっぱり本物、ってことね」
「チャコから聞いていたんだろう」
「だとしても、あんたの言い分を全面的に信じる義理はないわよ」
キッパリと言って銅製の箱を少しながめた。
「それは中世あたりから伝わる守護石よ。弱った聖魔をたすけるもの。邪気を払ったり、闇の気から気配を消したりね。健康体の聖魔が使うことはない。でも───彼女には必要なのね」
息をつく小梅に美桜は先から思っていたことをたずねた。
「あの………小梅さん、は、久子先生のご先祖さまですか?」
とたんに小梅の顔がなんともいえない嫌そうなものになった。タマがしていた表情に似ていた。
「そうだけど………あの子、ほかになに余計なこと言ったの?」
外見年齢からすると、久子が小梅のことをあの子、と呼ぶほうが合っている。美桜はそのギャップを思って少し笑んだ。
「梅コンブ茶が好物だって」
「あの、タコッ!」
口が悪いところもタマと似ている。もしかしてタマは、彼女の存在を察知して避けたのかしらと思った。
巽老人も笑いをもらして小梅に言う。梅コンブ茶に入れ替えてもらうかね、と。
「けっこうです、貫成さま。チャコの言うことを真に受けないでください。美桜ちゃんも」
伯父は一人、我関せずといったふぜいで紅茶を口に運んでいた。美桜は話題を変えたほうがよさそうだと判断する。
「えっと………おじさん。これがあれば、わたし、怪我しても邪気にとりつかれないって、こと?」
かすり傷程度で先のような事態にはならない。雨の夜だって、闇の気から隠してもらえるのなら、それはなにより歓迎すべきアイテムだった。
伯父も箱の中の石に目を落としてうなずいた。
「二つあるな。………前の持ち主がピアスにしていたんだろう」
そっと、美桜も指をのばして石にふれ、伯父の言うとおりなのを認めた。
美桜はピアスをしたことがない。これを身につけるとしたら、ピアスホールを開けるしかなかった。
ちょっとためらいを覚えた前で伯父が説明をはじめる。
「これは力ある聖魔がそのむかしに造ったものだ。弱った聖魔をたすけるだけではない。闇の気を視てしまうノーマルを守るものでもあった。日本にもあったはずだが………早急に現存が知れているのが、海外にあるものだった」
伯父は思うようにつぶやく。
「身につけるものだとは聞いていたが、ピアスか。美桜、いやか?」
投げられた視線は彼女のためらいを見透かした気がした。
思いがけずピアスを開けることにためらいと怖さはあるが、でも、それでシュウが雨の夜かけ回ったり、ちゃんと家に帰って休めないことから解放されるのなら、たいしたことではないと思えた。だから、ううん、と答えた。
「平気」
背後にいるシュウの気配がいやに強くなった気がした。あ、でも、と美桜は困惑する。
「ピアスホールって、空けたらしばらく固定しなきゃいけない……んじゃなかったっけ?」
すぐにはこのピアスはつけられないのでは、と言うと、伯父はいや、と一粒を手にしてその裏側を確かめた。
「普通のピアスではない。聖魔に寄り添う力がある。おそらく問題ない」
ふうん、とながめた美桜たちの前で、「───一点」と、小梅が証言するように片手を上げた。先までの気配を消して真面目な表情だった。
「幸隆が、それを追うルートで手に入れた確実な情報よ。デメリットが一点。守護石を身に付けると、使い魔との繋がりが希薄になるそうなの。───理屈はわからないでもないわ。使い魔は結局のところ、聖魔の身を守るために契約を結ぶんだもの。守護石がその役目を果たすのなら、使い魔はお払い箱ね」
それはつまり、主従契約を結んだシュウがお払い箱になるということか。




