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Summer vacation, homework seems hell

Καλοκαιρινές διακοπές, εργασία φαίνεται κόλαση

『以上二つが基本戦術です』

「戦術って……戦うことあんの?」

『護身術に覚えておいても損はないかと……それに、ありますから……』

「へ?なんだって?」


最後のところがうまく聞き取れなかったが、ネロはそれ以上なにも言わなかった。

仕方がないので、杖を握りしめながら、とりあえず最深部から出ることにした。

本殿から外へ出ると、太陽の光が直に射し込んで来た。


「くっ!眩しい!」

『……主?』


またもやネロに冷ややかな視線を向けられるが、俺は屈指ない。

実際夏の日差しはとても強いのだ。

お肌の大敵だな。


『まずは水浴びをして身を清めることをお勧めします。その後、天使への謁見が待っているので……』

「あぁ、わかっている。全く……巫女になるのも一苦労だな……」

『巫女業を舐めないで下さい』


伸びをしながら湖に向かう途中、そんな他愛もない話をしながら、ふとあることに気がついた。


「俺……飯食ってねーや」

『栄養摂取を最優先に行なった方がよろしいです』

「……だよねー……」


とりあえず進路変更。

行き先は自分の部屋だ。

自分の部屋につき、ジーンズと白いTシャツに着替えてから、玄関を出た。


『何故栄養摂取の為に外へ出るのですか?』

「そこに美味い定食屋があんだよ。それよりこの杖、小さくなんねーの?さっきから恥ずかしいんだけど?」


チラチラ見てくる周囲の人間の目が気になって仕方が無い。


『可能です。杖に力を込め、縮むことを思い描いて下さい』

「えーと……縮む……縮む……」


瞳を閉じ、杖が縮む姿を思い描くと、次に瞳を開けた時は杖は手のひらサイズにまで縮んでいた。

しかも腕に通して腕輪にもできるくらいだ。


「俺の想像力……侮れんだろ?」


ドヤ顔しながら腕輪を日にかざしていると、ネロはただ頷いた。


『感服です』

「そう見えねー」

『表情を出すよう、プログラムされていません』

「……ネロ、機械だったの?」

『冗談です』


周囲から見れば腕輪と喋るアホな人だが、俺は心の底から楽しみながら、馴染みの定食屋ののれんをめくった。


「…お、ユウキじゃん!おっひさ!」

「……あ、正人……」


定食屋の中には、同級生の清村正人が飯を食っていた。

今は夏休み中なので、久しぶりの再会である。

正人の隣に座り、カツ丼定食を頼んだ後、正人と話を咲かせる。


「ユウキ、昨日巫女に就任だろ?男が巫女って実感ねーな…」

「俺が言いたいくらいだよ。正人は今どんな感じ?」


正人は箸の手を止め、考え込むように上を見る。


「宿題地獄だな」

「考え込んで出た結論がそれかよ……」


片手で頬を支えながら冷や汗かきつつ正人を見る俺をよそに、正人はじっと何かに注目しているようだった。

その目は、明らかに俺の腕を見ている。


「……なんだよ?」

「…いや、さ。お前、そんな腕輪……つけてたっけ?」

「いや、今日からつけ始めた」


水無の杖でもある腕輪をチャラチャラと鳴らし、お冷を飲む。


「なんか……その腕輪……チャラいな」

『チャラくなどありません!』

「ぶっ!!」


お冷を吹いてしまった。

慌てておしぼりで机を拭くが、正人は明らかに驚いている。

お箸が落ちてるし、目が見開かれてるから。


「……今……喋ったよな?」

「……気のせいじゃない?」


とりあえずここは濁しておくに限る。

めんどくさい方面に進むのだけはごめんだ。


「でも今明らかに女性の声がこの腕輪から聞こえたよな!?」

「気のせいだって!あ、定食来たー。いっただっきまー………」


俺が両手を合わせ、おなじみのキャッチフレーズを言おうとした矢先だった。

正人は腕輪がついた左手をガッと掴むと、グイッと顔を近づける。

正人の顔は概ねにも整っているので、周りから見れば美形二人がなにやっとんじゃという光景である。


「絶対喋った!」

「いや、気のせいだって言ってんだろ?」


俺は左利きの為、正人が腕を離してくれない限り、食事を取ることができない。


「いい加減離してよ。この後時間押してんだよ」

「じゃあなんで外食に来てんだよ」

『御友人の御言葉は正論でございます』


バキッ。


今度は箸を割ってしまった。

……しまった。

完全にもう、言い逃れはできない…。

ネロのばぁぁぁぁかっ!!


「……今、完全に喋ったよな?」

「……うん」

「説明してもらうぞ?」

「……うん」



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