水の精霊『ウンディーネ』
Πνεύμα του Undine νερού
「……っなっ!?」
一瞬にして泉と化した部屋を歩き回る。
水の高さは丁度膝の辺りまできており、確かに水浴びにはいいかもしれないところだった。
しかも、先ほどの泉化によって、知らぬ間に部屋のランタンに青い灯りが灯り、部屋の中が明るくなっている。
『罪と言ったのは、貴方?』
中央から再度声が響いた。
慌ててそちらに視線を向けると、俺がさっきまで覗いていた、石で積まれた水溜りに、女性が座っていた。
青い炎によって照らされた金色の髪は、白い肌にとても映えており、青い双眼が憂いを帯びている。
ー女神ー
その言葉がとても似合う、神秘的で美しい女性だった。
『私の名は「ウンディーネ」。自然界4代元素の一つ、『水』を司りし精霊……そして、『水無の杖』を授かりし者に恩恵を授け、罪を解くもの……』
「ウンディーネ……?」
泉や、湖に住むと言われている、あの?
しかしそれ以前に。
罪って言った?
「罪って?」
俺の言葉に、ウンディーネは悲しそうに眉を寄せる。
目を伏せ、片手で水をすくった。
『お話しする前に……貴方に恩恵を授けなくては……さぁ、水無の巫女よ、前へ……』
「……なんで…俺が巫女だって……分かった?」
『この泉を現せるのは、代々杖と契約をした巫女にしか不可能ですもの』
足を一歩一歩進めながら、ウンディーネを見つめる。
ウンディーネは、片手の水をドッジボールサイズに丸め、こちらを見ていた。
その水球には、何か入っているようだった。
俺がウンディーネの前に立った時、ウンディーネが水球に息を吹きかけ、俺に言葉を並べていった。
『水無の杖を守護する神子よ。我は水を司りし精霊、ウンディーネ……我が名において、杖を護り抜く為の力と、その恩恵を与える』
水球がウンディーネの手から離れ、俺の目の前まで来ると____破裂した。
飛び散った水の中から現れたのは、小さなカップだった。
逆三角形の烙印がおされたそれを受け取ってから、ウンディーネを見る。
『……どうか、貴方に神のご加護があらんことを……』
「命に代えてでも………」
自然と口から言葉が漏れ、ウンディーネの前に跪いた。