竜門の祠【2】
2 Παρεκκλήσι της Ryumon
「あー……畜生……身体が重いー!」
先が見えない道を壁づたいに歩く。
さらに気味が悪いことに壁にかかっているランタンが、俺が足を踏み入れる数メートル先から、ポツポツとひとりでに灯り始める。
「気味が悪いなぁ……」
俺の言葉が、薄暗い洞窟内で響き渡る。
さらにそれが気味悪さを引き立たせる。
「……まぁ、真っ暗だったらさらに怖くて気味悪かっただろうけど……」
暗いところが怖いなんて遥に聞かれたら「だからユウキは女々しいのよっ!」って言われそうだけど……。
遥がこの場にいないのが不幸中の幸いだな…。
「しっかし……身体が重い…」
泳いだからなのか、死にかけたからなのか、さっきから恐ろしく身体が重い。
眠気も襲いかかる。
「………あ……」
重たい足を引きずりながら先を見る。
そこは、道が開け、大きい空間が広がっていた。
整えられた石畳の階段を下り、広い段になっている階段を上がる。
月光が天井から差し込められ、中央がライトアップされていた。
輝く水が溢れ出す、泉……………?
「は?これ、泉なのか?」
そこにあったのは、泉、というよりは水が溜まっている、という表現の方があっている、小さな、小さな水溜りだった。
「……ネロにはこれが泉に見えるのかな……?」
いや、いや。
おかしいって。
中央に近づき、改めて水の中を覗き込む。
やはり、深さもさほどなく、足が浸る程度にしかない。
泉と言えば、水浴びができる程度はスペースがあって、水が耐えることなく溢れ出ていることを言うのではないのか?
「……もし、本当にこれが泉だったとしてもさぁ……ここに、『罪』が隠されてるって……ことになるよね?」
見た感じ何もないけどなぁ……というか、ここに存在するはずの『竜門の祠』が存在しない。
「……なんなんだ?」
溜まり場の水をバチャバチャと弾きながら、水面の波を見つめる。
やはり、ネロは俺に嘘をついたのだろうか?
俺はどことない不安から疑心暗鬼になっていた。
『……罪と言ったのは、貴方……?』
上の方から声が響いたと思った途端、水が突然溢れ出し、段をおりて行き、最終的には部屋一面をひとつの泉へと、豹変させていた。