回避、諦めました。
ふわり、柔らかな風に包まれたかと思うとさぁーと、私にかかっていた魔法が解けてゆく。ああ、してやられた。この魔力の色は……王太子、ラファエル様だ。
いきなり、大きくなった私を見て驚く人々。魔法が行き交うこの国でも珍しい魔法だから特にか。サリアナは、諦めた顔をして空を見上げる。この、陣は…無効化の陣だ。
「気づくの、早いよ…」
もう少し、家出を味あわせてくれたっていいじゃない。ため息を一つ零す。「ありゃぁ、王太子妃殿下じゃねえか?」
誰かそう言うと、私の周りはさぁ大変。これは、あれだ。私、苦手…です。
「………はは、」
苦笑いを浮かべ、対応していると現れる煌びやかな人。
「やぁ、皆よ。僕の妻が少し訪問して、騒がしたようだね」
にっこり笑ってそう言うものだから、年頃の女性たちがぱたりと倒れる。「…やはり、妃殿下かいな」
「僕の妻は、このような綺麗な場所が好きだからね。たまに、訪れてもいいかい?もちろん、僕もだが」
「王太子様も妃殿下様も大歓迎ですぞ!このような地に赴いてくださるとは、こちらも嬉しい限りです」
そうして、言葉巧みに私の家出騒動は有耶無耶にされていた。なんと、悲しいことだろう。一世一代の、私の覚悟は…!
「ねぇ、サリアナ…僕のことが嫌いかい?」
無効化の陣まで使って、私を探すってことはそんなに私を愛しているのだとは思う。けれど、夜の夫婦の営みが…私には耐えられないのよ。きっと、却下されると思うけど。
「……嫌い、じゃないけど…」
「けど、なにかい?僕は、君がいないとどうにかなってしまう…世界だって壊してしまうよ、」
サリアナは、目を見開いた。やりかねない!こいつは確実に世界を滅ぼす!出来てしまいそうだから、余計にそう思う。
「……毎晩、辛い…」
「………そんな、僕はあれでも抑えてる方なのに…?」
まじかよ!!あれで、抑えてる?!オカシイ、オカシイよ!
*****
「サリアナちゃん、お疲れねぇ」
すっごい美人は、私に微笑む。「サリアナちゃん、私もそうだったわぁ。そのうち、慣れるのよ。諦めが、肝心よぉ」
そう、遠い目をしておっしゃられるは現王妃様だ。美しい彼女は、私を抱きしめ実体験を話してくれる。
「王族の血筋は恐ろしいとその時思ったわぁ」
ええ、はい。王妃様も、夜の営みに悩んだそうだ。が、彼女は諦め受け入れ今がある。
これは、私に諦めろと言っているのかなぁ。そうだよね、うん。
「ラファエルも、そうなのねぇ。サリアナちゃん、ラファエルに相談したのぉ?」
「い、一応…はい。でも、抑えてる…と」
「あら、私もそう言われたわぁ。親子は似るのね!」
で、終わらせられた私の心はやさぐれてる。あぁ、諦めろと。でも、でも、でも!少しずつ好きになっているけれど、その分ハードになってゆくような…。
「サリアナ様っ!お会いしたかったですぅ」
この声は、アリシア?あらまあ、顔がぐしゃぐしゃ。
「昨晩、お帰りになられたとお聞きしましたが、会わせてもらえず心配で心配でぇ!」
「……あ、うんごめんね」たぶんそのとき、私はラファエル様にきつくホールドされ夜の営みにまっしぐらでしたよ。
「でも、良かったです!」
ああ、アリシアの笑顔はいやされる。
少し、大変だけれど幸せに囲まれてるんだ私。ちょっとくらい、我慢すればあとは幸せしかないのね!
回避、諦めました。
****
「やっ」
夜、攻めに攻められてます。ああ、どうしてかなぁ、諦めたのにね。やっぱり、我慢できない!!
諦めたくないいいいい!
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