回避、します!
ふふふふふふふ、これで大丈夫だと思う。…うん、思う。なにせ、私でもあれ?って思うもん。
鏡の前の幼女、これは私。サリアナである。
こうなったのは、あの王太子様の夜に耐えきれなくなってきたのだ。少しまえまで、にげきれないと思って大人しくしていた。側にいると、いいところも目に付いちゃって結婚して良かったかもと思ってたときもありましたが…もう、耐えられない!!
「あはは、お母様、お父様、親不孝の娘でごめんなさいね」
でも、許して。毎晩毎晩、もう嫌なのよ。孫は見せてあげたかったけれど……。いいじゃない、お兄様がいるわ。
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幼女となった私は、王宮から逃げ出す。きちんと魔力は隠して、あと服装も城下町でよく見かける女の子に借りた。というか、貰ったもの。ちゃんとお礼もしたし、一応口止めもした。どんな所から情報が回るか分からない。念には念を、作戦もきちんと練ったし、準備だってね!しかし、この幼女姿はいつまでもつかわからないのが私にとって危険視しないといけないところ。
とにかく、今は遠くまで行くことに越したことはない。さて、回避、します!
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「サリアナが消えただと?」
サリアナが消えたことを伝えられた王太子、ラファエルは立ち上がる。ああ、少し目を離したらこれだから。
「サリアナ、君は逃げられないんだよ?」
にっこり微笑んで、空を見上げる。
「ふ~、やるか。」
普段の青い瞳が、緑の瞳へと変わる。
「サリアナ、サリアナ……あれ…」
すぅーと、青い瞳へと戻る。
「追えない…?」
バッと踵を返して、自分とサリアナの部屋へと早歩きで向かう。僕の追跡魔法が使えない、サリアナの魔力に反応しないなんて…。どこにサリアナがいても分かるように極めた魔法、追跡魔法はこの国随一を誇る僕が追えないなんて。
「………サリアナ、君はなんて魔法を使うんだ…」
広げられた魔導書、その項目は『若返り魔法』だ。
使う人によって、若返る年数も変わる。だからサリアナがどれだけ若返っているのか分からない。そしてこの魔法が厄介なのは、魔力がそのままでその人独自の魔力の特質僕は色と呼んでいるそれまで変わってしまう。
人は、幼少期と大人の時の魔力の色が変わる。サリアナの色は、淡いピンク色。これじゃあ追えない。
「………サリアナを探せ」
後ろに待機してた兵士にそう言い放つと、踵をかえす。
「僕は、僕でやるから」
書室、魔導書がいっぱい詰め込まれたその部屋へと、こもる。その中から、数冊目配せすると本自ら彼の元へとふわりとくる。彼が手を横へとふるだけで捲れてゆく。
「あった、…大規模だけど…」
漸く手に入れたサリアナを手放すわけはないよね。
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サリアナは、ぞわりとした寒気に腕をさする。
「………嫌な、予感?」
その、サリアナの嫌な予感は当たる。
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