回避、するわけない!
私、アリシア・ランクラは呆然と立ち尽くしていた。目の前で、サリアナ様があの王太子様に連れ去られていくのをただ呆然と見ているしかできなかった。
「さ、サリアナ様…どうか、ご無事でっ」
何故か、まるで戦地に赴いているように思えるのは気のせいじゃない。
「あれ、君は…」
後ろからいきなり声をかけられる。少し、ビクッとするも振り向く。そこには、あの王太子様にちょっと似た人が立っていた。美しさは、王太子様には劣れど世間一般からみたら綺麗な人だ。
「あぁ、ごめんね。驚かせてしまったようですね。僕は、ラファエル兄上の弟、サキエルです」
優美に微笑んで、そう言う彼にアリシアはそうなんだ。と、納得する。最近こちらに越してきたばかりで、王子が2人いることは知っていたが見たことはなかった為に誰なのか疑問に思っていたのだ。
「はじめまして、私アリシア・ランクラです」
「うん、知っているよ。一時は兄上の婚約者候補だったからね」
彼は、年下なのに妙に大人びていてアリシアはなんだか自分より年上に思える。
「兄上ってば、暴走しちゃっているんだよ。可哀想だなぁ、サリアナ嬢」
「暴走…ですか?」
「そうなんだ。兄上ずっとサリアナ嬢に恋をしていてね、叶わないと思って僕に王位をどうにかこうにか譲ろうとしてたくらいにね。王位を僕に譲って、サリアナ嬢との恋が実とはいえないのにね」
呆れ顔で、そう零すからなんだか同情してしまう。
「そうそう、君はどうしてここに?」
「あ!サリアナ様をお救いしたかったのでした!」
アリシアは、自分の使命をはたとおもいだす。
しまった、連れて行かれた!
「そうなんだ。それがサリアナ嬢にとって救いだね、兄上きっと加減しらずだから。そうだ、君にいい提案があるよ?」
サキエル王子は、にっこり笑って私に提案してきた。
*****
「頑張らないと、この方法しか側に居られないわ!」
大量の本と、ティーセット。それに、花瓶に造花などなとどアリシアは大量の物に囲まれて、必死に本を捲る。
「サリアナ様、待っていてください。私、アリシアはサリアナ様に尽くします」
アリシアは、サキエル王子のある提案のために勉強をしていた。最近、サリアナ様はいつも身体がだるいらしく伏せっているのもきっとあの王太子様のせいだ。だって、王太子様の顔はサリアナ様を手にいれる前より清々しい。絶対そうに決まってる。ケアをしたい、けれど私は平民だから王太子妃殿下にはそうそう近づけない。そこで、サキエル王子の提案だ
「今度、使用人を新しく雇うんだよ。貴族子女たちも躍起になってはいろうとしてるんだけど、今回は本当に技術が優れている人を雇うから…君も試してみる?」
と、提案してきた。そんなの、使用人回避なんて、するわけない!サリアナ様の側にいられる。世話だってできるんでしょ?!と、躍起になってアリシアは勉学に励む。
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「サリアナ様、ようやく側にいられます!」
見事やとわれ、サリアナ様付き侍女として挨拶すると驚き顔のサリアナ様。でも、それも可愛い。
「ふふ、アリシア。よろしくね」
「あらあら、アリシアってばここまで来ちゃったの?すごいわねぇ」
レインは、そうこぼす。
「ねぇ、アリシア。サリアナを宜しくね。ほら、みてちょうだい。最近サリアナってば、遠い目をよくするのよ」
「はい、ケアをしっかりします!」
「あ、うん。」
レインは、これって逆にサリアナが大変になるんじゃ…と思ったが考えないことにした。
サリアナ様付きの侍女、回避、するわけない!
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