回避、させなきゃね。
「ねぇ、どうしてこうなってるのか知ってるんでしょ」
そう、零せばあっさりと返事が帰ってきた。
「まあね、次期国王だしね」
綺麗な顔に笑顔をはりつけて、王太子様はこたえた。
「──なら、なぜ?」
「だって、僕の隣は君って決まってるからね」
その言葉が、よく分からない。
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「……また、だ。どうしてなの?」
愛らしい少女は、ぽつりと零す。前も、こんなだった。
「私がいると、」
────魔物が、寄ってくる。
「………だれか、助けてよ……助けて、助けてよぉ…」
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「どういうこと、あの転校生が呼んでるって……」
「ん?そのまんまだよ、ダダ漏れの魔力に魔物は寄ってくるんだ」
「ダダ漏れ?」
「そう、彼女はその多大すぎる魔力を力に変えれないんだ。その分、身体におさまりきれずに漏れてしまう」
「それを、喰らいに来てるってこと?第1級魔物が」
「頭のいい子は、好きだな」
にっこり笑って、頭を撫でてくる。やめて、恥ずかしい。それにしても、不快だ。ウェディングドレスを着せられて、ずっと見られている王太子様に。それに、耐えきれずに窓をみていたサリアナは、ありえないものを見てしまった。
第1級魔物がうようよと、居たからだ。
あの日、この王太子様に魔力量を知られたあの日も、あり得ない出来事なのだ。今、思えば。
ここは、あまり魔物が現れないと有名な場所。城は、国王によって結界がはられ街では学院長が結界をはっている。なのに、だ。いくら第1級魔物だとはいえそう近づくはずはないといえる。
だから、サリアナは質問したのだ。
「まぁ、ただ第1級だけが近づいてるんじゃないよ」
「え、どういうこと?」
「下級から続々と集まってる。でもね、弱肉強食なんだよどこも。だから残るのは、強者」
そういうことか、とサリアナは思う。
「さぁ、サリアナ。挙式は一週間後だよ。どのドレスにするのか決めようか」
サリアナは、後ずさる。
「いえ、あの、」
逆らえないけれど、逃げ出したい。
かと言って、逃げ出したりできないのだ。だって、この王太子様の得意とする魔法の一つに探索魔法がある。どこにいても、見つかるのは確実だ。
「───あっ!」
外に、見えたのはあの転校生。それと、たくさんの魔物。
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「邪魔をするなぁぁぁぁあ!」
純白のドレス、愛らしい顔の少女が叫びながら飛んでくる
あの子は…。
どうして、どうして?
「王太子妃殿下ぁぁぁあ!」
「違う!まだ、王太子妃殿下じゃない!」
「へえ、まだ?そっかそっか、なる気はあるんだ?」
「あ、間違った」
と、王太子様と従者がその後ろにいた。
「もう、大丈夫。」
その言葉が、すごく温かくて、嬉しかった。
「……サリアナ、様…」
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あの子の、残酷な未来は…
「力の使い方、練習しよう!でも、まずは…撃退しないと…」
「サリアナ、様…」
「…………どうして、様をつけるの?」
「王太子妃殿下様ですから、……」
「私がいなければ、あなたが座ってた席なんだけどなぁ」
「……、でも…私より、サリアナ様の方がお似合いですから」
思わずキョトンとしてしまう。え、いや遠慮したいかな。
「そ、れはおいておいて、「置いておくなんてひどいなぁ」………よし、行ってくる!」
無視を決めて、魔物と対峙する。さあ、回避、させなきゃね
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