回避、できるはずだった。
はじめまして、こんにちは。
私、サリアナ・レーフェルと申します。突然ですが、私過去の記憶がございまして。過去の私の世界では考えられない魔法が使えるなんて、なんて素晴らしい!
というわけで、むくむくと魔力量が増えていきはたと気づきました。これは、あれだ目立つ方向だと。
私、目立つのは苦手です。教室の隅の方の、目立たないクラスメイトみたいな位置が私には丁度いいのですよ。魔力量多すぎては、目立つこと間違いなぁし!というわけで、隠す方向で。両親は、私の魔力量には気づいてない様子。
まさか、あんなことになるとはまだ知らない。
一定の年齢になると、学院へと入学するのが当たり前です。よって私も入学しました。まさか、王太子様と同時期だとは思いもせず。しかも、クラスメイトかよ。
周りの女子たちは、色めき立って騒いでいましたが。私、興味ないの。前世で、ちょっとだけそういう時期もあったけどなんだか記憶のおかげで心は大人です。
たしかに、綺麗な顔だし将来有望すぎるし結婚相手としては申し分ないよね。
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突然、転校生が現れた。
今までは、地方の魔法学校へと通っていたらしい彼女は可愛らしい子で男子たちが色めき立っていた。私?私は興味ないの。だって、魔法が楽しいもの。前世では、出来ないことが色々できちゃって人生謳歌してるの。
彼女はすぐに、その魔力量で有名になった。噂で、魔力量の高さでこちらに転校してきたらしいと聴いた。
「サリアナ、駅前に行きましょう?」
「うん、行く」
駅前のクレープが凄く美味しい。前世でも好きだったし、今も大好きなものだ。
そこで、事件が起きちゃうなんて知らない。
***
「た、助けて!」
友人が魔物に捕まってしまった。大切なとっても大切な友人が。
「まってて、今助けるから。」
第1級魔物らしく、そこらの魔騎士には適いっこない。
「やめておけ、一介の学院生如きで勝てる魔物ではない!」
なんで、いいでしょう?私の友人が今にも、
「うるさいな、ならあんたが助けてくれんの?!」
逆ギレして、一気に魔力を集中させる。
「……っな、小娘がっ、………?!」
「はぁ?……ムカつく、黙って見てたら?!」
と、魔法を使う。集中させ、今までひた隠しにしてた魔力さえも引きずり出して全力で魔物へとぶち込む。
隙をついて友人を救出し、背後の爆発にまきこまれた魔物をちらりと見上げた。良かった、助けられて。
「サリアナ?本当にサリアナなの?」
「うん、そうだよ…?ごめんね、今まで隠してたの」
ぶんぶん頭をふる友人を宥めて、抱きしめた。
「良かった、無事で」
「ありがとう、サリアナ…」
念のため、病院へと向かう友人を見送ってようやく一段落したとほっと息を吐く。
そして、気づいた。じっとこちらを見る王太子様を。
*****
あ、だめだこりゃ。
頭に走馬灯のように少女マンガが流れた。
魔力量の多い庶民の少女が、有数の魔法学院に転校する。そこで出会った王子様と恋におち…結ばれるという物語。
思い出すの遅すぎだろおぉぉぉお!!
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