リアルペナルティ
ちょっとだけ、重い話になります。
「修理などは請け負えますが、時間がかかりますし、代用品を提供することもできません。
ただ、普通の消耗武器ならお渡しできます。」
カイナは申し訳なさそうに俺に話していたけど、俺としては別にいいんだけどね。
『神殺し』の消耗品アイテムを生産ギルドの皆はつくらされてるらしいね。
矢とか、投げナイフとか、弾丸、作成の機材と材料を渡され、ノルマを課せられるそうだよ。
消耗品なら生産者のAポイントも満遍なく回る可能性が高いし、そんなに差も出ないしね。
それに、矢なら抜いたり貫通したりしない限り刺さったままだし、弾丸も身体に残ればそのダメージも判定にはいるだろうしね。
計算式が未だ謎なんで、推測でしかないけどね。
「いえ、今迄装備を作って頂いただけでも十分だよ。
この弓、大事にさせてもらうよ。」
「お気遣いありがとうございます。
私達は『神殺し』で、現実での普通の生活をいずれ手に入れてみせます!」
「別に普通に生活できるとおもうけどね。」
気負う程のものかとおもって、つい呟いてしまったよ。
普段なら、こんな事はないのにね。
「あ、あなた達は恵まれているんです!
私達がどのような現実を受け入れてこの世界に居るのか分かっているのですか!?
そんな無神経な事を言わないで貰いたい!!」
カイナが、小太りのカイナが激昂して俺に怒鳴ってきている。
確かに無神経だったよ。
中には、借金塗れになっている人もいるらしいし、そんな事考えたこともなかったからね。
「私達の中には、兄弟がC.R.ONLINEをしていたけど、多大な借金と共に消えてしまい、世間への公表が嫌なら借金をそのまま引き継いで、新規プレイヤーとして参加するように強要された者さえいるのですよ!
そんな人に同じことを言えますか!!」
ああ、本当に悪い事をしたようだね。
しかし、正直言えばカイナの気持ちは分からない。
けど、想像は出来るからね。
「すまなかったよ。
無神経だった、同じ様な事は二度と言わないよ。」
「わ、わかって頂ければ・・・・・・。
いえ、失礼しました、つい大声を出してしまいました。
後、申し訳ないついでに、提供した武器防具で不要になったものがあれば回収させてもらっていいでしょうか?」
俺は無言で、ミスリルのロングソードを返却する。
俺が持っていたんだけど、結局弓矢で事足りるからね。
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「ふううむ、おそらくそれはカイナ自身の体験も混ざっておるのではないかな?」
猟師小屋に戻って、事の次第を話して、今後は消耗品以外の武器防具の提供は無くなったことを伝えたら、そんなことよりカイナが激昂して話した事に皆食いついたよ。
「そうかもしれないですね。
でなければ、そこまで怒らないと思います。
自身かもしくは近しい他人といったところでしょうか。
けど、そういった表にはでない制度もあるんですね、怖いです。」
「道理で最近はリアルへの晒しも減ってきたとおもったよ。
こういった事情があったことは判ったよ。
てっきり、インパクトがなくなるからかと思ってたんだけどね。」
「けど、それはマスコミの取り上げ方の問題だとおもうわ。
最近は、どちらかと言うと、前回のイベントの事を主に流しているのがわかるわよ。
『VRでの戦争は戦争か否か!』なんて感じの番組も乱立してるわ。
お父様との話に良く出てくるもの。」
よく、テレビ見る時間あるなぁとおもったら、親からの伝聞ね。
話が逸れて、現在のテレビ番組の事の話題になったよ。
翌々考えたら、C.R.ONLINEをはじめてから、テレビはニュース以外みなくなったなぁ。
「そんなことより、今は迷える方々を救う方法を議論するのが先決!
慈悲無き者の元に、勇者は現れないのさ!!」
そんな事言ってもなぁ、一個人がどうこうできるものではないと思うのだけどね。
「それなら、消耗品を使ってあげていけばいいんじゃない?
矢ならトンが、ナイフならカライガやブックが使えるんじゃないの?」
「ふううむ、ワシは投擲用のハンドアクスなら欲しいな。」
「あたしは、ナイフが貰えるなら嬉しいです。」
「元から、そのつもりなんだけど、過剰に接しない方がいいと思うよ。
使えない程貰って無理に使うのは施しと同じだしね。」
必要量だけ貰って使おうとおもうし、素材もある程度は『お礼』として渡そうとも思う。
けどそれ以上は、ほんと金持ちが貧乏人に何も考えずにお金を渡すのと一緒だよ。
自己満足で、気持ち悪いよね。
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『鉄の両腕』とは、消耗品をもらい、お礼程度の価値の素材を渡すというだけのやりとりになってしまったね。
こちらはそんなに気にしていないのだけど、バツが悪いのか罪悪感があるのか、視線も合うことがなくなったよ。
背中丸めて生きていくのは、普通に苦しいよ。
しかし、そういえば『神殺し』の目的は知っているけど、結局あそこは何のギルドとして設立されたんだろうかね?
個人的には、中途半端な重さ加減です。
しかし、誹謗中傷を受けている人間の視点にしたりすると・・・・・・。
書くのだけが楽しくなって、読むほうは辛そうだからやりません。
・・・・・・多分。




