悔しさは強さへと変わる物である。
涙が止まった。しかし悔しさは無くなっていない。むしろ増えた位だ。カミヤは1人、自室で寝転がっていた。右手のすぐ近くに木刀が置かれていた。しかしカミヤはそれを見るのが辛く感じた。別に負けた時に使った木刀が、これというわけではない。しかし木刀を見るのが何故か嫌になってしまった。
「はぁー」
長くため息を吐く。ゆっくりと目を閉じる。
瞼にあの戦闘が蘇った。しかし根間にどうやられたのかは思い出せない。正しくは、覚えていない。覚えていない物は思い出せないのだ。カミヤは覚えていない自分が憎らしかった。
そしてもう1人思い浮かんだ男がいる。仁曹だ。奴は恐らく、根間よりも強いのだろう。そう思うとゾクゾクした。
「もう一回やりたい…でも負けんのはヤダ‼」
勝手に口が動いていた。拳をギュッと握りしめる。
「よし…」
木刀を抱え、外に出た。
カミヤはそこまでアホではない。今すぐ再戦を挑みになんかいかない。本当は行きたいのだが、グッと堪えている。
再戦を挑んでも負ける事は目に見えていた。
「素振りから始めるか…」
木刀を振った。ブオンと風切り音が鳴った。空気が、空間が斬れたような気がする。もちろん、気がするだけだ。
何時間経っただろう?気付ば日は沈んでいた。
全身は汗でグッショリしており、気持ちが悪かった。Tシャツは色が濃くなっている。下も汗でビシャビシャだ。
「うげえ…めっちゃ汗かいてる…」
負の感情は素振りをして、吹っ切れた。そんな気がした。悔しさは残っているが、それは=闘志と考えていいだろう。
「俺は…負けねぇ!」
誰もいないのに、やたらと大きな声を出す。
しかしそれだけで気合がたんまりと入った。