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見えない光  作者: 白桃
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白光

 2023年7月20日、気温が30℃を越えた真夏日に「ソレ」は起こった。

 「ソレ」は見た者によるとこの世のものとは思えないほど白く、美しく、神々しい光を放ち我が身に降りかかったという。

 ある人曰く「天罰」、ある人曰く「粛清」、ある人曰く「選定」…

 その光は人類にとっては大変な毒であった。しかし、その光がたとえ自分に、家族に、友人に、恋人に死をもたらすほどの苦痛を与えたとしても「ソレ」を非難する者は誰もおらず、むしろ「ソレ」の光によって死に至った者達を、「天から死罪を賜った罪深き者達」と罵り、周りの者は遺骨に触れることも汚らわしいこととして、弔うことも、墓を建てるようなこともしなかったという。 たとえそれが生前家族だった、友人だった、恋人だった者だとしても。

 今現在では考えられないこの惨状は、しかしこの国では当たり前である。

 この国では政治の主権を握るのは国民でも王でもなく、彼らの信じる唯一無二にして絶対の存在である神だけ。

 彼らの中では神の存在が第一であり、それ以外のものは二の次だと考える。だから、今回の「ソレ」で亡くなった人が罪人だと思って疑わない。それがどんな罪なのかということは大した問題でもない。

 神に殺された者はその時点で、毛ほどの価値もない罪を犯した「信仰心」のない不心得者だったというだけであり、それが自分に近しいものであるほど国民は不快感を露にする。その者が自分にとって神との唯一つの繋がりである「信仰心」を汚す最も強大な悪であるためだ。

 また、何千、何万という人々を殺めた「ソレ」はあらゆる建築物を突き抜けて中にいる「罪人」のみを殺した。そのために、人々はなおさらそれを神の所業と信じて疑わなかった。 「ソレ」は20km2に渡って被害をもたらし、1万5000人ほどの人々が死に至った。これは、人口約200万人のこの小さな国にとっては甚大な被害だが、幸いにもそこが機械化の進んでいた都市であり、「ソレ」が人間以外を破壊することはなかったために、復興は欠けた人員分の都市への派遣のみで済んだ。

 そして光を浴びた都市は、神によって洗浄された「神域指定都市」とされ、この国を代表する機関「神務機関」の本部が置かれることとなった。

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