特大のトラブル案件、受注しました
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エドワードが執務室を乱暴に飛び出した数時間後のこと。
国王の執務室では、ラグランジュ王国の頂点に立つ二人の男が、一人の五歳児を巡って対峙していた。
国王リチャードは、親友でありアルヴェルト公爵家当主であるヴィンセントを呼び出し、真剣な面持ちで切り出した。
「……ヴィンセント。あの子はエドワードの歪みを真っ直ぐに見据え、しかも優しく諭してくれた。周囲が腫れ物に触れるように扱うあいつには今、リリアーナ嬢のような慈愛が必要なんだ。……あいつの婚約者にしたい」
「断る」
ヴィンセントは、一拍の迷いもなく即答した。
その瞳には親友への情け容赦ない拒絶が宿っている。
「貴様の息子に、うちの可愛い娘はやれん。大体リリアーナはまだ五歳だぞ! まだ泥遊びをして、寝る前にパパと絵本を読んで笑っているような子供だ。あんな、感情を爆発させてカップを割るような小僧に預けられるか!」
「そこをなんとか頼むよ」
国王は肩をすくめながらも諦めず、将来の国のためだ、親友として頼む、と粘り強く説得を続けた。
王としての威厳を捨てた、一人の父親としての切実な訴えに、ヴィンセントは最後まで渋い顔のままだったが、「数いる候補の一人としてなら」という条件付きで、ようやく話を持ち帰ることに同意した。
――が。
数日後、王宮から届いた正式な書状を読んだ瞬間。
アルヴェルト公爵家の屋敷に、父の魂を削るような絶叫が響き渡ることとなった。
『リリアーナ・フォン・アルヴェルトを、次期王妃――婚約者候補筆頭に指名する』
「筆頭だとぉぉぉ!? ほぼ確定じゃないか!! 話が違うぞリチャードォォ!! やりやがったな、あいつ!!」
父が頭を抱えてのたうち回る横で、母エレインは至極冷静に、けれど静かな眼差しを私に向けた。
「リリアーナ。あなたはどうしたい? 相手が王族であろうと関係ありません。あなたが嫌だと言うなら、公爵家の力を使って、何がなんでも白紙にしてもらうわよ。お父様もその覚悟はできていますわ」
(……正直、最大級のトラブル案件だわ。前世なら、あんなにハッキリ拒絶されたクライアントの担当なんて、胃が千切れるから絶対お断りだもの)
でも。
私の頭の中に浮かんだのは、あのお茶会で走り去る直前の、エドワード殿下の顔。
「大嫌いだ」と叫んでいたあの瞬間。
怒っていたはずなのに、ほんの一瞬だけ見えた、あの寂しそうな瞳。
(あれは……愛され方を知らないまま、期待という重圧に押し潰されそうになっている、孤独な子供の目だった)
社畜時代、私は理不尽に怒鳴り散らす人たちを何度も見てきた。
でも、彼らはみんな、不器用なだけのことも多かったのだ。
もしあの方が、立派な王様になったなら。
私の大好きな家族も。
美味しいお菓子の時間も。
この平和で温かい毎日も。
きっと、この先もずっと守られる。
「お母様」
私は、髪を揺らして小さく微笑んだ。
「私、あの方の力になってみたいですわ。私、あの方の力になってみたいですわ」
そして、今にも王宮へ殴り込みに行きそうな父をなだめるように、少しだけ悪戯っぽく付け加える。
「それに……王宮の庭園、とても広そうですもの。探検してみたいですわ」
母は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに優しく笑って私の頭を撫でてくれた。
一方、父は「リリアーナ……パパがもっと広い庭園のある島を買ってやるから、あんな生意気な小僧のところへなんて行かなくていいんだぞぉぉ!」と膝から崩れ落ちていたが、私の腹は決まっていた。
長くなりそうだったので2話に分けます(;Д;)
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