元社畜の職業病は、公爵邸を救う
こちらも書き直してみました。
転生してから、あっという間に二年の月日が流れた。
三歳になった私の日常は、前世の殺伐としたオフィスとは無縁の、愛と平和に満ちたもの……になるはずだった。
けれど、私の中に染み付いた「困っている人がいたら、つい手を貸してしまう」という社畜時代の職業病は、三歳児の体になっても治らなかったらしい。
ある日の午後。私は厨房の隅で、頭を抱えて蹲っている大男を見つけた。
この公爵邸の食卓を預かる料理長、ジャンだ。
「……ダメだ。これでは納得がいかない。今日の晩餐会のメインソース、どうしても最後の一味が決まらないんだ。私はもう、料理長失格だ……っ」
あまりの落ち込みように、背後から立ち上る負のオーラが目に見えるようだ。
私はとてとてと近寄り、ドレスのポケットにこっそり隠し持っていた「あるもの」を差し出した。
それは庭の隅で見つけた、前世の知識で「最高級の隠し味になる」と知っていた特定の香草だ。
「ジャン。……これ、いれて?」
「おや、リリアーナお嬢様。……料理に興味を持つお年頃ですかな。はは、お嬢様が選んだ草なら、きっと恵みとなるでしょう。折角ですし、少し入れてみましょうか」
ジャンがその香草をソースに刻み入れると、数秒後、厨房に驚くほど爽やかな香りが立ち込めた。一口味見をしたジャンの瞳が、信じられないものを見たかのように見開かれる。
「な、なんだこれは……! まろやかなコクの中に、爽やかな風が吹くようだ……! お、お嬢様は味の神様ですか!? 救世主だぁぁ!」
ジャンが泣きながら巨大な腕を広げて迫ってきたので、私は「あ、定時(お昼寝の時間)なので」とばかりに、すっと身をかわして厨房を後にした。
またある時は、庭師のヘンリーが枯れかけた珍しいお花を見て肩を落としていた。
私はしゃがみ込み、枯れかけた蕾にそっと触れた。
そして、夜な夜な練習していた魔力操作の基礎――「活性」のイメージを、指先からほんの少しだけ流し込む。
翌朝、そのお花はピカピカに咲き誇り、ヘンリーは「お嬢様が触れたお花が生き返った!」と腰を抜かして喜んでいた。
さらに、お掃除メイドのアンナが腰をさすりながら、階段を辛そうに上っているのを見かけた。
(あの腰の入り方……重度のギックリ一歩手前ね。労災案件だわ)
私は「だっこ!」と甘えるふりをして背中に抱きつき、小さな手で「よしよし」をしながら、こっそり魔法で筋肉を温め、血流を改善してあげた。
「あら……? 痛みが消えた? リリアーナ様のおかげかしら……」
いつの間にか、公爵邸の使用人たちは、みんな私のことが大好きになっていた。
父ヴィンセントはそれを見て「当然だ! 我が娘は天使だからな!」と大喜び。
(……みんなが喜んでくれるのは嬉しいな。でも、もっとちゃんと魔法のことを知りたいな)
そう思った私はある日のティータイム、父の膝によじ登った。
裾をぎゅっと掴んで、精一杯の「お願いポーズ」をしてみる。
「……ねえ、ぱぱ。りり、まほうのお勉強、したいの」
「……え?」
「ぱぱが使ってる、きらきら。りり、もっと知りたい。……だめ?」
父は胸を押さえて悶絶した。
「エレイン! リリアーナが勉強したいと言ったぞ! 三歳で! 天才だ、すぐに家庭教師を呼ばなくては!」
けれど、母エレインは冷静だった。
「リリアーナ。魔法は七歳のときに神様から祝福をいただいて初めて使う事ができるのです。……それでもお勉強したいの?」
「……はい。本を読むだけでもいいの。お母さま、おねがい」
「いいわ。ですが、魔法はあくまで教養の一つ。ダンスや歴史、淑女としてのマナーも同じくらい頑張ることが条件です。できる?」
「……はい! りり、がんばる!」
一週間後、家庭教師としてやってきたのは、トーマス先生という白髪が立派なおじいちゃんだった。
最初は「三歳児に魔法なんて……」と渋っていた先生だったが、私の質問があまりにも熱心なので、だんだんノリノリになってきた。
「トーマスせんせい。ここの図解、とっても綺麗! でも、こっちと繋げるともっとキラキラしそうじゃない?」
「ほほう、リリアーナ様。それは素晴らしい視点ですな! 確かに、魔力の循環をこう変えれば……。実は、これは宮廷魔導師も使う高等理論なのですが……」
来てくれる度、私が「せんせい、だいすき!」とニコニコ笑うと、先生は照れながら、普通の子供には教えないような秘密の知識もたくさん教えてくれるようになった。
昼間は先生と楽しくお勉強し、お母様とダンスや刺繍を(前世の根性で)完璧にこなす。
そして夜。
私は昼間教わったことを、こっそり自分の体で反復練習した。
一歳からの孤独な修行で、私の体内にはすでに、微細な魔力をスムーズに流すための「基礎」が完成していたのだ。
(あ、今日の先生のやり方、すごく分かりやすい! 魔法がもっとスムーズに動くようになったわ)
五歳になる頃には、私の魔法はもう「まぐれ」ではなくなっていた。
私の指先に宿る光は、だんだん綺麗になって、音も立てずにスッと動かせるようになった。
大きな魔法は使えないけれど、コップ一杯の水を出すことや、指先に小さな灯りを灯すことなら、大人がやるよりもずっと「丁寧」に、そして正確にこなせる。
「七歳までは使えない」なんて、私には関係ない。
私は、今度こそ幸せな人生を掴み取ってみせる。
そう決意した私は、毎日秘密の特訓をし続けた。
その頃の私は、魔力量は子供の中でも多い方ぐらいだったが、「正確さ」と「基礎知識」に関しては、大人の初等魔道士が舌を巻くほど、しっかりと身についていたのである。
この時間まで寝れず、、
深夜テンションで投稿、、
違和感があったらごめんなさい(>︿<。)
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