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過労死した社畜は公爵令嬢に転生しました 〜努力が報われる世界なので今度は幸せになります〜  作者: みじんこ醤油


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嫌がらせという名の、不器用な招待状

本日、あと1話更新します!


ラグランジュ王国の心臓部、白亜の王宮。


その最深部に位置する国王執務室の重厚な扉が、事前の通告もなく勢いよく跳ね飛ばされた。


「父上! お話があります!」


部屋に飛び込んできたのは、王太子エドワード・ラグランジュだった。


黄金の髪をなびかせ、その瞳にはいつもの傲慢な輝きがギラギラと宿っている。


「……ほう。エドワードか。取次もなしに、随分な剣幕だな」


執務机で羽根ペンを走らせていた国王リチャード・ラグランジュは、眼鏡をずらして顔を上げた。


「……街へ、視察に行きたいのです。リリアーナを伴って!」


その宣言に、リチャードは面白そうに口端を吊り上げた。


「リリアーナ嬢を伴って、か。……理由を聞こう」


「リリアーナは、僕が何をしても楽しそうに笑って受け流すのです! 虫を見せても椅子を引いても、聖母のような顔で微笑み返してくる。あの余裕の面皮を剥いでやりたいのです!」


エドワードは鼻を鳴らし、勝ち誇ったように続けた。


「王宮や公爵家は彼女にとって、守られた温室に過ぎません。だから、外の世界がいかに危なく、汚く、恐ろしい場所かを見せつけてやるのです。あんな温い庭で花を愛でているような小娘なら、一歩街に出れば腰を抜かして泣き叫ぶに決まっています。僕は、彼女が恐怖に震えて僕に縋り付く姿を、たっぷり笑ってやるつもりなのです!」


(……本当は、リリアーナ嬢が図鑑を見ながら『外の世界にはどんな魔法の植物があるのかしら』と目を輝かせていたから、連れて行ってやりたいだけなんだろうに。不器用なやつめ)


リチャードは、息子が「嫌がらせ」という名目で必死に自分を正当化している姿を見抜き、内心で失笑した。


「よかろう。お前の『教育的指導』とやら、許可しよう。……だが、お前一人では不安だ。カイルも連れて行くが良い。あやつの冷静さがあれば、お前の暴走も少しは抑えられるだろう」


「カイルにはもう話をつけてあります! 僕の考えに協力しろと言っておきました!」


リチャードは楽しげに頷くと、二つの家に宛てた書状を書き始めた。


一つは最強の盾たる公爵家へ。もう一つは、王国の頭脳たる侯爵家へ。




その日の午後。


ヘイワード侯爵邸。


王国の政務を司る知略家、アーサー・フォン・ヘイワード侯爵は、届けられた王からの書状を読み、細い銀縁の眼鏡を押し上げた。


「……なるほど。王太子殿下自らのご提案、ですか。カイル、お前はどう考えている?」


目の前で立ち尽くし、深く溜息をついたのは、七歳の息子・カイルだった。


彼は王太子の側近候補でありながら、その実態は殿下の無茶振りに振り回される、7歳にしては「苦労人」である。


「……断れるはずがないでしょう。殿下はすでに、街に行ってリリアーナ様を泣かせる気満々です。放っておけば、リリアーナ様に返り討ちにされるか、あるいは殿下が迷子になって騒ぎを起こすのが目に見えています。私がついて行かないわけにはいきません」


「ふむ。あくまで殿下のお目付け役、というわけか」


「そうです。それに……リリアーナ様が街に行きたがっていたのも本当ですから。あの方が殿下に変な遊びを教え込まれる前に、私がしっかりと見張っていなければなりません」


カイルの真っ直ぐな言葉に、父アーサーは口端を綻ばせた。


「……ふ。以前はあんなにオドオドとして王太子の顔色を伺ってばかりいたお前が、今では殿下の暴走を予見し、自らの意思で『見張る』と言うか。リリアーナ嬢との出会いが、お前をそこまで変えたのだな。……いいだろう、成長したな、カイル」


「……っ、別にそういうわけでは……。ただ、放っておけないだけです」


少し顔を赤らめてそっぽを向く息子を見て、アーサーは愉快そうに笑った。



長くなりそうなので分けます(;Д;)


読んでいただき、本当にありがとうございます!

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まだまだ慣れないので、誤字脱字などあれば「ここ違うよー!」とコメントで教えていただけると助かります!

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